更新日: 2022.06.27 その他老後

親が貯金0で年金生活を始めます。いざというときに利用できる制度はありますか?

執筆者 : 杉浦詔子

親が貯金0で年金生活を始めます。いざというときに利用できる制度はありますか?
60歳で退職し、退職後は普通に生活していると思っていた親から、ある日「貯金がなくなっちゃって」と相談されました。親が貯金0円で年金生活を始めると分かったとき、どうすればよいのでしょうか。
 
そこで、親を支援する前に行うことや利用できるかもしれない公的制度について、以下で説明していきます。
杉浦詔子

執筆者:杉浦詔子(すぎうらのりこ)

ファイナンシャルプランナー/産業カウンセラー/キャリアコンサルタント

「働く人たちを応援するファイナンシャルプランナー/カウンセラー」として、働くことを考えている方からリタイアされた方を含めた働く人たちとその家族のためのファイナンシャルプランニングやカウンセリングを行っております。
 
2005年にCFP(R)資格を取得し、家計相談やセミナーなどのFP活動を開始しました。2012年に「みはまライフプランニング」を設立、2013年よりファイナンシャルカウンセラーとして活動しています。
 

親の収支や財産をまず確認

年金生活に入る親から「お金がないので援助してほしい」と相談されたとき、毎月毎月、親が望む金額を仕送りすることが可能なら、それが最も簡単な解決方法かもしれません。
 
しかし、親への仕送りで自分たちの生活が苦しくなる場合には、まずは親の家計の収支を確認し、財産で現金に換えられる資産がないかを確認します。
 

親の資産を確認

家計の状況を子に話さない親もいると思いますが、相談された時点で、援助が必要なのかどうか判断ができないと伝え、親の家計状況を教えてもらうことからスタートです。
 
まず、「貯金が0円と言っているが、財産は0円なのか」を知ることです。貯金0円とは、通常使用している銀行口座の残高が0円であることが多く、すぐに使えるお金が足りないことを表すことが多いのです。
 
今すぐに現金化が難しい、保険商品、金融商品、貴金属や骨とう品、不動産などを保有していないか、親と一緒に確認します。
 
そこで、貯金が0円でも満期が近い貯蓄型の年金保険を保有していると分かれば、保険が満期になるまでの期間は生活維持が可能なのか、今すぐ解約して現金が必要なのかを知ることで仕送りの要否の参考になります。
 
また、親が所有する自宅に住んでいる場合には、家と土地などの不動産を保有していますので、不動産を売却して現金化できないか、不動産を担保として現金を借りられないかということも考えることができます。
 

親の収支を確認

たとえ貯金が0円でも、公的年金を納めてきた場合は年金が受給できますし、60歳を過ぎても働ける健康状態でしたら就労して収入を得ることができます。アルバイトなどで得られる収入と受給できる年金額と合算して収入がいくらになるのかを把握します。
 
そして、同じように支出額も把握します。退職後は退職前より収入が減る家庭が多くなりますが、退職後も退職前と同様に食事や旅行や趣味などにお金を使ってしまい、結果的に貯蓄ができない家計になっていることもあります。
 
このように親の収入と支出額を把握し、アルバイトなどで収入を増やせないか、生活を見直して支出を減らせないかを親子で一緒に考えて、親世帯の収支がマイナスにならない生活になるよう支援していくことになります。
 

年金生活者支援給付金制度

親が65歳以上の老齢基礎年金の受給者であり、同一世帯の全員が市町村民税非課税である場合には、「年金生活者支援給付金」を受け取ることができます。
 
年金生活者支援給付金は、前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が88万1200円以下であることなどの要件がありますが、令和4年度において所得額が前年より低下したことなどにより、新たに年金生活者支援給付金の支給対象となる方には、毎年9月頃から順次、日本年金機構から簡易な年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が送られます。
 
受け取れる金額は月額5020円を基準に、保険料納付済期間等に応じて算出され、以下の(1)と(2)の合計額となります。


(1)保険料納付済期間に基づく額(月額)=5020円×保険料納付済期間/被保険者月数480月

(2)保険料免除期間に基づく額(月額)=1万802円×保険料免除期間/被保険者月数480月

 

給付額の例

被保険者月数480月のうち納付済月数が480ヶ月、全額免除月数が0ヶ月の場合

(1)5020円×480/480月=5020円
(2)1万802円×0/480月=0円    合計5020円(月額)

 
受給要件や受給金額など、詳しくは年金生活者支援給付金制度の給付金専用ダイヤルで確認できます。原則、手続きした翌月分からが支給の対象となるため、請求書が届きましたら、速やかに手続きを行いましょう。
 

子からの支援は最終手段

親への支援は大切ではありますが、親のために無理をして、自分たちの生活が苦しくならないようにするのが望ましいです。まずは、親の資産状況や収支状況や年金生活者支援給付金制度が利用できるかなどを確認してから、どのくらい支援をするかを家族で決めるとよいでしょう。
 

出典

厚生労働省 年金生活者支援給付金制度
日本年金機構 簡易な年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届いた方
 
執筆者:杉浦詔子
ファイナンシャルプランナー/産業カウンセラー/キャリアコンサルタント

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