更新日: 2022.05.28 介護

親の介護ってしなきゃだめですか? 扶養義務と毒親育ちの葛藤について

親の介護ってしなきゃだめですか? 扶養義務と毒親育ちの葛藤について
社会問題ともなっている「毒親」の存在をご存じでしょうか。親の介護はしなければならないと思いつつ、毒親の介護なんてしたくないと悩む子もいます。
 
親の介護における扶養義務とは何なのか、毒親とどう向き合うべきなのか、筆者が相談を受けた事例を通じて考えてみます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

毒親と介護の問題

「やっとのことで毒親から抜け出したものの、日々生きるだけで精一杯です」と、親の介護について筆者の元に相談をしてきたAさんは語りました。聞くところによると、幼少期から親によって長年苦しい思いをしてきたようで、親とは顔を合わせるどころか電話やメールなどでの連絡も取りたくない状況だと言います。
 
毒親とは、「子どもの毒となる親」といった意味の言葉であり、虐待など子に直接的な被害を与える親だけでなく、子を思うあまり過干渉や過保護になってしまい、結果として子に悪影響を与える親も含まれています。
 
Aさんは親が介護を要する状態になっていることを親せき伝いで知りましたが、「親とはもう関わりたくないし、そもそも介護するだけのお金も時間も、精神的な余裕もない。それでも親である以上、私が介護をするべきなのか」と悩んでいたそうです。
 

子から親への扶養義務

扶養義務とは、民法877条などにより定められた家族・親族間での経済的な援助のことで、親子や兄弟姉妹などは互いに扶養する義務があります。
 
通常、この扶養義務は消滅することはありません。仮に親によって苦しんだ過去や現状があったとしても、親子間における扶養義務は生きている限り続くものになります。
 
ただし、子から親への扶養義務は絶対というわけではありません。収入や社会的地位など、子の状況に照らし合わせて可能な範囲で行うものと解釈されているからです。つまり、親に対する扶養義務があるからといって、子が親の生活の全ての面倒を見なければならないということではありません。
 
また、扶養義務によって子が自ら親の介護を行う必要があるわけではなく、自身はお金を出すだけで親には介護施設に入ってもらう、全ての介護を業者に依頼する、といったことでも扶養義務を果たすことになります。
 

親の介護について相談者が選んだ回答

筆者は相談者のAさんに対し、扶養義務において具体的に親の面倒をどこまで見るか明確な基準を定めた法律は存在しないため、まずは時間を作って介護を行ったり、介護サービスを利用するための金銭の援助など、可能な範囲で対応すればいいことを説明しました。
 
最終的にAさんは、自身の生活だけでも経済的に厳しい状況であることや、現在の居住地と実家の距離が遠いことなどを理由に、親の介護はしないことに決めています。
 
Aさんとのやり取りを通じ、筆者はあらためて、現代社会における親子関係の難しさ、毒親に苦しむ子の存在について痛感しました。
 

毒親で悩む人に知ってほしいこと

たとえ毒親であっても親子である以上、扶養義務は放棄することができないというのが現実です。しかし、子から親への扶養義務というのは絶対的なものではなく、経済的な事情など個別の理由によって拒否することもできます。
 
今回紹介した事例のように、子が親の扶養や介護を拒否するという選択があることも知っておいてください。
 

出典

e-Gov法令検索 民法
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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