更新日: 2022.05.24 セカンドライフ

フリーランスは年金を繰り下げても少ない? 老後に備えておくこと

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

フリーランスは年金を繰り下げても少ない? 老後に備えておくこと
フリーランスの年金は会社員や公務員などと比べると少ないです。2022年4月より公的年金の繰下げ年齢の上限が75歳になり、年金受給額は最大84%まで増額しますが、それでも多いとはいえません。
 
「老後2000万円問題」で示唆されたように、年金だけで老後を過ごすのは難しくなっています。フリーランスは、早いうちから老後に向けて資産形成をしておくとよいでしょう。
 
ここでは、フリーランスは年金を繰り下げても少ないのか、老後に備えてやっておきたいことなどについて解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

フリーランスの年金受給額

日本年金機構の発表によると、2022年(令和4年)4月分からの年金額(※1)は図表1のとおりです。
 
【図表1】

月額 年額
フリーランス 6万4816円 77万7800円
会社員や公務員など 15万4777円 (※2) 185万7324円

(※2)平均的な収入(賞与含む月額換算した平均標準報酬43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金:満額)の、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額21万9593円から、専業主婦の老齢基礎年金(満額)を差し引いた金額
 
フリーランスと会社員で年金額に差があるのは、加入できる公的年金の種類が異なるからです。図表2は加入できる公的年金の種類と特徴を簡単にまとめたものです。
 
【図表2】

加入できる公的年金 特徴
フリーランス 国民年金 ・保険料は一律定額(※3)
・もらえる年金は基礎年金のみ
会社員や公務員など 厚生年金 ・保険料は月給の17.828%を会社と折半
・基礎年金と厚生年金の2階建て

(※3)年度ごとに異なります
 
フリーランスが加入する国民年金は、収入額に関わらず保険料は定額で、65歳からもらえる年金は老齢基礎年金のみです。一方、会社員や公務員などが加入できる厚生年金は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2つをもらえます。
 
また、厚生年金は月給が高いほど保険料も高くなりますが、将来もらえる年金額も増えていきます。そのため、フリーランスよりも会社員や公務員の方が、もらえる年金額は多いです。
 

フリーランスは年金を繰り下げても少ない

年金は65歳から受給開始となりますが、年金受給開始年齢を遅らせると、1ヶ月あたり0.7%アップします。年金受給開始年齢を遅らせることを、繰り下げと呼びます。
 
図表3は、フリーランスと、会社員や公務員などが年金受給開始年齢を繰り下げた場合の年金額をまとめたものです(年金額は令和4年度のもの)。
 
【図表3】

フリーランス
(国民年金)
会社員や公務員など
(厚生年金)
65歳 6万4816円 15万4777円
70歳 9万2038円 21万9783円
75歳 11万9261円 28万4789円

 
年金受給開始年齢は75歳まで繰り下げでき、最大84%増額できます。増額は生涯続きますが、会社員や公務員などの厚生年金に比べると、やはり国民年金は、繰り下げで増額しても少ないです。
 

老後の資産はどれぐらい必要なのか

老後の資産はどれくらい必要なのかは、断言できません。なぜなら、老後を過ごすために必要な資産は人によって異なるからです。
 
老後の資産の数字を仮に求めるなら、いわゆる「老後2000万円問題」が役立ちます。「老後2000万円問題」は、2019年6月に金融審議会「市場ワーキング・グループ」で提出された、「高齢社会における資産形成・管理」の試算が発端です。
 
報告書によれば、老後の生活では毎月約5万円の赤字を補うために、20年で約1300万円、30年で約2000万円の資産が必要だと記載されています。なお、報告書の試算で用いられている主な収入は、厚生年金を受給している無職の夫婦二人の合計金額「19万1880円」です。
 
フリーランスでもらえる国民年金6万4816円よりも高額にもかかわらず、年金だけでは生活できないことを考えると、フリーランスはさらに資産が必要です。
 

フリーランスの方が年金受給額を増やす方法

フリーランスの方が年金受給額を増やす方法は、繰下げ受給以外にもあります。図表4は繰下げ受給以外で年金受給額を増やす方法をまとめたものです。
 
【図表4】

年金受給額を増やす方法 対象者 内容
国民年金基金 ・国民年金第1号被保険者(自営業やフリーランスなど)で、20~60歳までの方

・任意加入被保険者(65歳以上の方を除く)の方

・老齢基礎年金に上乗せできる公的な年金制度

・保険料が変更可能なため、自身の収入額やライフプランに合った掛け金を設定できる

任意加入 60歳以上で国民年金の年金受給資格を得られない方や、年金額が少ない方 ・60~65歳までの間、保険料の支払いを延長して国民年金に任意加入できる制度

・任意加入するには、自身で加入手続きが必要

・満額を超えて加入できない

付加年金 ・国民年金第1号被保険者(自営業やフリーランスなど)で、20~60歳までの方

・任意加入被保険者(65歳以上の方を除く)の方

・国民年金保険料に毎月400円を上乗せして、将来もらえる年金額を増やす制度

・加算されるのは「上乗せ分の保険料の納付月数×200円」のため、払い込んだ保険料がそのままプラスされるわけではない

 
また、公的年金以外の私的年金制度として、iDeCo(イデコ)や民間の個人型年金保険に加入することも検討してみましょう。iDeCoはフリーランスの方でも加入でき、掛け金が全額控除になるため、所得税や住民税が安くなるというメリットもあります。
 

フリーランスの年金受給額は繰り下げをしても少ない!

フリーランスの年金は基礎年金のみで、70歳や75歳まで繰り下げても受給額は少ないです。「老後2000万円問題」は2019年時点での試算であり、将来的に年金額が少なくなる、もしくは物価が上昇すると、老後に必要な資産はさらに多くなります。
 
フリーランスの方が年金受給額を増やすなら、繰下げ受給以外に、国民年金基金や任意加入、付加年金などを始めることを検討してみましょう。また、iDeCoやNISAに加入して、将来に向けて資産形成を始めておくとよいでしょう。
 

出典

日本年金機構 令和4年4月分からの年金額等について
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 か行 高齢任意加入
日本年金機構 付加保険料の納付のご案内
厚生労働省 教えて!公的年金制度 公的年金制度はどのような仕組みなの?
金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
国民年金基金連合会 国民年金基金制度とは?
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

ライターさん募集