更新日: 2022.06.21 介護
民間の「介護保険」は必要? 平均「約5年」の介護期間で必要な費用はいくら?
本記事では、介護に必要な期間や費用をもとに、民間介護保険への加入が必要かを検討する際のポイントを紹介します。
執筆者:川辺拓也(かわべ たくや)
2級ファイナンシャルプランナー
介護期間は長期化の傾向
介護にどれくらい費用が必要かを考える際、まずは介護を行う期間がどのくらい続くのかを考える必要があります。
生命保険文化センターによる2021年の調査では、介護期間は平均すると61.1ヶ月となっています。介護が始まってから、療養に時間や費用がかかる期間は約5年間が1つの目安と言えます。
この介護期間は近年、長期化している傾向があります。10年以上にわたって介護をしている人は全体の17.6%と、10年間で5ポイント近く増加しています。
介護期間が長期化している背景には、平均寿命と健康寿命の差の広がりがあります。
健康寿命とは、生命保険文化センターの定義では「健康上の問題で日常生活が制限されない年齢」を意味します。平均寿命と健康寿命の差が大きいことは、健康的な生活を送れない期間がそれだけ長いことを意味します。
図表2の通り、男女差はあるものの平均寿命と健康寿命の差は約8~12年となっています。この寿命差がさらに広がりますと、介護に必要となる期間も長くなる可能性があります。
介護費用目安は一時金74万円、月々費用8.3万円
介護に必要なお金は「一時金」と「月々の費用」に大別できます。住宅改装や介護用品の購入で必要になる一時金は平均で74万円となっています。
一方で毎月の介護費用を見ますと、平均は8.3万円、年間100万円近くにのぼります。介護期間が長くなりますと、全体として費用負担が大きくなります。
介護費を考えるときは、介護期間の長さが大きく影響する継続的な費用についても、しっかりと計算に入れておく必要があります。
予想介護費用を基に加入の必要性を考える
仮に介護期間と費用の各平均値で単純計算した場合、介護に必要な費用は74万円+(8.3万円×12ヶ月×5年)=572万円かかることになります。(※実際に必要な金額は状況に応じて変わります)
介護費用572万円を「貯蓄や資産形成をして賄える」という場合には、介護保険に加入する必要性は基本的に高いとは言えません。ただ、資産の蓄えが十分でなく、年金などの収入見込みも少ない状況であれば、加入の必要性が高まります。
資産や収入の状況を踏まえた慎重な判断を
今回は、介護に必要な資金と期間を紹介した上で、民間の介護保険に加入すべきかどうか解説しました。介護資金を自分で賄える手段があるかどうかが、加入を判断する際のポイントとなります。介護期間の伸び率を踏まえつつ、慎重に検討しましょう。
出典
公益財団法人 生命保険文化センター 2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査
公益財団法人 生命保険文化センター 健康寿命とはどのようなもの?
厚生労働省 健康寿命の令和元年値について
執筆者:川辺拓也
2級ファイナンシャルプランナー