更新日: 2022.03.17 老後

認知症の人が使える制度にはどんなものがある?

執筆者 : 新美昌也

認知症の人が使える制度にはどんなものがある?
認知症は脳の働きが低下し、記憶や判断能力の障害などが起こった状態をいいます。認知症で就業が困難になった場合には、「傷病手当金」や「失業保険」の受給を考えます。
 
精神障害の通院治療では、「自立支援医療制度」により医療費の負担が軽減されます。障害者手帳を取得すれば、税制の優遇などが受けられます。収入減に対しては「障害年金」など、さまざまな支援制度があります。
 
この中から、あまり知られていない「自立支援医療制度」「障害者手帳」「障害年金」「高度障害保険金」についてポイントを解説します。
 
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

自立支援医療制度

アルツハイマー病型認知症などで、通院による精神医療を継続的に受ける場合、一般の方は公的医療保険で3割の医療費を負担しますが、自立支援医療制度では1割に軽減されます。さらに、所得に応じてひと月あたりの負担上限額が設定されています。
 
入院医療の費用、公的医療保険が対象とならない治療、投薬などの費用(例:病院や診療所以外でのカウンセリング)、精神障害と関係のない疾患の医療費は対象外です。
 
負担上限月額は、生活保護世帯が0円、低所得が5000円・1万円、中間所得が、「総医療費の1割または高額療養費(医療保険)の自己負担限度額」です。なお、年収約833万円以上は対象外です。
 
さらに、統合失調症などで費用が高額な治療を長期にわたり継続しなければならない「重度かつ継続」者に該当する場合は、さらに負担が軽減されます。詳細は通院中の医療機関や市区町村の担当窓口にお問い合わせください。
 

障害者手帳

認知症で体に障害がない場合は「精神障害者保健福祉手帳」、脳血管性認知症などで体に障害がある場合は「身体障害者手帳」を申請できます。申請先は市区町村の障害福祉担当の窓口になります。
 
なお、申請は認知症で初めてかかった日から6ヶ月過ぎてから行います。障害の程度で障害等級が決められます。
 
障害者手帳を取得すると、

・公共施設の利用料の減免
・医療費助成
・公営住宅の優先入居
・公共交通機関の運賃割引
・税の減免
・再就職ができる状態であれば障害者雇用枠で働ける

などのサービスを受けることができます。
 
なお、障害者手帳の交付を受けていない人でも、納税者自身、同一生計配偶者または扶養親族が所得税法上の障害者にあてはまる場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。
 
例えば、65歳以上の認知症の方で要介護認定を受けた方や、認知症高齢者の日常生活自立度がIIa以上に該当する方などは、市町村長等や社会福祉事務所長から障害者控除対象者の認定を受ければ、所得税や市・県民税の障害者控除の対象となり、所得金額から一定額が控除されます。控除額は、障害者27万円、特別障害者40万円、同居特別障害者75万円です。
 

障害年金

認知症も障害年金の対象です。
 
障害年金には、認知症で初めて医師等の診療を受けた日(初診日)に加入していた年金制度に応じて、障害基礎年金(国民年金)と障害厚生年金(厚生年金)があります。障害基礎年金は、20歳前または国民年金の被保険者期間中、もしくは被保険者でなくなった後でも、60歳以上65歳未満で日本国内に住んでいる間に、障害の原因となった病気やけがの初診日がある方が対象です。
 
障害厚生年金の1級・2級に該当する場合は、障害基礎年金もあわせて受け取ることができます。なお、障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害が残ったときは、障害手当金(一時金)を受け取ることができる制度もあります。
 
障害基礎年金では、初診日から1年6ヶ月を過ぎた日(障害認定日)に、日本年金機構の定める障害等級1級または2級に認定された方に、障害厚生年金では1級から3級に認定された方に障害年金が支給されます。なお、障害者手帳の等級とは関係ありません。
 
おおまかにいうと、日常生活をおくる上で、常時、援助が必要な場合が1級、日常生活が著しく制限を受けている場合が2級、仕事に支障が出ている場合が3級です。
 
障害基礎年金の年金額(令和3年4月)は1級が「97万6125円+子の加算額」、2級が「78万900円+子の加算額」となっています。子の加算は、2人まで1人につき22万4700円、3人目以降は1人につき7万4900円です。なお、子とは18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級または2級の状態にある子です。
 
遺族厚生年金の年金額は1級が「報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加給年金」、2級が「報酬比例の年金額+配偶者の加給年金」、3級が「報酬比例の年金額(最低保障額58万5700円)となっています。
 
詳しくは、年金事務所にお問い合わせください。
 

高度障害保険金(生命保険)

生命保険に加入する認知症の人が、約款の「高度障害」と認められ、保険金を受け取れることがあります。約款の「終身常に介護を要する」や「言語の機能を全く永久に失った」にあてはまれば、高度障害保険金を受け取れる可能性があります。
 
また、団体生命保険に加入していれば住宅ローンの支払いが免除される可能性があります。詳しくは、保険会社の担当者に相談してください。
 
出典
厚生労働省「自立支援医療」
厚生労働省「障害者手帳」
国税庁「No.1160 障害者控除」
日本年金機構「障害認定基準」
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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