更新日: 2022.05.06 介護
もし親が認知症になったら? 心配解消のための任意後見制度について解説
そうならないよう親の判断能力が低下したときに財産管理などを任せられる人を、あらかじめ決めておかれてはいかがでしょうか。そのためにうってつけの制度が任意後見制度です。本記事ではこの制度について詳しく解説します。
執筆者:桜井鉄郎(さくらい てつろう)
1級ファイナンシャルプランニング技能士 宅地建物取引士
任意後見制度とはどんな制度か
任意後見制度とは、親が十分な判断能力があるうちに、判断能力が低下したあとの財産管理などに関する事務処理の代理権を任意後見人に与え、その処理を委託する任意後見契約を締結するという制度です。
類似する制度で法定後見制度があります。これは、精神上の障害などで判断能力が低下した人の権利を保護するための制度です。
両者の相違点は次のとおりです。
図表1
(注)後見監督人等=後見監督人、保佐監督人、補助監督人
出典:法務省 「成年後見制度・成年登記制度Q&A」より筆者作成
任意後見制度のメリット・デメリット
メリット
・任意後見人を誰にするか決めることができる
親が自分の信頼できる人を指名できます。法定後見制度では家庭裁判所が選任します(ただし親の希望を伝えることは可能です)。
・任意後見人の業務内容を決めることができる
後見人の業務内容(不動産の管理、処分など)についても親が自由に決められます。
・任意後見人の報酬額を決めることができる
無報酬にすることもできます。法定後見制度では、家庭裁判所が報酬額を決めます。
・任意後見監督人が任意後見人の業務を監督する
任意後見制度では任意後見監督人が必ず選任されるため、任意後見契約の内容が確実に実行されることが期待できます。
デメリット
・任意後見人は法律行為(購入、売却など)を取り消せない
任意後見人は親の代理をすることはできますが、親の法律行為を取り消すことはできません。例えば親が詐欺師にだまされて高額な商品を購入したり、不動産を売却しても取り消すことはできないのです。
・任意後見監督人の報酬が発生する
任意後見制度では任意後見監督人が選任されるため、その報酬が発生します。
任意後見制度の手続き
1.任意後見受任者を決める
任意後見受任者とは任意後見人を引き受けてくれる人です。
2.任意後見人にしてもらいたいことを決める
3.任意後見契約の締結
親と任意後見受任者とで任意後見契約を締結します。この契約書は公正証書により作成されなければなりません。公正証書とは、権利、義務に関する事項について公証人法に基づき公証人が作成し、その内容を証明する公文書です。
4.任意後見監督人選任の申し立て
任意後見契約を締結した後、親の判断能力が低下し財務管理などができなくなった場合、任意後見監督人選任の申し立てを家庭裁判所に行います。
5.任意後見監督人の選任
家庭裁判所が任意後見監督人を選任します。
まとめ
今は元気で何でもできる親も、いつ認知症などで判断能力が低下してしまうかわかりません。そのときになって慌てないよう、今のうちに対策を講じられてはいかがでしょうか。弁護士、司法書士、行政書士などの専門家と相談することをお勧めします。
出典
e-Gov法令検索 任意後見契約に関する法律
法務省 成年後見制度・成年後見登記制度Q&A
日本公証人連合会 公証事務 任意後見契約
執筆者:桜井鉄郎
1級ファイナンシャルプランニング技能士 宅地建物取引士