更新日: 2022.06.29 その他老後

2000万円では足りない? 老後2000万円問題と本当に必要な金額

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

2000万円では足りない? 老後2000万円問題と本当に必要な金額
老後2000万円問題を覚えていますか? 2019年に話題となったのですが、気が付くとメディアで報道されなくなっていました。話題にならなくなってからも、老後が不安だ、どうなるのだろうと思った人も多かったと思います。
 
そこで今回は、老後2000万円問題とはそもそもどのような問題だったのか、実際に2000万円だけで足りるのか、ということを解説しましょう。

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そもそも、老後2000万円問題とは何だったのか?

老後2000万円問題は、公的年金だけでは老後資金が足りないため、公的年金以外で2000万円ほど用意する必要がある、という2019年に話題となったものです。
 
実際には、金融審議会というグループが出した報告書を金融庁がメディアに発信する形で公に知られることになりました。この報告書では、毎月約5万円が不足するので、20年だと約1300万円、30年だと約2000万円の取り崩しが必要になる、とあります。
 
しかし、金融庁が言いたかったのは「老後に2000万円足りない」ということではありません。本当に言いたかったことは、「環境が変化したので資産形成や管理も変えていきましょう、金融サービスも考えました」ということだったのです。
 
問題となった約2000万円の取り崩しが必要になるという部分は、たった一行しか書かれていません。メディアで取り上げられたのが「年金だけでは足りない」という部分だったため、そこだけがクローズアップされて独り歩きしてしまったと言えるでしょう。
 

報告書の中身は?金融庁が言いたかったこと

では、金融庁が言いたかったことは、具体的にはどのようなものだったのでしょうか?
現在でもこの報告書を見ることができるので中身を確認すると、以下の3つのことが書かれています。
 
1つ目は、高齢社会を取り巻く環境の変化です。
 
少子高齢化や単身世帯の増加、退職金の減少など、長生きする時代の新しい問題が出てきました。退職した後に継続して働いている人も身近に増えていませんか? 私たちの生活環境は大きく変わってきていることがわかります。
 
2つ目は、環境の変化に対応するために考えていかなければいけないこと、について書いてあります。
 
ここで出てきたのが、老後30年で約2000万円の取り崩しが必要になる、という文言です。「環境が変わってきたので公的年金に加えて、別の資産も必要になってきましたよ」と言いたかったのですね。また、ライフスタイルが多様になったので、一人ひとりにあった資産形成や管理が必要になってきた、とまとめられています。
 
最後に3つ目は、考えられる対応策についてです。
 
ここでは、要約すると新しい資産形成の方法として、「iDeCoや積立NISAというサービスを用意したので利用してください」と書かれています。金融庁としては、2000万円問題の対応策もしっかりと用意していると、言いたかったのですね。さらに、資産を長い目で管理するために金融リテラシーの向上や高齢者保護の在り方について書かれています。
 

必要額は2000万円を超える? 実際の金額を考える

老後2000万円問題は、金融庁が言いたかったことが伝わらずに、「公的年金だけで生活できないのはおかしい、どういうことだ」という意見が広がった結果、話題になってしまったことがわかったかと思います。
 
しかし、一番気になるところは「実際には、公的年金以外に2000万円がかかるのか」と言ったところですよね。まずは、どこから2000万円という数字が出てきたのか、報告書にある数字を見てみましょう。
高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)
 

収入:社会保障給付(公的年金)19万1880円+その他収入1万7303円=20万9188円
支出:26万3718円

出典:金融審議会「市場ワーキング・グループ」報告書の公表について(別紙1)
 
支出26万3718円から収入19万1880円を引くと、7万1838円となります。これは1ヶ月分の差額なので、12をかけると年間で86万2056円となり、これが60歳から90歳までの30年間続くと考えると、かける30で2500万円を超えることになります。2000万円どころか2500万円も超える金額となってしまいました。
 
また、この金額には介護費用や住宅のリフォーム費用などは含まれていません。それらを加えると、さらに公的年金だけでは足りないことが考えられます。過度に不安にならずに自分の生活を見返しましょう。
 
いかがだったでしょうか? この記事を読んで不安になった方も多いかもしれませんが、過度に不安になることはありません。まず、先ほどの数字は、夫婦二人世帯の数字です。一人として計算すると半分で済むと考えられます。
 
また、例に出された夫婦は無職世帯なので、定年退職されても再雇用制度などを利用して長く働くことや、共働きであれば収入の部分が変わってきます。
 
不安になったり焦ったりせずに、自分の生活について見返すことが一番重要です。月々の生活費はいくらなのかを把握する、いくつまで働こうと考えるのかを話し合う、老後までに少しでも資産を増やそうと考えるなど、今からできることはたくさんあります。
 
環境の変化に対応できるように、自分のライフスタイルやライフプランを見返し、これからのお金について考えていきましょう。
 

出典

金融審議会「市場ワーキング・グループ」報告書の公表について(別紙1)

 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

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