60代以降の住み替えにはどのようなパターンがある?
配信日: 2022.10.12
住み替えの目的は世代ごとに違ってきますが、今回は、60歳以降に住み替えする場合のパターンと、住み替え時のメリットとデメリットについて学んでみましょう。
ファイナンシャルプランナー CFP
家電メーカーに37年間勤務後、MBA・CFPファイナンシャルプランナー・福祉住環境コーディネーター等の資格を取得。大阪府立職業訓練校で非常勤講師(2018/3まで)、2014年ウエダFPオフィスを設立し、事業継続中。NPO法人の事務局長として介護施設でのボランティア活動のコーディネートを担当。日本FP協会兵庫支部幹事として活動中。
目次
世代ごとの住み替えの意向と実態
国土交通省の調査(※)によると、世代別の「住み替え意向」は、30歳未満では8.2%、30歳~49歳では12.9%~13.4%となっており、50歳~54歳の15.8%が最も多く、その後は少なくなる傾向です。
今回のテーマである高齢者(65歳~75歳以上)の世代では、8.9~11.0%の人が住み替え意向をもっているようです。
65歳以降の住み替えの目的は、子育てが終わり、家族人数が少なくなったところで、リフォームや住み替えをする人が多いと思われます。どのようなパターンがあるのか、その具体的なケースを見ていきましょう。
一戸建てから駅近などのマンションへ
30歳代の子育て期に戸建ての家を購入し、家族の生活を維持してきたものの、子ども達が独立し、二階の空き部屋が利用されなくなるといった事例はよくあるケースです。
また、郊外に立地してクルマ使用で成り立ってきた生活を見直すという場合もあります。ときには、配偶者が先立ち一人暮らしになるケースもあります。このような場合、戸建てから駅近のマンション等に住み替える選択肢が考えられます。
・庭の草取りや植木の手入れから解放され家の維持管理が簡単
・旅行や外出などの際も空き巣などを気にせず鍵ひとつで気軽に外出できる
・近所付き合いから解放される
・マンション住まいは同じ建物内に誰かがいる安心感がある
・駅近だと外出、買い物や外食などに便利
・管理費負担が発生する。
・庭に出て味わう開放感が得られない。
・車を継続保有する場合は駐車場コストがかかる。
広いマンションから狭いマンションへ
同居家族の人数が少なくなることに伴い、広いマンションから、狭いマンションに住み替えることも考えられます。
・維持費が少なくなることが多い(管理費、修繕積立金、光熱費)。
・無駄な部屋がなくなりコンパクトな生活になる。
・断捨離の第一歩になる。不要になった家具衣類等の処分でスッキリした生活を始めるキッカケによい。
・売却差額を得ることができる場合がある。
・以前のようには荷物が収納できなくなる。
・来客をゆっくりもてなすことが難しくなる。
一般住宅(一戸建て・マンション)からシニア分譲マンションへ
一戸建てや広めのマンションから、高齢期に入って、有料老人ホームや介護施設への入所に躊躇することはよくあります。シニア向け分譲マンションは、そんなときの選択として、近年人気が高くなっているようです。
・24時間フロント受付がいるので一人住まいでも安心。
・ケアサービスは常駐しないが依頼窓口になる。
・食堂や喫茶コーナーなど共用設備が利用できることが多い。
・売却して介護施設に入所することもできる。
・管理費が高額、一般分譲マンションの3倍程度はかかる。
・判断能力の後退期に、売却や施設入所が自分でできなくなることがある。
持ち家から賃貸や介護施設へ
持ち家から賃貸(サ高住など)や介護施設へ入所する場合は、より差し迫った状況が想定されます。したがってメリットとデメリットというよりは、以下のような課題に対応することが大事になります。
入所を決定する際に検討を要する問題
・入所一時金や毎月の負担額を手持ち資金で賄えるのか、自宅処分の必要があるのかの確認が必要になる。
・入所候補先の立地・サービス内容を確認する。
・お試し利用でよく確認する必要がある。
その他、施設入所に関してはほかにも課題があるので、とにかくよく確認することが必要です。
自宅の処分の問題
契約まで家族や信頼できる人に相談しながら、信用できる不動産事業者を選ぶことが第一であり、慎重に決めることが大切です。
都心から郊外へ
ここまでは高齢期に便利な生活シーンを中心に考えてきましたが、一方で、仕事をしながら郊外生活(ワーケーション)という考え方や、永年の夢を実現するというケースもあり、全く別の発想で都心から郊外へ住み替えるということもあります。
まとめ
子育てが終わって高齢期を迎える前の住み替えについて、パターンごとのメリットとデメリットをまとめてみました。人生の後半から終盤に向かっての住まいについて考える方にとっての、選択の入り口となればと思います。
出典
(※)国土交通省 平成30年 住生活総合調査結果 93P
国土交通省 令和2年度 住宅市場動向調査報告書 64P
執筆者:植田英三郎
ファイナンシャルプランナー CFP