更新日: 2021.12.17 その他老後

働きたい高齢者のための「高齢者雇用安定法」。企業側の取り組みとは?

働きたい高齢者のための「高齢者雇用安定法」。企業側の取り組みとは?
少子高齢化により労働人口が減少していく中で、働く意欲と能力のある高齢者の労働力が期待されています。高齢者雇用安定法は、そうした高齢労働者が年齢にかかわりなく能力を発揮していけるよう、雇用環境を整備するための法律です。
 
この法律には、従来から65歳までの雇用確保措置義務が定められていましたが、令和3年4月には、新たに70歳までの就業確保措置の努力義務が加えられました。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

新井智美

監修:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

聞くのは耳ではなく心です。
あなたの潜在意識を読み取り、問題解決へと導きます。
https://marron-financial.com

高齢者雇用安定法が定める企業側の義務

高齢者雇用安定法は、働く意欲と能力のある高齢労働者が、年齢にかかわりなく十分に能力を発揮できる環境を整えるための法律です。正式名称を「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」といいます。この法律では、次の2つが義務とされています。


1.60歳以上の定年の定めの禁止
2.定年年齢が65歳未満である企業については、65歳までの継続雇用措置の導入

継続雇用措置とは、次の3つのいずれかのことをいいます。


1.65歳以上への定年の引き上げ
2.定年の定めの廃止
3.希望者全員に対する65歳までの再雇用制度等の整備

再雇用の場合は、新たな雇用契約を結び直すことになります。労働者の能力、体力、個別事情などを考慮し、所定労働日数や所定労働時間をそれまでよりも減少させる契約にすることもできます。
 
しかし企業側がそうした契約を強制することはできません。再雇用契約をするときは、労働者と十分に話し合った上で、新しい雇用条件を決める必要があります。
 

高齢者雇用安定法が定める企業側の努力義務(令和3年4月改正)

令和3年4月、高齢者雇用安定法には大きな改正がありました。それまで65歳までだった雇用確保措置を整備する義務に加えて、70歳までの就業機会を確保する努力義務が新設されたのです。
 
この就業確保措置は、次の5つのうちいずれかの措置を講じることで達成されます。


1.70歳までの定年引上げ
2.定年制の廃止
3.70歳までの再雇用制度等の導入
4.70歳まで継続的に業務委託契約ができる制度の導入
5.70歳まで継続的に社会貢献事業等に従事できる制度の導入

 

70歳までの就業確保措置の特徴

70歳までの就業確保措置では、65歳までの雇用確保措置にはなかった特徴が2つあります。
 
1つ目は、自社や特殊関係事業主以外の企業で高齢労働者を雇うケースが就業確保措置として認められるようになったことです。65歳までの雇用確保措置では、継続雇用の雇い主は、自社以外では特殊関係事業主(子会社、親会社など)が認められているのみでした。
 
しかし70歳までの就業確保措置では、特殊関係事業主以外の企業が雇い入れた場合でも、措置を講じたと認められることになりました。
 
2つ目は、雇用契約のみでなく、業務委託契約などでも、就業確保措置として認められるようになったことです。70歳までの継続的な業務委託契約を締結することでも、就業確保措置の努力義務を達したことになります。
 
この場合、高齢労働者は個人事業主の立場となり、企業と契約を交わして仕事をしていくことになります。そして、こうした70歳までの就業確保措置を講じる場合でも、労働者の能力、体力、個別事情などを考慮し、事前に企業と労働者が十分に話し合った上で契約を締結することが大切です。
 
なお、70歳までの就業確保措置は努力義務ですから、措置を講じることができなくても罰則はありません。しかし70歳までの就業確保措置を講じた場合でも、65歳までの雇用確保措置義務を免れることはありません。
 
70歳までの就業確保措置は、あくまでも65歳までの雇用確保措置にプラスされる性質のものです。
 

働く意欲のある高齢労働者に対する企業の義務と努力義務

高齢者雇用安定法に定められた65歳までの雇用確保措置(義務)により、希望者全員が65歳まで安定的に働くことができる環境が整備されました。
 
そして令和3年4月の改正で新設された70歳までの就業確保措置(努力義務)により、働く意欲と能力のある高年齢者の雇用環境は一層整備されることとなりました。この改正により、いわゆる生涯現役社会の実現に、また一歩近づいたのではないかといわれています。
 
出典
厚生労働省高年齢者雇用安定法改正の概要
e-gov法令検索高年齢者等の雇用の安定等に関する法律
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
 
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

ライターさん募集