「DINKs」や「おひとりさま」は要確認。死後事務委任契約ってなんだ?
配信日: 2022.08.18
しかし、1つだけ気にしなくてはいけないことがあります。それは「自分が亡くなった後の後始末」です。頼れる家族や友人のあてがあるなら問題ありませんが、ない場合はしっかりと対策を考えましょう。1つの手段として検討してほしいのが「死後事務委任契約」です。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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おひとりさまは珍しくない
最初に、いわゆる「おひとりさま」は珍しくない、という話をします。
50歳時点で未婚の男性は4人に1人、女性も5人に1人
内閣府の「平成30年版 少子化対策白書」によれば、2020年における50歳の時点で未婚(非婚)の割合は、男性が26.7%、女性が17.5%とのことでした。男性が4人に1人、女性が5人に1人といったところでしょう。これには、既婚者で配偶者と離別(死別)し、再婚していない人などは含まれていないため、実際の「おひとりさま」はさらに多いことになります。
DINKsも対岸の火事ではない
また、将来的に「おひとりさま」になる可能性が高い人たちもいます。代表的なのが、子どものいない共働き夫婦=DINKs(=Dual Income, No Kids)です。どちらか一方に万が一のことがあったり、離婚したりした場合は、ほぼ「おひとりさま」と変わらないでしょう。
死後事務委任契約とは
自分に万が一のことがあった場合、事後処理を頼めそうな人のあてがない場合に検討してほしいのが「死後事務処理委任契約」です。
死後事務委任契約とは
死後事務委任契約とは、本人が亡くなった後に発生する相続以外の手続きを含めた事務処理を信頼できる人に任せる契約のことです。具体的に何をしてもらうかは契約に基づいて決まります。一般的に任せられることを列挙してみました。
●親族、知人等、関係者への連絡に関する事務
●通夜、告別式、火葬に関する事務
●納骨、永代供養に関する事務
●介護施設や入院していた病院の費用の支払いに関する事務
●遺品整理に関する事務
●電気・ガス・水道・電話等の停止、各種契約の解約に関する事務
●健康保険証の返還、税金の未納があった場合の納税等に関する事務
実際に契約を結ぶ際は、お願いする人(委任者)と引き受けてくれる人(受任者)とで公証役場に出向き、公正証書を取り交わします。
専門家に頼むのが無難
死後事務委任契約における受任者になるのに、特別な資格は不要です。信頼できる友人がいるなら、その人に頼んでもかまいません。
ただし、こまごまとしたこともやってもらうため、慣れていない人に頼むと、なかなか事務処理が終わらない可能性もあるでしょう。手間をかけたくないのであれば、やはり弁護士、司法書士、行政書士などの専門家に頼む方が無難です。
死後事務委任契約のメリット
死後事務委任契約のメリットは、以下の通りです。
身寄りや親類がいなくても安心
「おひとりさま」やパートナーに先立たれて、しかも子どももいない人の場合、万が一のことがあったらどうするのか不安が残ります。家族や親族、友人をあてにできるなら何ら問題はありません。
しかし、実際に自分が亡くなった後に、自分が思っている通りに動いてくれるかは未知数です。死後事務委任契約を生前に結べば、何をどこまでやってもらうかを生前から明らかにできるので、安心でしょう。
加えて、弁護士、司法書士、行政書士などの専門家であれば、死後の事務処理にも慣れています。そのため、抜け・漏れがない状態で事務処理を進められるのも大きな強みです。
生前に自分の希望を伝えておける
「万が一のことがあったらこの人に連絡してほしい」「お葬式は親しい人だけでやってほしい」など、自分が亡くなった時にどうしたいかは希望があるはずです。死後事務委任契約を締結する際には、受任者に対しこまごまとした希望も伝えることになります。
実際に万が一のことが起きた時、可能な限り自分の希望に沿って動いてもらえるのは、やはり大きなメリットでしょう。
生前に自分の希望を伝えておける
一方、デメリットもあるので気をつけましょう。
費用がかかる
弁護士、司法書士、行政書士などの専門家と死後事務委任契約を結ぶ場合、やはり相応の報酬を払わなくてはいけません。契約の内容次第では、50万円~100万円とかなり高額になるケースもあります。先に見積もりを取り、疑問点があれば解決しておきましょう。
トラブルの火種にも
親兄弟や親族がいるにもかかわらず、なんらかの事情で第三者と死後事務委任契約を結ぶ場合は、トラブルに注意しましょう。例えば、死後事務委任契約に「葬式はしない」という内容を盛り込んでいたとします。しかし、相続人が「体裁が悪いので葬儀をしてほしい」と言い出すなど、対立する主張をする可能性はゼロではありません。
本来、死後事務委任契約を含めた委任契約は、当事者同士がいつでも解除することが可能です(民法651条)。相続人(ここでは亡くなった本人)は委任者の地位を承継しているため、委任者と同じように契約を解除できると考えられます。
実際は、死後事務委任契約を締結する際に、以下の2点を条項として盛り込むことになるでしょう。
●委任者の契約解除権を放棄する
●特定の理由がなければ契約解除できないようにする
万が一が起きる前から準備を
万が一のことはいつ、どこで起きるか分かりません。「自分は大丈夫」と言っていた人が翌日、どうなっているかも分からないのです。そのため、死後事務委任契約を含め「自分が亡くなった後のこと」は、日ごろから準備しておくようにしましょう。
出典
内閣府 平成30年版少子化対策白書 第1部 少子化対策の現状(第1章 3)
一般社団法人死後事務支援協会 死後事務委任契約を考えている皆様へ
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部