更新日: 2022.02.02 介護

介護保険サービスを利用するにはどうすればいい?

執筆者 : 新美昌也

介護保険サービスを利用するにはどうすればいい?
65歳になると「介護保険証」が送られてきます。介護保険は医療保険と違い、「介護保険証」を介護サービス事業所に持って行っても介護サービスを受けることができません。
 
ここでは、65歳以上の方(第1号被保険者)が介護サービスを利用するまでの、知らないと損をするポイントを解説します。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

介護保険とは

40歳になると介護保険に加入します。介護保険の被保険者は、65歳以上の方(第1号被保険者)と、40歳から64歳までの医療保険加入者(第2号被保険者)に分けられます。
 
第1号被保険者は、原因を問わずに要介護(要支援)認定を受けたときに要介護度に応じた介護サービスを受けることができます。一方、第2号被保険者は、加齢に伴う16種類の特定疾病(末期がんなど)が原因で、要介護(要支援)認定を受けたときに介護サービスを受けることができます。
 

介護サービスの利用の仕方

介護サービスの利用を利用するには、要介護認定の申請をして要介護度の認定を受ける必要があります。
 

▽申請

まず、65歳以上の方は、申請書と介護保険証を添えて、お住まいの市区町村の窓口で要介護認定の申請をします。申請は本人のほか、家族や地域包括支援センターでも代行してくれます。
 

▽訪問調査

申請後、市区町村の職員などから訪問を受け、聞き取り調査(認定調査)がおおむね1時間程度行われます。
 

▽審査・判定・認定の通知

要介護度の判定は、認定調査や主治医意見書に基づき介護認定審査会により行われます。認定は軽い順に非該当(自立)・要支援1・2・要介護1~5までの8段階に分かれます。申請から認定の通知までは原則30日以内です。
 
返却される「介護保険証」には、要介護度、有効期限、利用限度額などが記入されますので確認しましょう。
 

▽ケアプランの作成

「要支援1」「要支援2」の方は、地域包括支援センターに、「要介護1」以上の方は居宅介護支援事業者のケアマネジャーに依頼し、介護(介護予防)サービス計画書(ケアプラン)を作ります。
 

▽介護サービスの開始

ケアプランができたら、デーサービスや訪問介護などのサービス事業所と契約しサービスが開始します。
 

▽利用者負担

医療保険と異なり、要介護度によって、利用できるサービスの種類や、1ヶ月に使える金額(支給限度額)が決まっています。これらの範囲内であれば、1~3割の自己負担でサービスを利用できます。超えた場合は全額(10割)自己負担になります。介護保険サービスのメニューにない保険外サービスを利用した場合も自費です。
 
また、1~3割の自己負担には上限額があり、超えた場合は申請により「高額サービス費」が払い戻されます。この点は医療保険の高額療養費と同じです。
 

地域包括支援センターとは

地域包括支援センターには、保健師、主任ケアマネジャー、社会福祉士が設置されていて、介護のほか高齢者の不安なこと・困りごとなどの相談に無料で応じてくれます。家族の利用も可能です。介護保険の申請窓口も担っています。行政機関、保健所、医療機関など必要なサービスにもつないでくれます。
 

介護支援専門員(ケアマネジャー)とは

介護支援専門員(ケアマネジャー)は居宅介護支援事業所に設置されていて、本人・家族の心身の状況や生活環境、希望等を聞き取り、居宅サービス計画(ケアプラン)を作成し、ケアプランに基づいて、訪問介護などの介護保険サービスを提供する事業所(サービス事業所)との連絡・調整などを行います。
 
看護師、社会福祉士などの医療系・福祉系の資格をもち、業務経験5年以上の人がなる専門職です。専門分野が異なりますので、自分にあったケアマネジャーを選びましょう。市区町村の介護保険課や地域包括支援センターで無料配布している介護事業者ガイドブックを参考に探すことができます。
 
ケアマネジャーを選んだあと、もし、相性などが悪い場合は変更も可能です。なお、施設に入所した場合には、施設のケアマネジャーに変更になります。
 

訪問調査の賢い受け方

訪問調査に家族が立ち会う義務はありませんが、できるだけ立ち会うようにしましょう。ご本人の中にはプライドから、できないことをできると回答したり、調査当日にはりきってしまい、普段の暮らしや心身の状態が正しく調査員に伝わらず、適正な要介護認定が受けられない可能性があります。
 
調査票には「特記事項」として記入する欄があるので、本人の状況をよく知っている家族が、本人のできないことなどをメモしておき、調査員に渡すとよいでしょう。
 

主治医がいない場合

介護保険の申請をすると担当者から「かかりつけ医はありますか?」と質問されます。普段通院している医療機関があれば、市区町村からその医療機関へ主治医意見書の記入が依頼されます。事前に主治医の先生に「主治医意見書の記入の依頼がありますのでよろしくお願いします」と頼んでおくとよいでしょう。
 
主治医がいない場合は新たに医療機関を受診し、医師に主治医意見書を書いてもらうことになります。本人の状況をよく知っている家族が、本人のできないことなどをメモしておき医師に伝えるとよいでしょう。
 

申請後すぐに介護サービスを利用したい場合

申請後、認定結果が出るまでの間でも、仮のサービス利用計画(暫定ケアプラン)を作成すれば、介護サービスを利用できます。ただし、認定審査の結果、「非該当(自立)」と判定された場合、サービス利用料は全額自己負担となりますのでご注意ください。
 

認定結果に納得できない場合

都道府県の介護保険審査会に対して、一定期間内に不服申し立てができます。ただ、判定が出るまで数ヶ月かかり、結果が覆ることは期待できません。それよりも、要介護認定の区分変更申請を行うことのほうがよいでしょう。ケアマネジャーに相談してください。
 
出典
厚生労働省「介護保険制度の概要」
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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