更新日: 2021.12.14 セカンドライフ

まだ介護施設入居は早いけど知っておきたい「高齢者の住まいの選び方」とは?

執筆者 : 黒木達也 / 監修 : 中嶋正廣

まだ介護施設入居は早いけど知っておきたい「高齢者の住まいの選び方」とは?
戸建てに住んでいる方のなかには、高齢になるにつれ、家の手入れや庭掃除、草取りなどが、次第に面倒に感じている方もいらっしゃいます。認知症の症状もなくまだ元気に活動できる方は、どのような住まい選びをしたらよいでしょうか。当面は介護を前提としないシニアの選択肢が増えています。
黒木達也

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

中嶋正廣

監修:中嶋正廣(なかじま まさひろ)

行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

長野県松本市在住。

将来の介護も視野に入れて選択

配偶者に先立たれひとり暮らしの方のなかには、健康にはまだ自信があっても、自宅の手入れや食事の準備などが、次第におっくうになってきたという方もいらっしゃるでしょう。自宅を処分して、快適な居住環境を選択する高齢者がいらっしゃるなかで、こうした方を受け入れる施設もあります。特に将来介護を受ける場合も考慮して、入居施設を選ぶ方もいらっしゃるでしょう。
 
介護付き老人ホームへの入居はまだ早いが、現在の住居はバリアフリー化も不十分だし、この先介護なしで何年か過ごせるようなら、新しい環境で生活したい、と考えるシニア世代の方もいらっしゃると思います。一戸建て住宅居住者はもちろん、マンションなど集合住宅の居住者でも、関心をお持ちの方もいるでしょう。不動産情報を提供する会社に相談をした方もいるかもしれません。
 

サービス付き高齢者向け住宅

国が音頭をとり2011年から制度化したのが、「サービス付き高齢者向け住宅(略称:サ高住)」です。各自治体に登録を済ませた民間の事業者が運営する賃貸住宅です。入居者の年齢を考慮して、住宅内部のバリアフリー化、入居者の安否確認、生活相談サービスなどの実行が決められており、「食事サービス」の提供も選択できるため、食事をつくる手間からも解放されます。
 
ただし、医療・介護スタッフが常駐している施設は多くないため、医療や介護は、外部サービスに委託する必要があります。
 
民間の有料老人ホームに比べて費用も安くて済みます。入居の際に30万円ほどの入居金だけ済み、入居金が不要の施設もあります。月々の費用が10万円から25万円程度で済む施設が中心です(食事サービスの有無で金額が異なる)。60歳以上の方はもちろん、介護度の軽い要支援・要介護の認定を受けた方なら入居可能です。ただし、原則として終身入居はできません。
 
最近では、アパートなど一般の賃貸住宅は、高齢者の単身入居を嫌う傾向があることから、各自治体も「サ高住」を増やすことには力を入れています。今後、元気な高齢者も増えると予想されるため、行政でも「サ高住」の新規建設を後押ししていく可能性があります。
 

一般型のケアハウス

ひとり暮らしで、独立して生活するにはやや不安があり、親戚などからの支援も難しい方に適した施設が「一般型ケアハウス」です。日々の食事や洗濯など生活支援を受けられます。
 
「軽費老人ホーム」の1形態で、地方自治体や認可を受けた社会福祉法人が運営主体のため、公的補助があり、入居費用も安く抑えられています。入居金も不要か、かかっても20万円ほどで済み、月々の経費も10万円から18万円程度です。年間収入の少ない方は、入居金も減額されます。
 
介護を必要とせずに生活できる方にとっては、食事のサービスも受けることができ、入居者同士の交流も盛んな施設です。将来は「介護型ケアハウス」への移住もできます。費用面でも、安く入居可能な施設といえます。
 

住宅型有料老人ホーム

介護が必要な方が入居する「介護付き」とは異なり、原則自立している方が入居する有料老人ホームです。外出も自由にでき、食事のサービスや生活相談なども受けることができます。
 
ただし原則として、医療スタッフの常駐はなく、介護サービスの提供も受けることもできません。入居一時金も200万円程度から、高い施設では5000万円を超える施設もあります。月々の費用も20万円から35万円程度はかかります。
 
ほとんどが民間事業者による経営で、介護が必要となった場合は、系列の介護付き有料老人ホームへ入居できる施設があります。また同一ホーム内で、自立できる方と介護が必要な方の両方を併設している施設もあります。自立スペースに入居し、介護が必要になったら、介護スペースに移動ができます。いきなり介護付き老人ホームに入居するのに比べ、生活にも慣れることができるかもしれません。
 

高齢者向け分譲マンション

これまで見てきた賃貸方式または居住権を買う施設とは異なり、「高齢者向け分譲マンション」は、建物の部屋を購入します。
 
つまり、一戸建て住宅を買う、タワーマンションを買う、といった行為と同じです。そのため、これまでの施設と比べると経費面でも高額になりますが、子どもなどに相続財産として残せるという利点があります。郊外の一戸建て住宅に住む高齢者の方が、それを売却し都心の高齢者向けマンションを購入するケースもあります。
 
特に最近は富裕層向けに、住み替えを意識した超高額なマンションもあり、医療スタッフの常駐、高級レストランの併設、運動施設やスパの併設など、快適な日常生活を送るには至れり尽くせりの環境を整備しています。そのため購入金額も月々の管理費なども高額になっています。
 
どの施設を選ぶにしても、将来は必ず介護を受ける立場になることを考えておく必要があります。これまで見てきた施設の中では、住宅型有料老人ホームと一般型ケアハウスが、介護施設にスムーズに移行できるのではないかと考えます。
 
サービス付き高齢者向け住宅でも、介護に対応できる施設もありますが、多くの場合、新たな施設を探す必要があります。分譲マンションは、医療スタッフのサポートは受けられても、介護スタッフのサポートが必ずしも十分とはいえません。そのための新規に入居できる介護施設を検討する必要があります。
 
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
 
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

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