高齢者の再婚。どんなことに注意すべき?
配信日: 2021.08.13
執筆者:寺門美和子(てらかど みわこ)
ファイナンシャルプランナー、相続診断士
公的保険アドバイザー/確定拠出年金相談ねっと認定FP
岡野あつこ師事®上級プロ夫婦問題カウンセラー
大手流通業界系のファッションビジネスを12年経験。ビジネスの面白さを体感するが、結婚を機に退職。その後夫の仕事(整体)で、主にマネージメント・経営等、裏方を担当。マスコミでも話題となり、忙しい日々過ごす。しかし、20年後に離婚。長い間従事した「からだ系ビジネス」では資格を有しておらず『資格の大切さ』を実感し『人生のやり直し』を決意。自らの経験を活かした夫婦問題カウンセラーの資格を目指す中「離婚後の女性が自立する難しさ」を目のあたりにする。また自らの財産分与の運用の未熟さの反省もあり研究する中に、FPの仕事と出会う。『からだと心とお金』の幸せは三つ巴。からだと心の癒しや健康法は巷に情報が充実し身近なのに、なぜお金や資産の事はこんなに解りづらいのだろう?特に女性には敷居が高い現実。「もっとやさしく、わかりやすくお金や資産の提案がしたい」という想いから、FPの資格を取得。第二の成人式、40歳を迎えたことを機に女性が資産運用について学び直す提案業務を行っている。
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親が幸せならばそれで良しなのか?
早くに配偶者を亡くした相談者さまのなかには、その後の人生がとても長く感じ、時間をもてあましていると話す方がいらっしゃいます。
特に、仕事一筋で生活を送ってきた男性は要注意。仕事を辞めた後、自分のコミュニティーを持っていないことが多く、奥さまに依存しがちです。そのような場合、奥さまに先立たれてしまったとしたら、さまざまなことに影響が生じることがあります。
高齢者のなかには「男子厨房(ちゅうぼう)に入るべからず」と言われた時代に育ってきた方もいらっしゃるでしょう。妻の死後に一人暮らしになったからといって、料理だけではなく、掃除や家計管理ができずに困ってしまうというケースもあります。
その時、男性に子どもがいた場合はどうでしょうか。30~50代の子どもであれば、共働きも多い年代です。さらにその子ども(男性からしたら孫)もまだ手がかかる年齢かもしれません。もし母親が先に亡くなったからといって、遺(のこ)された父親の面倒をみるのは、負担に感じる可能性があります。
こういったことから、妻に先立たれた男性のなかには、精神的な側面と実際に生活に困っているという側面から、「再婚」を望む方がいらっしゃいます。しかし、その子どもは、「親が幸せならばそれで良い」と思うのか。必ずしもそうでないかもしれません。
男性は認知症発症率が低い?
令和元年6月に話題になったいわゆる『老後2000万円問題』の金融レポート(金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書:「高齢社会における資産形成・管理」)の中に、非常に興味深いデータが掲載されていました。それは、男女別の亡くなる年齢と認知症発症率です。併せて、男女別の人が亡くなる年齢も添えておきます。
女性は男性よりも長生きですが、認知症発症率も高い傾向となっています。一方男性は、女性よりも認知症発症率が低く、また意外と長生きなのです。
「元気な高齢者」は再婚の可能性を秘めています。例えば、年金受給が多い、資産があるなど、金銭的に余裕はあるが生活そのものを維持することができないという方の場合、自分の身の回りの世話をしてくれる人を求めるということもあるかもしれません。
父親の再婚で資産が他人の手に渡ることも
もし、父親が再婚し後妻がきた場合、子どもはどうするでしょうか。
子どもが自立している場合は、後妻と「養子縁組」をしないこともあります。高齢者の男性の場合、結婚相手は自分より年下の女性である可能性があります。そうすると、かなりの確率で父親が先に他界します。そこで、相続問題が起こるのです。
もし、男性の子どもが1人の場合、父親から100%の相続資産が引き継がれました。しかし、後妻さんが来たことで、遺産分割は下記になります。
■後妻:2分の1
■子ども:2分の1
また、後妻が亡くなった場合には、後妻の兄弟姉妹に相続資産がわたります、もし兄弟姉妹も亡くなっていたならば、そのめいやおいにわたります。もちろん、後妻に子どもがいれば、そちらにわたります。
このように、父親の資産が実の子どもではなく、他人にわたってしまうのです。これでは、子どもにとっては「父親が幸せならばそれで良い」とは言えず、相続問題が起こってしまうかもしれません。
高齢者の再婚は相続対策を万全に
高齢者の再婚が発生したら、婚姻届を出す前に相続について話し合いを万全にするべきだと筆者は考えます。後に遺されるであろう後妻には、遺族年金があります。例えば、後妻には遺族年金では不足する分を現金でおぎない、形のある不動産や有価証券は子どもが受け継ぐようにする、という方法もあるでしょう。
高齢で再婚をするということは、自分の財産の相続を明確に思い描く必要があります。自分の死後、家族・親族の関係や、財産の規模や種類により、複雑な相続になる可能性があります。
「もういいや!」では済まされないのが、相続問題です。子どものためにも、新たに家族に加わる後妻のためにも、相続対策は万全にしておきましょう。
出典
金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
執筆者:寺門美和子
ファイナンシャルプランナー、相続診断士