更新日: 2022.05.02 介護

「在宅・寝たきり」終わりを迎えるまでどのくらいお金が掛かるの?

執筆者 : 木元泰徳

「在宅・寝たきり」終わりを迎えるまでどのくらいお金が掛かるの?
両親や配偶者、自分が寝たきりになったとき、誰が介護をするのか、介護を続ける体力があるのか、そして経済的に困窮することがないのか、不安は尽きません。
 
最も体力的、経済的に負担が大きくなりがちな在宅・寝たきり介護を続けたとき、どの程度お金が必要なのかを検証しました。
 
木元泰徳

執筆者:木元泰徳(きもと やすのり)

2級ファイナンシャル・プランニング技能士

在宅寝たきり介護で必要な月々の費用

最初に、寝たきりになったときに必要となる月々の費用を確認しましょう。
 
公益財団法人長寿科学振興財団によると、要支援1~2、要介護1~5の7段階のうち、最も介護の度合いが大きな「要介護5」について「ほとんど寝たきりの状態で、意思の伝達が困難で、自力で食事が行えない状態の人が対象。日常生活すべての面で、常時介護をしていないと生活することが困難な人が対象」と位置づけています。
 
要介護5の被介護者に掛かる費用については、家計経済研究所が調査を行っており、在宅介護に掛かる月々の費用は平均で7万4000円という結果が出ています。
 
内訳は介護サービスへの支出が2万1000円、介護サービス以外の支出が5万3000円となっており、介護サービスへの支出が介護保険により抑えられている一方で、要介護度が上がるにつれて、介護サービス以外への費用負担が大きくなる傾向がみられます。
 

健康寿命と平均寿命から見る寝たきり介護で掛かる費用

寝たきりになったときに必要な月々の費用を確認したところで、介護の期間がどの程度になるのか、介護に必要な総額がどの程度になるのかを確認しましょう。
 
参考にする数値は平均寿命と健康寿命の差です。公益財団法人生命保険文化センターによると、健康寿命を「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義しています。
 
つまり、平均寿命から健康寿命を差し引けば、介護が必要な大まかな期間を推定できそうです。
 
厚生労働省の資料によると、令和元年における平均寿命と健康寿命の差は、男性で8.73年、女性で12.06年と算出されています。介護の期間が長い傾向にある女性を例にすると、寝たきり状態での介護期間のおおよその費用は図表1のようになります。
 
図表1

(1)月々の在宅介護費用 7万4000円 / 月
(2)年間の在宅介護費用 (1)×12月 88万8000円 / 年
(3)介護期間の総費用 (2)×12.06年 1070万9280円 / 12.06年

在宅介護にかかる月額費用平均および厚生労働省の資料より筆者作成。
 
実際に必要になる費用は、要介護度や介護の期間により幅がありますが、1000万円を超える費用負担が生じる可能性が示唆されました。
 
一度に支出が生じるわけではありませんが、在宅で介護を続ける選択を取る場合は、介護による労力のほか、経済的な準備が必要になりそうです。
 

収入が見込める期間に方向性を決めよう

日本人の平均寿命、健康寿命、さらに要介護度5の平均的な支出から、在宅で寝たきりの人を介護する場合に、どの程度の費用負担が生じるのかを確認しました。
 
結果、1000万円を超える支出が生じる場合も考えられ、30・40代の早いうちから介護の方針決定、そして経済的な蓄えが必要なことが示唆されました。
 
そのときが来てから準備を始めても、経済的な困窮が避けられない可能性があるので、早めの準備を始めることをおすすめします。
 

出典

公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット 介護後件の介護度とは
公益財団法人家計経済研究所 在宅介護のお金と負担2016年調査 在宅介護にかかる費用
公益財団法人家計経済研究所 在宅介護のお金と負担2016年調査 介護サービス以外の支出
厚生労働省 第16回健康日本21(第二次) 推進専門委員会資料
公益財団法人生命保険文化センター 健康寿命とはどのようなもの?
 
執筆者:木元泰徳
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
 

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