更新日: 2022.05.06 その他老後

親が死亡したときの相続手続きとは? 相続手続きの3つの選択肢を解説

執筆者 : 桜井鉄郎

親が死亡したときの相続手続きとは? 相続手続きの3つの選択肢を解説
親が亡くなった後の相続手続きには3つの選択肢がありますが、本記事では相続手続きの内容、注意点やメリット・デメリットについて詳しく解説します。
桜井鉄郎

執筆者:桜井鉄郎()

1級ファイナンシャルプランニング技能士 宅地建物取引士

相続の3つの手続きとは何か

●単純承認
●限定承認
●放棄

これらが相続の3つの手続きです。
 

単純承認

単純承認とは、親のプラスの財産(預貯金、株式、不動産など)、マイナスの財産(借金、保証債務など)をすべて相続することです。
 

どんなときに単純承認すべきでしょうか?

ずばり、プラスの財産がマイナスの財産を上回っていることが確定しているときです。
 
この場合に必ず確認すべきことは、親が他人の借金の保証人になっていないかどうかということです。保証人になっていた場合、単純承認するとあなたが保証人になってしまうためです。
 
単純承認の手続きは不要です。何もしなければ単純承認したとみなされます。しかし次の場合、そのつもりはなくても単純承認したとみなされるので、ご注意ください。

●相続財産の一部でも処分したとき
●相続開始があったことを知った日から3ヶ月以内に、限定承認または放棄をしなかったとき
●承認または放棄をした後であっても相続財産の全部もしくは一部を隠匿し、私的にこれを消費し、または悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき

 

限定承認

限定承認とは、相続によって得たプラスの財産の範囲内で親の債務を弁済するという留保付きで相続することです。
 

どんな場合に限定承認すべきでしょうか?

プラスの財産、マイナスの財産の金額が不明な場合です。
 
プラスの財産の金額がマイナスの財産を上回っていれば単純承認、逆であれば放棄を選択すればよいのです(放棄については、後で解説します)。プラス、マイナスの金額が不確かな場合は、限定承認を検討してもよいでしょう。
 
マイナスの金額がプラスより多かったとしても、プラスの財産(預貯金など)の範囲内でマイナスの財産(借金など)を返済すればよいからです。

メリット

●プラスの財産の範囲内で借金(マイナスの財産)を返済できます。
例えばプラスの財産が100万円、マイナスの財産が500万円とすると、あなたが返済する借金額は100万円だけです。差額400万円は返済しなくてよいのです。

デメリット

●相続人が複数のときは全員の同意が必要です。
1人でも反対者がいると限定承認はできません。全員の同意を得るのには時間と労力を要します。
●相続した不動産に課税される場合があります。
相続財産に不動産が含まれている場合は、親が不動産をあなたに時価で譲渡したものとみなされ、親が購入した価額と時価との差額に所得税が課税されます。
例えば購入価額を100万円、時価を400万円とすると、差額300万円が課税対象になります。

限定承認を行うには、相続開始があったことを知った日から3ヶ月以内に財産目録を作成し、家庭裁判所に限定承認申述書を提出する必要があります。
 

放棄

放棄とは、親のプラスの財産、マイナスの財産をすべて相続しないことです。
 
相続を放棄するには、相続開始があったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出する必要があります。
 
提出した後、家庭裁判所から「相続放棄の照会書」が送られてきます。この照会に対して「回答書」を返送してください。そして家庭裁判所が回答書を受理し相続放棄を認めると、「相続放棄の受理書」が届きます。これで手続きは完了です。
 

それではどのような場合に、相続を放棄すべきでしょうか?

それはマイナスの財産がプラスの財産を上回ることが確定しているときです。
 
例えば借金が預貯金額より多い場合や、親が他人の保証人であり、保証金額が多額で簡単に返済できないと考えられる場合などがあります。

メリット

●借金を返済する責任がなくなります。
放棄を選択したことにより、あなたは親のマイナスの財産を引き継ぐ必要がなくなります。

デメリット

●親の残してくれた財産すべてを引き継ぐことができなくなります。
●放棄の撤回はできません。

後で多額の財産(タンス預金など)が見つかったり、数年後に親の所有不動産の価値が上がったりする可能性もあります。しかしこのような場合でも撤回は原則認められません。

放棄を選択する前に、相続財産は現在判明しているものですべてか、不動産の価値が今後どうなるかをよく調べておくとよいでしょう。
 

まとめ

ここまで相続の3つの選択肢について解説してきました。選択によってあなたとご家族の今後の生活が大きく変わるかもしれません。機会が訪れた際は、後悔しないために弁護士、司法書士などの法律専門家に相談することをお勧めします。
 

出典

e-Gov法令検索 民法
国税庁 民法の相続制度の概要
 
執筆者:桜井鉄郎
1級ファイナンシャルプランニング技能士 宅地建物取引士

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