定年退職後の健康保険にはどんな選択肢がある?

配信日: 2022.01.19

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定年退職後の健康保険にはどんな選択肢がある?
定年退職が近づくと、今後のライフプランに加え、手続き関係で検討すべきことや選択すべきことが増えてきます。これまで勤務先でおこなっていた社会保険関係の手続きなどは、今後は、自分自身で申請する必要があります。
 
退職後の健康保険については、いくつかの選択肢があり、家族構成や年齢、収入などにより加入の可否や保険料負担が異なるため、多くの方が戸惑うようです。
 
自分にとって最適な選択をするための考え方やメリット、デメリットについて考えてみましょう。
大竹麻佐子

執筆者:大竹麻佐子(おおたけまさこ)

CFP®認定者・相続診断士

 
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での業務を経て現在に至る。家計管理に役立つのでは、との思いからAFP取得(2000年)、日本FP協会東京支部主催地域イベントへの参加をきっかけにFP活動開始(2011年)、日本FP協会 「くらしとお金のFP相談室」相談員(2016年)。
 
「目の前にいるその人が、より豊かに、よりよくなるために、今できること」を考え、サポートし続ける。
 
従業員向け「50代からのライフデザイン」セミナーや個人相談、生活するの観点から学ぶ「お金の基礎知識」講座など開催。
 
2人の男子(高3と小6)の母。品川区在住
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表 https://fp-yumeplan.com/

どうする? 75歳までの健康保険

日本において、すべての国民は何らかの公的医療保険に加入することが義務付けられています(国民皆保険制度)。これまで会社員として勤務してきた方は、会社の健康保険の被保険者であることに疑問を持つこともなかったかもしれません。
 
しかし、退職の翌日には会社の健康保険は資格喪失となるため、新たに加入の手続きをする必要があります。退職後の健康保険加入にあたっては、いくつかの選択肢があり、現在勤務する会社やご自身の年齢、配偶者の年齢、その後の働き方や収入などによって個人ごとに最適は異なります。
 
なお、75歳を過ぎるとすべての人が「後期高齢者医療保険」に移行します。
 

定年退職後の健康保険の選択肢

まずは、どのような選択肢があるのか知ることから始めましょう。
 

(1)会社員である妻の被扶養者となる

共働き世帯で夫婦どちらも会社員の場合、現役時代はそれぞれが勤務先の健康保険に加入していたことでしょう。最近ではパート勤務でも社会保険に加入するケースも増えています。どちらかが定年退職した後には、現役である配偶者の扶養となることは有効な選択肢です。
 
例えば、年上の夫が定年退職をむかえ収入が130万円未満で、かつ妻の年収の半分未満となった場合には、配偶者である妻の被扶養者となることを検討してみましょう。妻の年齢や働き方にもよりますが、今後の収入などの要件が合致すれば、夫の保険料負担なく加入できるため有効です。
 

(2)子の被扶養者となる

妻が専業主婦や社会保険に加入しないパート勤務であれば、夫婦で子の被扶養者になる選択肢もあります。子が会社員である場合には、「生計維持関係にある3親等以内の親族」として子が勤務する会社の健康保険に加入できる場合があります。扶養する子の保険料負担は扶養親族の加入前後で変わりません。
 
また、扶養される親の保険料負担もないため有効ですが、「生計維持関係」を証明する必要があることに注意です。60歳以上の場合、年収180万円未満で収入を上回る経済的支援を受けていることが要件です。そのため、選択できる可能性は低いかもしれません。
 

(3)退職する会社の健康保険の任意継続被保険者となる

選択肢として有力なのが、現在のお勤め先の健康保険での「任意継続」でしょう。最長2年間継続して加入することが可能です。ただし、在職中の保険料負担は会社と折半でしたが、任意継続被保険者となると全額支払う必要があるため、経済的負担をふまえた家計管理、資金計画を早めに考えておきたいものです。
 
また加入を希望する場合には退職後20日以内に手続きをしなければなりません。
 

(4)特定健康保険組合であれば、特例退職被保険者という選択肢も

一定の要件をみたし厚生労働大臣の認可を受けた健康保険組合であれば、「特定健康保険組合」の特例退職被保険者となることが可能です。企業にとって、長年貢献してくれたOBへの還元という意味もあり、全額負担であるものの保険料額も抑えられ、現役時代と同様の手厚い保険給付が受けられるのが魅力です。
 
ただし、該当する保険組合の数は少ないうえ、被保険者期間や年金受給権があることなどの加入要件をクリアする必要があるため、加入できるハードルは高いと言えます。念のため、現在加入中の保険組合のホームページなどで確認してみることをおすすめします。
 

(5)国民健康保険の被保険者となる

上記のいずれでもない場合は、国民健康保険に入ることになります。国民健康保険の運営は自治体と都道府県であるため、財政状況や高齢者人口などにより、保険料には地域差があるのが現状です。
 
基本的には、前年の所得に応じて算出される「所得割」と被保険者全員が負担する「均等割」の合算で保険料が決まります。国民健康保険には「扶養」という概念がないため、退職する夫と専業主婦(パート)の妻の場合には、「均等割」は2人分負担することになります。
 

現実的には、任意継続か国民健康保険の場合が多い

これまでの勤務先や年齢、配偶者の働き方によって、定年退職後に選ぶべき健康保険は異なってくるでしょう。
 
現実的に検討するのは、(3)任意継続被保険者になるか、 (5)国民健康保険の被保険者になるか、というケースが多いようです。
 
健康保険はいずれかに加入しなければならないため、国民健康保険は「最後のとりで」的な位置づけと言うこともできます。なお、これまで在職中に扶養されていた配偶者がいる場合、任意継続であれば追加保険料は不要ですが、国民健康保険であれば2人分の保険料負担が発生します。自治体によっては、ホームページ上で保険料試算ができる場合や相談窓口が設置されているケースもあるようですので、確認してみてください。
 
前年の所得に応じて保険料が決定する国民健康保険は、退職直後の保険料負担が重くなることが予測されます。一概には言えませんが、退職直後は任意継続を選択し、その後に国民健康保険に移行することも有効です。
 
出典
厚生労働省 ・特定健康保険組合について ・任意継続被保険者制度について
 
執筆者:大竹麻佐子
CFP🄬認定者・相続診断士

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