更新日: 2022.04.29 介護

介護サービスが医療費控除に使える?医療費控除に使える介護サービスを解説

介護サービスが医療費控除に使える?医療費控除に使える介護サービスを解説
厚生労働省の調査によると、2020年1月末の時点で約667万人が要介護(要支援)認定を受けていることが分かりました。高齢になるにつれて、介護サービスにお金を使うケースも増えてくるでしょう。
 
ところで、介護サービスに使った費用が、医療費控除に活用できることをご存知でしょうか。意外と知られていない介護サービスと医療費控除の関係について、本記事で解説します。
川辺拓也

執筆者:川辺拓也(かわべ たくや)

2級ファイナンシャルプランナー

医療費控除は医療費の一部を所得控除に活用できる制度

国税庁によると、医療費控除とは「1年間で支払った医療費が一定額を超えた場合、所定の計算に基づいた金額を所得として控除する制度 」と定義しています。
 
所定の計算は、どちらかの計算式で表します。
 
・(実際に支払った医療費の合計額 - 保険金などで補てんされる金額) - 10万円
 
・総所得金額等が200万円未満の場合、総所得金額等の5%の金額
 
つまり医療費に使った一定の金額が、所得にみなされない制度が医療費控除です。医療費控除は一緒に生活している親族に支払った医療費も対象なので、配偶者や同居の家族の医療費も対象になります。
 

医療費控除に使える介護サービスは?

医療費控除は、一般的に医療費に適用する制度と思われがちです。しかし、介護サービスも医療費控除に適用できます。医療費控除に使える介護サービスを見ていきましょう。
 

・医療費控除に使える施設介護サービス

医療費控除に使える介護サービスのうち、まずは施設介護で対象となるものを紹介します。一般的に施設介護サービスでは、介護費と食費、居住費が医療費控除の対象です。

施設名 医療費控除の対象
指定介護老人福祉施設
特別養護老人ホーム
指定地域密着型介護老人福祉施設
施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に係る自己負担額として支払った金額の2分の1に相当する金額
介護老人保健施設 施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に係る自己負担額として支払った金額
指定介護療養型医療施設
療養型病床群等
施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に係る自己負担額として支払った金額
介護医療院 施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に係る自己負担額として支払った金額

出典:金融庁 医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価
 
ただし、日常生活に使用する費用や特別なサービス費用は対象になりません。例えば散髪や化粧などの理容・美容代や、個室に入る場合です。介護サービスを受ける場合は、医療費控除として活用できるか確認しておきましょう。
 

・医療費控除に使える在宅介護サービス

次に、在宅介護で医療費控除が活用できるサービスを紹介します。

居宅サービスの種類
A:医療費控除の対象となる居宅サービス等 訪問看護
介護予防訪問看護
訪問リハビリテーション
介護予防訪問リハビリテーション
居宅療養管理指導(医師等による管理・指導)
介護予防居宅療養管理指導
通所リハビリテーション(医療機関でのデイサービス)
介護予防通所リハビリテーション
短期入所療養介護(ショートステイ)
介護予防短期入所療養介護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用する場合に限ります。)
看護・小規模多機能型居宅介護(上記の居宅サービスを含む組合せにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分を除きます。)に限ります。)
B:Aと併せて利用する場合のみ医療費控除の対象となる居宅サービス等 訪問介護(ホームヘルプサービス)(生活援助(調理、洗濯、掃除等の家事の援助)中心型を除きます。)
夜間対応型訪問介護
介護予防訪問介護(※平成30年3月末まで)
訪問入浴介護
介護予防訪問入浴介護
通所介護(デイサービス)
地域密着型通所介護(※平成28年4月1日から)
認知症対応型通所介護
小規模多機能型居宅介護
介護予防通所介護(※平成30年3月末まで)
介護予防認知症対応型通所介護
介護予防小規模多機能型居宅介護
短期入所生活介護(ショートステイ)
介護予防短期入所生活介護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用しない場合および連携型事業所に限ります。)
看護・小規模多機能型居宅介護(上記①の居宅サービスを含まない組合せにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分を除きます。)に限ります。)
地域支援事業の訪問型サービス(生活援助中心のサービスを除きます。)
地域支援事業の通所型サービス(生活援助中心のサービスを除きます。)

出典:金融庁 医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価
 
厚生労働省の調査によると、2020年9月末時点で在宅介護サービスを受けている人は約384万4000人になります。実際に、介護を在宅でしている割合が多いことから、該当しているサービスがないか確認しておきましょう。
 
また介護老人保健施設や指定介護老人福祉施設へ通う際の交通費も、控除に活用できます。介護サービスを受けることが条件ですが、交通費も控除に使えるので知っておくと良いでしょう。
 

医療費控除を受けるために必要なものは?

医療費控除を受けるには、医療費控除の明細書を準備して申告をしないといけません。医療費控除の明細書は、以下の領収書が必要です。

・介護サービスの提供でかかった医療費の領収証
・介護サービスの提供でかかった交通費の領収証

電車やバスなど領収証が発行されない公共交通機関を使用している場合は、使用した日と金額をメモしておきましょう。また医療費控除は確定申告で行いますが、申告後5年間は書類の保管が必要です。申告後に税務署から提出を求められる可能性があるので、書類の保管には注意しましょう。
 

こまめに医療費控除が使える介護サービスか確認しましょう

医療費が実際にかからないと、認識されない制度が医療費控除です。ましてや介護サービスが医療費控除で使えても、介護でなければ認識もされないでしょう。しかし、高齢になればなるほど介護サービスを受ける可能性は高くなります。
 
だからこそ、医療費控除に使える介護サービスをこまめに確認することは大切です。定期的に、医療費控除が使える介護サービスを確認しておきましょう。
 

出典

厚生労働省 介護保険事業状況報告 令和元年9月暫定版
国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
国税庁 No.1125 医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価
国税庁 No.1127 医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価
 
執筆者:川辺拓也
2級ファイナンシャルプランナー

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