更新日: 2022.06.20 介護

「介護で仕事が困難」介護休業給付はいくらもらえる?「対象外」になるのはどんな場合?

執筆者 : 川辺拓也

「介護で仕事が困難」介護休業給付はいくらもらえる?「対象外」になるのはどんな場合?
介護休業給付とは、介護のために仕事ができなくなった場合、受け取るはずだった賃金の一部を補てんする雇用保険の保障です。介護が必要となる人の増加傾向が続いた場合、休業給付が果たす役割はますます大きくなります。
 
本記事では、介護休業給付制度の概要を紹介した上で、給付を受けるための条件や、2022年4月の法改正で給付のハードルが本当に下がったのかに焦点を当てます。
川辺拓也

執筆者:川辺拓也(かわべ たくや)

2級ファイナンシャルプランナー

介護休業給付金は賃金の約70%が非課税で受け取れる

介護で仕事を休業した場合に受け取れる介護休業給付金は、基本的に賃金の67%と定められています。ただし、「上限額33万2253円」という制約があるため、賃金の3分の1近くが必ずもらえるというわけではありません。
 
自分が受け取れる介護休業給付の金額を確かめる際に用いる計算式は、次の通りです。
 
・「休業開始前6ヶ月の平均賃金日額 × 支給日数 × 67%」
 
例えば、賃金の月額が30万円程度ですと、おおよそ20万円が非課税で受け取れます。支払い決定の通知が届いて1週間程度で口座に振り込まれます。(※実際の金額は状況によって異なります)
 
ただし、会社からの賃金が別で支払われている場合は給付の対象外となります。介護休業給付金には、仕事を介護で休まざるを得ない場合の賃金を補てんするという目的があるからです。
 

介護休業給付の支給対象となる要件

介護休業給付が支給される条件について、厚生労働省は次の2点を提示しています。

●家族が疾病や障害によって2週間以上にわたる介護が必要であり、休業せざるをえない場合
●会社に休業をする日を伝えて制度を利用した場合

介護休業給付が利用できる対象の家族は図表1の通りです。
 
図表1

出典:厚生労働省 「介護休業について」
 
介護休業給付は家族の対象者1名につき、93日を限度にして通算3回まで利用できます。
 

介護休業給付はパートやアルバイトでも利用しやすいとはいえない

もともと、介護休業給付金はパートやアルバイトの従業員にとって利用しやすいとは言い切れない制度でした。というのも、介護休業給付金は「雇用保険の被保険者であること」「介護休業を取っていること」が前提条件だからです。パート、アルバイトにとっては介護給付金を受け取る以前に、介護休業制度を利用すること自体のハードルが高い状況が続いていました。
 
介護休業のハードルを下げるため、2022年の4月より「有期雇用の場合、入社1年以上の勤続実績がなければ介護休業が受けられない」という制約が撤廃されました。
 
図表2

出典:厚生労働省 「介護休業とは」
 
ただ、介護休業の予定開始日から約9ヶ月のうちに雇用契約が満了したり、更新されないことがあらかじめ分かっている場合は制度を利用することができません。また、労使協定を締結している場合には従来と同じ制約が課され、入社1年未満では利用できない点にも注意が必要です。
 
図表3

出典:厚生労働省 「介護休業とは」
 
さらに雇用契約が1年以上でも、次に紹介する2つのケースでは介護休業給付が対象外になるケースもあります。

●介護休業の開始日よりさかのぼって2年間に被保険者期間が12ヶ月以上あること
●1ヶ月の定義は介護休業開始日の前日から1ヶ月ごとに区切った期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日あること

パートやアルバイトでも介護休業を取りやすくなりましたが、介護休業給付金を受け取るハードルが十分に下がったとは言い切れません。
 

介護によるワークライフバランスを向上させる大切な社会保障

介護休業給付は、介護によって仕事を休業する場合に67%を非課税で補てんする制度ですが、利用には今回紹介したようなさまざまな条件や制約があります。
 
従業員による介護休業の取得を積極的に推進しているかどうかは、職場によってバラつきがあるのが現状です。ただ、介護休業や介護休業給付金は、家族の介護が必要となった場合にもワークライフバランスを維持、向上させるための大切な社会保障制度です。給付金をどの程度の期間にわたって、いくらくらい受け取る権利があるのか、ここで紹介したポイントを押さえつつしっかり把握しておきましょう。
 

出典

厚生労働省 Q&A~介護休業給付~
厚生労働省 都道府県労働局・ハローワーク 高年齢雇用継続給付 育児休業給付 介護休業給付の受給者の皆さまへ
厚生労働省 介護休業について
厚生労働省 「令和元年度雇用均等基本調査」の結果概要
 
執筆者:川辺拓也
2級ファイナンシャルプランナー

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