更新日: 2021.12.09 その他老後
認知症に備えて子ができる対策。成年後見人と家族信託の違いとは?
とはいえ、どちらも日常生活であまりなじみもなく、名前自体は聞いたことがあっても違いがよく分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、今回は成年後見人と家族信託の違いについて解説していきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
成年後見人と家族信託の概要
まずは成年後見人と家族信託の概要について軽く確認します。成年後見人とは、成年後見制度に基づき、認知症など判断能力が低下して被後見人となった本人のために財産の管理を通じ生活のサポートをする人です。
成年後見人には法律よってできることの範囲が決まっている法定後見と、ある程度契約で定めることのできる任意後見人とがありますが、今回の成年後見人は任意後見人であるものとして話を進めます。
それに対して家族信託とは、本人と家族との契約に基づき、本人が保有する資産の管理や処分を信用できる人に、信託契約に基づいて受託者(管理をしてもらう人)としたい人に任せるものです。その信託の相手を家族に指定するものを特に家族信託と呼んでいます。
財産管理を行う人と体制の違い
成年後見制度では、成年後見人が財産の管理などを行います。また、任意後見契約に基づく場合、成年後見人を管理監督するための任意後見人が家庭裁判所の職権によって付されます。そのため、純粋に家族だけで財産を管理するということができません。
それに対して家族信託においては家庭裁判所による監督人が付されることはないため、完全に顔見知りのみで財産の管理をすることができます。
管理を依頼できる期間の違い
成年後見人はあくまでも被後見人となる方が生きている間のサポートを行うものになります。そのため亡くなった後の財産に関することなどは決めることができません。
家族信託であれば相続財産の行き先について、自分の死後は妻に、妻の死後は息子にというように先まで見据えて財産の管理をすることができます。
業務の範囲の違い
成年後見人は被後見人との取り決めに基づいて財産の管理だけではなく病院との介護や医療に関する契約など身上監護に関することも行います。それに対して家族信託においては、信託契約に従って委託者から任された範囲で財産の管理のみができるようになっています。
また、財産の管理であっても成年後見人はあくまでも本人の利益に適合していると判断される行為しかできません。そのため、相続対策のために不動産を売ろうとしても売れないなど財産の処分を柔軟に行えないことがあります。
その点家族信託であれば、信託契約の内容に沿うものであれば財産の処分も柔軟に行うことができます。
解任についての違い
後見監督人が選任され、後見がスタートするといくら成年後見人と本人とが合意してもその場で終了というわけにはいかず、家庭裁判所の許可が必要となります。家族信託では、本人と受託者との間で合意してしまえば基本的にいつでも財産の管理を終了させることができます。
また、成年後見人は一度選任されると本人の死亡まで後見が続くのに対し家族信託ではあらかじめ終了事由を定めておけばその事由が解消されたり、終了事由となる出来事が訪れたときに終了させることができます。
成年後見人と家族信託、選び方はよく比較した上での決定を
成年後見と家族信託、どちらも親の認知症に備えて利用できる制度ではありますが、両者ともに複雑な制度である上、違いがいくつもあります。
今回紹介した違いは一部に過ぎず他にも違いはあり、安易に選択してしまうと思ったような認知症に対する備えができない恐れもあります。親の認知症対策を考えたときは、できる限り弁護士など専門家に相談した上で、成年後見人と家族信託の利用について検討してみてください。
執筆者:柘植輝
行政書士