退職後には何をすればいい? 保険や税金はどうなる?
配信日: 2022.04.19
環境が変わることへの準備などで忙しい中、退職後に必要な事務手続きなどは思いのほか多いものです。また、手続きには期限があるものもあります。
退職時に慌てないように、どのような手続きが必要なのか確認していきましょう。
執筆者:小山英斗(こやま ひでと)
CFP(日本FP協会認定会員)
1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ
人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。
「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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会社に返却するもの
まずは、退職したら会社に返却しなくてはならないものを確認しましょう。一般的には次のようなものがあります。
・健康保険証
・社員証や制服、パソコンや携帯電話など会社から支給されているもの
健康保険証は退職日までは利用できますが、退職後、速やかに返却することを求められます。また、家族分の健康保険証がある場合にも一緒に返却が必要です。
もし、退職日の翌日以降に健康保険証を誤って使った場合は、健康保険組合が負担をする分を返納する手続きなどが必要となりますので注意してください。
会社から受け取るもの
退職時に会社から受け取る書類などには、次のようなものがあります。
雇用保険被保険者証 | 雇用保険に加入していることを証明するもの。 転職先が雇用保険を引き継ぐために必要。 |
離職票 | 退職したことを証明するもの。 失業手当(基本手当)の受給手続きなどに必要。 |
健康保険資格喪失証明書 | 健康保険の被保険者資格を喪失したことを証明するもの。 国民健康保険に加入する際に必要。 |
源泉徴収票 | 1年間の給与の総支給額と源泉徴収税額を証明するもの。 確定申告、転職先での年末調整の際に必要。 |
年金手帳 | 基礎年金番号の確認のために会社に預けていた場合は、返してもらう必要あり。 |
※筆者作成
従来、年金手帳は会社が従業員の基礎年金番号を確認するために必要でしたが、現在はマイナンバーの確認で済む場合があり、年金手帳の提出を不要としている会社もあります。
退職後、すぐに転職先の会社で働く場合
退職してすぐに転職先の会社で働くことが決まっている場合は、転職先に必要な書類を提出することで、会社が社会保険や税金に関する手続きを行ってくれます。その際、転職先に提出する書類には次のようなものがあります。
・雇用保険被保険者証
・健康保険資格喪失証明書
・源泉徴収票(転職先で年末調整をする場合)
・年金手帳(マイナンバーでの確認で済む場合などは不要)
退職後、すぐに働けない場合や自営業者になる場合
退職から転職までに働けない期間が生じる場合や、自営業者になる場合などは、社会保険(健康保険、年金保険)などに関する手続きを行う必要があります。
健康保険に関する手続き
会社を退職すると健康保険の被保険者ではなくなるため、健康保険の切り替え方法としては次の3つのいずれかを選択することになります。また、それぞれの手続きには期限があるので注意が必要です。
国民健康保険に加入する | 条件 | 手続き期限 |
特になし | 退職日の翌日から14日以内 | |
任意継続被保険者制度を利用する | 条件 | 手続き期限 |
健康保険の被保険者期間が退職日までに継続して2ヶ月以上ある | 退職日の翌日から20日以内 | |
被保険者の被扶養者となる | 条件 | 手続き期限 |
年収130万円未満など(扶養者の勤務先にもよる) | 原則的に事由発生日から5日以内 |
※筆者作成
国民健康保険の加入手続きには、退職の日の翌日から14日以内といった期限がありますが、14日を経過しても加入はできます。ただし、その場合でも保険料は退職日の翌日から計算した金額を納付する必要があります。
年金に関する手続き
会社員のときに第2号被保険者として加入していた厚生年金保険は、退職とともに脱退することになります。転職先でも厚生年金に加入する場合を除き、20歳以上60歳未満の人は第1号被保険者、もしくは第3号被保険者への移行手続きが必要になります。
第1号被保険者 | 条件 | 手続き期限 |
特になし | 退職日の翌日から14日以内 | |
第3号被保険者 | 条件 | 手続き期限 |
厚生年金保険に加入する配偶者に扶養されており、原則として年収が130万円未満であること | 退職後、第3号被保険者に該当してから5日以内(扶養する人の勤務先を通じた手続きとなります) |
※筆者作成
なお、退職後に失業状態にあるときなどは、申請により年金保険料の納付について全額もしくは一部の免除を受けることができます。申請が承認された場合、納付免除期間は年金の受給資格期間に算入されます。
失業手当に関する手続き
退職後、失業状態にある場合は、要件を満たすことによって雇用保険から失業手当(正式名称は基本手当)を受給することができます。こちらはハローワークでの申請が必要です。失業手当の受給要件としては、ハローワークで求職の申し込みをして、積極的に求職活動を行っていることなどがあります。
また、退職の理由が自己都合か、会社都合かによっても支給開始日や支給期間などが違ってきますので、要件などはハローワークでしっかり確認するようにしましょう。
税金に関する手続き
会社から給与を受け取っているときは、税金に関する手続きは会社が行い、所得税や住民税も給与から天引きされているかと思います。しかし退職した場合、確定申告の手続きなどを自ら行うことが必要になるケースがあります。
所得税は転職する時期によって手続きが異なる
所得税は退職した年に転職するかどうかで、確定申告の手続きについても異なってきます。
■退職した年に転職した場合
転職先で年末調整を受けるので、基本的に所得税の確定申告は不要になります。ただし、12月時点で転職先に入社している場合でも、12月分の給与の支給が無いケースなどでは、年末調整が受けられるかどうかは会社によって扱いが異なってくるので確認するようにしましょう。
■退職した年に転職しなかった場合
原則として確定申告が必要となります。ただし、退職した会社で年末調整が完了しており、その年の年末までに他に収入が無かった場合などは、確定申告が不要となることがあります。
住民税は退職する時期によって手続きが異なる
住民税は、前年の1月1日から12月31日までの課税所得を基に、自治体ごとに税額が決定されますが、会社員であれば6月から翌年5月までの毎月の給与から12分割された住民税が天引きされています。これを「特別徴収」といいます。
特別徴収は転職先でも引き続き行われますが、無職や自営業などになる場合は、自分で住民税を納付する必要があります。これを「普通徴収」といいます。住民税については、退職する時期により扱いが異なります。
■1月から5月に退職した場合
退職した月から5月までの住民税は、退職月の給与や退職金などから一括で特別徴収されます。ただし、住民税の額が退職月の給与などの額より大きかった場合は普通徴収となり、自分で納付することになります。
■6月から12月に退職した場合
退職後の住民税は原則として普通徴収に切り替わり、自分で納付する必要があります。ただし、退職する会社に希望することで、退職月から翌年5月分までの住民税を退職月の給与から特別徴収してもらうことも可能です。
住民税は、会社都合などの理由で失業状態となり、その納付が困難であると認められるときは、申請によって減免を受けられる場合があります。対象となる前年の所得の基準や減免の割合などは自治体によって異なりますので、申請が必要な場合は自治体に確認しましょう。
退職金に関する税金の手続き
退職金を受け取った際は、退職する会社で所定の手続きをしておくことで、源泉徴収で課税関係が完了します。そのため、原則として確定申告をする必要はありません。
まとめ
退職後に必要となる手続きは思ったよりも多く、期限があるので早めに手続きを進めるようにすることが大事です。また、退職後は社会保険料などを自分で支払うことになるケースや、失業手当は自己都合での退職の場合、受給までに一定の給付制限期間があったりします。
そのため、退職後の家計の収支に影響がないように、普段からしっかりと生活費の準備をしておくことも大切です。
出典
全国健康保険協会(協会けんぽ) 会社を退職するとき
日本年金機構 就職・転職・退職
ハローワーク インターネットサービス 基本手当について
国税庁 No.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき
横浜市 納税の方法
横浜市 市民税・県民税の減免について
国税庁 退職金と税
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)