更新日: 2022.04.29 介護

「在宅介護」のツラさとは? 時間と費用の負担を見てみよう!

「在宅介護」のツラさとは? 時間と費用の負担を見てみよう!
高齢化が進むとともに、日本では介護を受ける「要介護者」の増加が社会問題となっています。要介護者の増加は社会保険料の増大につながり財政を圧迫するため、国の将来を左右する問題です。
 
一方で、要介護者を支える「介護者」の問題も顕在化しています。中でも自宅で介護を行う「在宅介護問題」は深刻さを増しています。
 
自宅で介護を行う在宅介護はどういった問題を抱えているのか、データを見ながら確認してみましょう。
木元泰徳

執筆者:木元泰徳(きもと やすのり)

2級ファイナンシャル・プランニング技能士

在宅介護のツラさ(1)時間と労力

在宅介護のつらさは「時間と労力」、さらに「お金」という2つの問題から生じています。
 
1つ目の問題である「時間と労力」は、介護者が介護に縛られることで生活の質(QOL:クオリティー・オブ・ライフ)が下がってしまうことです。自分の時間を確保できないことや労力を要することで、慢性的なストレスや体調不良を抱え、心身の健康を害する場合もあります。
 
厚生労働省が実施した「2019年 国民生活基礎調査」を見ると、要介護度が上がるほど、1日に占める介護時間の構成割合が大きいことが分かります。
 
例えば、要介護状態の人を要介護度レベル(要支援1~2、要介護1~5)で分類したときに一番割合の多い「要介護2」の人を介護する人のうち15.7%は、ほとんど終日介護を行っています。
 
1日のうち半分を介護に費やす人も含めると27.9%もの人が、介護に時間の大半を費やしているようです。要介護度が上がるにつれ介護の時間は増え、「要介護5」の人に至っては、実に56.7%もの人がほとんど終日介護を行っています。
 
実際に在宅介護の現場で行われている内容は以下の通りです。

・衣類の着脱
・床擦れ防止の移動
・排せつ処理
・入浴介助
・その他身の回りのこと

特に認知症を患う人の介護の場合、徘徊(はいかい)してしまうと命の危険もあるのでいっときも目を離せない環境が思い浮かびます。例示した内容の介護を行えば、介護者に体力的な消耗や腰への負担が生じることも想像できます。
 
厚生労働省の「2016年 国民生活基礎調査」では介護者の悩み・ストレスにも触れられています。
 
調査によると介護者の68.9%が、悩みやストレスを抱えながら介護を行っていることが浮き彫りになっています。内容は多岐にわたり、要介護者の身体のことに加え、介護者自身の身体のこと、お金のことや人間関係など、さまざまな悩みを抱えているようです。
 
ここまでの調査の結果から、在宅で介護を続けることが時間・体力のほか、精神面でもつらいものだと分かります。
 

在宅介護のツラさ(2)お金

在宅介護でつらさを感じてしまう、2つ目の問題は「お金」の心配です。
 
前出の介護者のストレスに関する調査でも触れましたが、介護者はお金の不安も抱えながら介護を行っています。その割合は男性は約23.9%、女性は約18.7%に上ります。要介護度が上がるにつれて介護時間が増えることを紹介しましたが、結果として離職を余儀なくされるケースも存在するため、お金の心配につながる場面は少なくないのでしょう。
 
離職に加えて、介護が始まると介護サービスや介護関連の日用品購入に伴う支出が増加します。公益財団法人 家計経済研究所によると、「要介護2」の人を介護するために必要な費用の平均は月々4.4万円になるとのこと。内訳は介護サービス1.4万円、その他の支出が3万円です。
 
離職や労働時間の減少による収入の減少に加え、介護関連費用により支出が増えると家計を圧迫することは容易に想像できます。介護が始まる前、40代くらいまでの早い段階で、介護が始まっても対応できる程度の貯蓄をしておくことが重要だといえます。
 

在宅介護は「早期対策」で対応

在宅介護で介護者が「時間と労力」、さらに「お金」で消耗する問題について解説しました。
 
介護の必要性に直面してからでは、選択肢が狭まってしまいます。在宅介護の労力を分散するために人手を準備する側面、そして家計の収支バランスを保ち続ける側面からも、早期に対策を取ることが重要だといえるでしょう。
 

出典

厚生労働省 2019年 国民生活基礎調査の概況(Ⅳ 介護の状況 P27図30)
厚生労働省 平成28年 国民生活基礎調査の概況(Ⅳ 介護の状況 P33図40、41)
公益財団法人 家計経済研究所 在宅介護にかかる費用
 
執筆者:木元泰徳
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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