働きたい高齢者のための「高齢者雇用安定法」。企業側の取り組みとは?
配信日: 2021.12.19
この法律には、従来から65歳までの雇用確保措置義務が定められていましたが、令和3年4月には、新たに70歳までの就業確保措置の努力義務が加えられました。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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高齢者雇用安定法が定める企業側の義務
高齢者雇用安定法は、働く意欲と能力のある高齢労働者が、年齢にかかわりなく十分に能力を発揮できる環境を整えるための法律です。正式名称を「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」といいます。この法律では、次の2つが義務とされています。
1.60歳以上の定年の定めの禁止
2.定年年齢が65歳未満である企業については、65歳までの継続雇用措置の導入
継続雇用措置とは、次の3つのいずれかのことをいいます。
1.65歳以上への定年の引き上げ
2.定年の定めの廃止
3.希望者全員に対する65歳までの再雇用制度等の整備
再雇用の場合は、新たな雇用契約を結び直すことになります。労働者の能力、体力、個別事情などを考慮し、所定労働日数や所定労働時間をそれまでよりも減少させる契約にすることもできます。
しかし企業側がそうした契約を強制することはできません。再雇用契約をするときは、労働者と十分に話し合った上で、新しい雇用条件を決める必要があります。
高齢者雇用安定法が定める企業側の努力義務(令和3年4月改正)
令和3年4月、高齢者雇用安定法には大きな改正がありました。それまで65歳までだった雇用確保措置を整備する義務に加えて、70歳までの就業機会を確保する努力義務が新設されたのです。
この就業確保措置は、次の5つのうちいずれかの措置を講じることで達成されます。
1.70歳までの定年引上げ
2.定年制の廃止
3.70歳までの再雇用制度等の導入
4.70歳まで継続的に業務委託契約ができる制度の導入
5.70歳まで継続的に社会貢献事業等に従事できる制度の導入
70歳までの就業確保措置の特徴
70歳までの就業確保措置では、65歳までの雇用確保措置にはなかった特徴が2つあります。
1つ目は、自社や特殊関係事業主以外の企業で高齢労働者を雇うケースが就業確保措置として認められるようになったことです。65歳までの雇用確保措置では、継続雇用の雇い主は、自社以外では特殊関係事業主(子会社、親会社など)が認められているのみでした。
しかし70歳までの就業確保措置では、特殊関係事業主以外の企業が雇い入れた場合でも、措置を講じたと認められることになりました。
2つ目は、雇用契約のみでなく、業務委託契約などでも、就業確保措置として認められるようになったことです。70歳までの継続的な業務委託契約を締結することでも、就業確保措置の努力義務を達したことになります。
この場合、高齢労働者は個人事業主の立場となり、企業と契約を交わして仕事をしていくことになります。そして、こうした70歳までの就業確保措置を講じる場合でも、労働者の能力、体力、個別事情などを考慮し、事前に企業と労働者が十分に話し合った上で契約を締結することが大切です。
なお、70歳までの就業確保措置は努力義務ですから、措置を講じることができなくても罰則はありません。しかし70歳までの就業確保措置を講じた場合でも、65歳までの雇用確保措置義務を免れることはありません。
70歳までの就業確保措置は、あくまでも65歳までの雇用確保措置にプラスされる性質のものです。
働く意欲のある高齢労働者に対する企業の義務と努力義務
高齢者雇用安定法に定められた65歳までの雇用確保措置(義務)により、希望者全員が65歳まで安定的に働くことができる環境が整備されました。
そして令和3年4月の改正で新設された70歳までの就業確保措置(努力義務)により、働く意欲と能力のある高年齢者の雇用環境は一層整備されることとなりました。この改正により、いわゆる生涯現役社会の実現に、また一歩近づいたのではないかといわれています。
出典
厚生労働省高年齢者雇用安定法改正の概要
e-gov法令検索高年齢者等の雇用の安定等に関する法律
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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