更新日: 2022.05.27 定年・退職

中小企業退職金共済制度ってなに? 仕組みや加入するメリットを解説

中小企業退職金共済制度ってなに? 仕組みや加入するメリットを解説
勤めている会社が、中小企業退職金共済制度(中退共)に加入しているという人は多いでしょう。
 
中退共とはどのような退職金制度なのか、加入するメリットを含めて説明します。
荒木和音

執筆者:荒木和音(あらき かずね)

2級ファイナンシャルプランニング技能士

「中退共」ってどんな制度?

中退共の正式名称は「中小企業退職金共済制度」といいます。1959年に中小企業退職金共済法に基づいて設けられた国の退職金制度です。退職金制度を導入すると、業績が悪い状況でも退職金の支払いが発生する可能性があります。中退共は自力で退職金制度を持つのが難しい中小企業向けに作られました。
 
毎月の掛け金は企業が拠出し、従業員の退職時に、中退共から退職金が直接支払われる仕組みです。最低の拠出金額は5000円となっており、最大で3万円まで拠出可能です。勤続年数や賃金に応じて掛け金を決定し、定期的に見直しをするのが一般的な運用となっています。原則として従業員全員の加入が必要となっていますが、短時間労働者や雇用期間の定めがある従業員については未加入でも問題ありません。
 
図表1の要件を満たした企業のみ、加入できるようになっています。現在は37万7468もの企業が加入しています。
 
【図表1】

図表1

 
出典:独立行政法人勤労者退職金共済機構中小企業退職金共済事業本部 加入の条件
 

「中退共」に加入するメリット

中退共を導入する企業には次のようなメリットがあります。

・掛金は損金または必要経費となる
・掛金の負担軽減措置がある
・簡単に退職金の管理ができる
・人材の確保につながる

支払う掛金が全額非課税となるだけではなく、掛金月額の2分の1(上限5000円)を加入後4ヶ月目から1年間、国から助成してもらえるため、導入のハードルが低くなっているといえるでしょう。従業員ごとの納付状況や退職金額についても定期的に通知があります。
 
福利厚生として退職金制度を導入すれば、人材の定着や採用力の強化といった人材確保にもつながるでしょう。
 
また、通常の掛け金とは別に拠出をすることで、制度加入前の勤務期間を通算したり、転職したときには、前に在籍した企業での掛金の納付実績を通算できるようになっています。このような通算制度を利用することによって、まとまった退職金を得られるのが従業員にとってのメリットです。受け取り方法については、一時金払いだけではなく、分割も可能です。
 

「中退共」に加入する上での注意点

中退共に加入後、11ヶ月以下で従業員が退職すると、退職金は支給されません。12ヶ月以上23ヶ月未満で退職した場合に支給される退職金は、支払った掛け金を下回る金額になります。
 
つまり、受け取れなかった退職金については掛け捨てとなり、返還はされないため注意しましょう。また、月額変更申込書を提出すればいつでも掛け金の増額は可能です。
 
しかし、減額できるのは、掛金月額の減額を対象となる従業員が同意した場合や、現在の掛金月額を継続することが著しく困難であると厚生労働大臣が認めた場合に限られるため、掛け金は慎重に決定しなければなりません。
 

「中退共」への加入は従業員にも企業にも魅力がある

中退共への加入は、退職金を得られるという従業員のメリットだけではありません。掛け金が非課税となることや国からの助成を受けられることに加え、人材確保にもつながり、企業にとっても魅力のあるものといえるのではないでしょうか。
 

出典

独立行政法人勤労者退職金共済機構中小企業退職金共済事業本部 制度の概要
独立行政法人勤労者退職金共済機構中小企業退職金共済事業本部 掛金
独立行政法人勤労者退職金共済機構中小企業退職金共済事業本部 3.掛金について
独立行政法人勤労者退職金共済機構中小企業退職金共済事業本部 加入の条件
独立行政法人勤労者退職金共済機構中小企業退職金共済事業本部 制度の特色
厚生労働省 人材確保に「効く」事例集
独立行政法人勤労者退職金共済機構中小企業退職金共済事業本部 通算制度
独立行政法人勤労者退職金共済機構中小企業退職金共済事業本部 退職金
 
執筆者:荒木和音
2級ファイナンシャルプランニング技能士

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