更新日: 2022.04.27 その他老後

60歳で老後資金1500万円。年金とあわせて夫婦2人で何年暮らせる?

執筆者 : 柘植輝

60歳で老後資金1500万円。年金とあわせて夫婦2人で何年暮らせる?
老後不安が叫ばれる昨今、どの程度の資金があれば老後を暮らしていくことができるのか、この点については現役世代の多くの方が関心を寄せているのではないでしょうか。
 
仮に60歳の夫婦2人で1500万円の老後資金がある場合、そこから年金と合わせて何年間暮らしていけるのかシミュレーションしてみます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

まずは老後の収支の計算から

実際のところ、老後資金1500万円と原則65歳に受給が始まる年金で、60歳から夫婦2人が何年暮らせるのかは、ライフスタイルや居住地などによっても大きく異なります。工夫をすれば生涯暮らしていくことも不可能ではないと思いますが、暮らしぶりによっては10年程度で生活に行き詰まることもあるでしょう。
 
しかし、老後の収支を試算して、その結果から自分たちがどう生活していくかシミュレーションすることは可能です。これを基に、今回は老後資金1500万円と年金でどれくらい生活していくことができるか考えていきます。
 

老後の生活に必要なお金はどれくらい?

公益財団法人 生命保険文化センターの「令和元年度 生活保障に関する調査」によれば、夫婦2人で老後に最低限必要な生活費の平均は月額22万1000円、ゆとりある生活を送るためには平均で月額14万円の上乗せ(合計36万1000円)が必要という結果になっています。
 
居住する地域や支出の状況などにもよりますが、1ヶ月に22万円程度あれば夫婦2人での生活は十分可能として、老後の生活費はこの数値を基に考えていくことにします。
 

夫婦2人で受け取る年金はどれくらい?

夫婦2人で受け取れる年金がいくらになるかは、国民年金と厚生年金で異なります。国民年金は満額で月額6万4816円(令和4年度)で、夫婦合わせると月額12万9632円です。
 
それに対して厚生年金は、加入期間の収入などによって受給額が変化します。
 
仮に夫が、日本年金機構による平均的な収入(賞与含む月額換算の平均標準報酬43万9000円)で40年間就業した場合、将来受け取れる年金は国民年金を含めて月額15万4777円で、専業主婦(扶養内でパートをしていた場合などを含む)の妻の国民年金と合わせて夫婦2人で受け取れる年金は、月額で21万9593円となります。
 

1500万円と年金で夫婦がどれだけ生活していくことができるか

前提となる条件が出揃ったところで、実際に老後資金1500万円と年金で夫婦2人が老後どれだけ生活していくことができるのか、最低限の生活費(毎月22月1000円)でつつましく暮らした場合を一例に考えます。
 
夫が厚生年金を受け取れるのであれば、60歳から65歳までの5年間は1500万円ののうち1326万円(22万1000円×60月)を生活費に充て、その後は毎月の年金だけでも最低限の生活費は賄える計算となります。
 
しかし、病気など大きな支出が一切ないことは考えにくいため、現実的に30年以上など長期間の生活を老後資金の残り(174万円)と年金収入だけで続けるには、生活費を下げるといった工夫が必須となるでしょう。
 
一方、国民年金のみの夫婦では、60歳から5年間は老後資金を切り崩して生活し、65歳から年金を受け取った場合、最低限の生活費でも毎月9万1368円の赤字となります。赤字部分に老後資金の残りを充てても1年7ヶ月ほどで尽き、それ以降は生活が非常に苦しくなります。
 
仮に年金を前倒しして60歳から受け取った場合、2人分の年金額は9万8520円まで下がり(繰上げ受給では年金額が1ヶ月当たり0.4%減少)、月々の生活費は11万2480円の赤字となるため、70歳を過ぎたころには老後資金を使い果たしてしまう計算です。
 

老後資金1500万円と年金だけでは老後の生活は心もとない

夫婦の年金受給額や老後の生活費などにもよりますが、基本的には老後資金1500万円では心もとないといえます。
 
特に国民年金のみの夫婦の場合、老後資金1500万円と65歳以降の年金だけでは、60歳から10年とたたずに生活ができなくなると考えられ、老後もできるだけ就労し、生活費を節約していくことにもなります。
 
1500万円程度の貯蓄と年金収入で老後を過ごしていこうと考えている夫婦の場合は、今一度、老後の計画について考え直してみる必要があるでしょう。
 

出典

公益財団法人 生命保険文化センター 令和元年度 生活保障に関する調査
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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