更新日: 2021.12.08 セカンドライフ

令和4年4月から適用される「在職定時改定」。働く高齢者にどんなメリットがあるの?

執筆者 : 新井智美

令和4年4月から適用される「在職定時改定」。働く高齢者にどんなメリットがあるの?
2020年の改正年金法により、年金を受給しながら働く人に対する受給のあり方が見直されることとなりました。そのうちの1つが「在職定時改定」といわれるものですが、この改定によってどのように内容が変わり、働く高齢者にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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2020年の改正年金法の内容とは?

2020年の改正年金法によって、年金制度の基盤が拡大されることとなりました。中でも、少子高齢化社会に対する就職期間の延長化に伴う改正が多く見られた点は注目すべきところです。今回の改正年金法の中で、特に高齢者に焦点を当てたものには、以下のようなものがあります。
 

■在職老齢年金制度の見直し

今回の改正により、60歳から64歳までの働きながら年金を受給している方に対する制度の見直しが行われることになりました。具体的な改正内容は、支給停止額の見直しです。現制度では28万円が支給停止となる基準でしたが、それが改正により47万円へ引き上げられました。
 
この改正によって、2022年における支給停止対象者数が、改正前の約37万人から約11万人にまで減少することとなり、より多くの高齢者が働きながら年金を受給できることになります。ちなみにこの改正は2022年4月より適用されます。
 

■在職定時改定制度の導入

現在では、老齢厚生年金を受給する権利を持ちながら働く高齢者に対しては、厚生年金被保険者の資格を喪失する時点で、年金額の改定を行っていました。その改定方法は老齢厚生年金受給権取得から喪失時点までの期間を加味して行うもので、それまでの年金額の改定は行われないとされていました。
 
しかし、今回の制度導入により、65歳以上の老齢厚生年金の受給権を持つ方に対しては、毎年1度、年金額の見直しを行うことになりました。これにより、厚生年金被保険者の資格を喪失する時点まで待たなくても年金額が年に1度改定されるため、仮に70歳まで働いた場合でも年金額の増額が見込まれることになります。この改定は毎年10月に行われることとなっており、適用の開始は2022年4月からとなっています。
 

在職定時改定のメリットとは?

これまでは、70歳まで働く場合における老齢厚生年金額は、70歳に到達した時点(厚生年金加入資格喪失時)まで固定され、改定されることはありませんでした。しかし、働いている以上はその間の標準報酬月額などによって計算された年金額が上乗せされることになります。
 
その受け取りについて、70歳まで待つ必要はなく、毎年の標準報酬月額によって年金額が改定され、支給されることから、年々受け取れる年金額が多くなるというメリットがあります。もちろん、働き方の変化によってはそこまで増えない可能性はあるものの、70歳を待たずに年金額に反映される点は収入の面でも非常に助かるといえるでしょう。
 

■企業型確定拠出年金の加入資格の拡大

また、70歳まで働く高齢者が今後増えることを予想し、現在65歳が上限であった企業型確定拠出年金についても、2022年5月からは70歳まで引き上げられることとなりました。年金を受け取りながら、一定の額を拠出し、退職後の年金を作ることができるということからも、メリットの大きい改正といえるでしょう。
 
また、この改正によって、受け取り開始年齢が現行の70歳から75歳に引き上げられることも注目すべき点といえます。
 

70歳まで働く時代へ

高年齢者雇用安定法が改正され、2021年4月より適用されています。この改正により、企業に対しては「70歳までの就業の機会を確保する」ことに対する努力義務を課しています。あくまでも努力義務ですが、定年の引き上げもしくは廃止などといった取り組みを行う企業も出てくる可能性があります。
 
また、70歳まで継続雇用する際には高齢であることも配慮しながら働きやすい環境を作ることも必要となります。55歳でリタイアし悠々自適な年金生活を送っていた時代は遠い昔の話になりつつあり、現在ではできるだけ65歳まで再雇用などで働くといった考えが主流となっていますが、今後はそれが70歳まで働くという考えに変化していくことが予想されます。
 

まとめ

実際に自分が70歳まで働けるのかどうかという不安はあるものの、企業側としては体調などに配慮した配属などを考えることが努力義務となっていることから、今後は働けるうちは働くという考えを持つことも大切です。
 
そして、それまでに資産形成を行い、本格的なリタイア後に老後資金が不足することのないマネープランを考えておくことも必要になるでしょう。
 
出典
(※)厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました」
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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