何歳から介護施設に入所しているのか調べてみました
配信日: 2022.10.12
今回は、70歳代以上の高齢者が介護施設等に入所している比率を推計で算出して、一定の年齢に達した際の選択を考えてみたいと思います。
ファイナンシャルプランナー CFP
家電メーカーに37年間勤務後、MBA・CFPファイナンシャルプランナー・福祉住環境コーディネーター等の資格を取得。大阪府立職業訓練校で非常勤講師(2018/3まで)、2014年ウエダFPオフィスを設立し、事業継続中。NPO法人の事務局長として介護施設でのボランティア活動のコーディネートを担当。日本FP協会兵庫支部幹事として活動中。
年齢と介護施設の利用者の比率
高齢期になったなら、住まいと介護施設について考えることが多くなると思われます。実際に介護施設に入所している高齢者の年代別の比率を調べたデータ(※1)があります。
そのデータによれば、介護保険施設(特養、老健、介護療養型医療施設)への入所者の37.4%が90歳以上となっています。
また、入所者の26.3%が85歳~89歳、18.5%が80歳~84歳になっています。79歳以下の各世代(75~79歳、70~74歳、65~69歳、64歳未満)では、それぞれ一桁の入所率となります。この数値は、日頃見ている状況やイメージにほぼ合致しているのではないでしょうか。
次に、高齢者の中で年代別に、どれだけの比率の人が介護施設などに入所しているかを調べてみることにします。介護保険施設(特養・老健・介護療養型医療施設)と有料老人ホーム、サ高住に入所している総数が公表されていますので、介護保険施設への年代別入所者比率をあてはめてみましょう。
サ高住とはサービス付き高齢者向け住宅のことで、「高齢者の居住の安定を確保することを目的として、バリアフリー構造等を有し、介護・医療と連携し高齢者を支援するサービスを提供する高齢者住宅のことです(※3)。
介護施設ごとの入所者数と年代別推計
以下の数値は、厚生労働省のデータ(※2)に基づく施設種類ごとの入所総人数です。
介護保険施設 95.7万人
有料老人ホーム 38.8万人
サ高住 15.9万人
合計 150.4万人
この数値に、上記の年齢別の入所者比率と介護保険1号被保険者数の人数をあてはめると、各年代別の施設等入所者の比率が推計されますが、以下の通りとなります。
年代 | 施設入所者比率 |
---|---|
65歳~69歳 | 0.4% |
70歳~74歳 | 0.9% |
75歳~79歳 | 2.3% |
80歳~84歳 | 5.9% |
85歳~89歳 | 13.4% |
90歳以上 | 33.6% |
65歳以上全体 | 4.7% |
表は筆者が上記手順で独自集計
●65歳以上の人の4.7%が介護施設に入所しています。
●90歳代では33.6%が介護施設等に入所しており、約3人に1人が施設入所という結果になっています。
●80歳代では5.9%~13.4%の人が施設入所をしています。
年代別の施設利用者の推計値は、ある程度納得のできる数値と言えるのではないでしょうか。
一方で、65歳以降で介護施設等に入所している人は4.7%程度であり、90歳以上でも65%程度の高齢者は自宅で生活をしていることになります。
このことは、高齢期になっても自宅で過ごすことができるしくみがあり、高齢者個人も自宅で過ごすことが可能なことを示唆しているのではないでしょうか。
このような選択と関連が深いのが、国と各自治体が積極的に進めている地域包括ケアシステムです。
地域包括ケアシステムの利用と個人での努力
地域包括ケアシステムは、「要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される」行政のしくみです。
近年は、在宅系のサービスと施設・居住系サービスが充実しており、個人の事情に応じた選択が可能になってきています。日頃から、このしくみの中心になっている地域包括支援センターに接触を保っておくことが大切でしょう。
まとめ
高齢期になった場合に、介護施設等へ入所するケースも増えますが、年代別にどの程度の比率で介護施設等に入所しているのかの実態について推計で算出してみました。
90歳代でも、自宅で過ごす人が多いとの結論であり、現在のしくみのさらなる進化と健康を維持して要介護を遅らせる個人の努力が必要なのではないでしょうか。
出典
(※1)厚生労働省 平成28年介護サービス施設・事業所調査の概況 介護保険施設の利用者の状況
(※2)厚生労働省 高齢者住まいの施策について P8
(※3)国土交通省 サービス付き高齢者向け住宅
執筆者:植田英三郎
ファイナンシャルプランナー CFP