更新日: 2022.10.18 定年・退職

「定年45歳説」って本当? 本当に意識すべき「キャリア転換期としての45歳」

「定年45歳説」って本当? 本当に意識すべき「キャリア転換期としての45歳」
2021年9月、大手飲料メーカー社長が発言した「定年45歳説」が波紋を呼びました。政府は定年年齢65歳を義務化、さらに70歳まで延長させようとしている中で「定年45歳説」は時代の流れに逆行する考えと見なされ物議をかもしましたが、同社長は「45歳での解雇ではない」と釈明し、騒動は沈静化しました。
 
ただ、この「定年45歳説」は働き盛りの世代にとって、人生100年時代における多様な働き方について考えを深める機会ともなったのではないでしょうか。本記事では40代半ばという年齢をキャリアパスの観点でどうとらえたらよいのか、日本政策金融公庫総合研究所の調査内容を交えて解説していきます。
羽田直樹

執筆者:羽田直樹(はだ なおき)

二級ファイナンシャルプランニング技能士

【経歴要約】
1983年兵庫県立宝塚西高校入学。野球部入部。高校3年生時生徒会長を務め、首席で卒業。
 
1986年同志社大学法学部法律学科入学。労働法専攻。大学時代は部員300名を擁するESSに在籍し、1回生時は英語弁論大会で関西3位に入る。3回生時はセクションリーダーを務める。英検準一級合格。ディベート・ディスカッションで英語本体と論理的思考を学ぶ。
 
卒業後、都市銀行入行。支店勤務を重ね、住宅ローン、カードローン業務に従事し、渉外担当に従事。証券外務員資格、FP2級資格を取得。
 
2008年には本店事務部門課長に就任。その後、新入社員研修講師を拝命、2012年には事務管理部門の責任者としてコンプライアンスオフィサー・内部管理責任者・衛生管理者2種資格を行使し金融機関の事務管理部門の中枢を務める。
 
特に、特殊業務である、相続トラブル 破産 不渡り 金融犯罪 口座不正利用 当局対応などに精通。警察、国税局、金融庁との交渉経験あり。
 
【保有資格】
英検準一級                 
証券外務員2種       
FP2級           
コンプライアンスオフィサー  
証券外務員1種       
内部管理責任者       
衛生管理者2種       
 
【スキルセット】
個人ファイナンシャルプラン
金融コンプライアンス全般(法令 規制関係 事故関係 個人情報保護)
 
【強みとエピソード】
ファイナンシャルプラン全般、金融商品の仕組み、口座不正利用や振込詐欺などの金融犯罪などのトピックをお伝えできればと思っております。
 
本店の管理職時代は日本を代表する大企業取引・全国一円からの苦情対応当局対応などユニークなエピソードを数多く抱えております。
 
また、ファイナンシャルプランナーと内部管理責任者の両資格を保有していることで『攻め』と『守り』の両側面からの見解を展開できるものと思っています。
 
●メガバンクの金融事務の実体験をもつファイナンシャルプランナー
●証券外務員一級の販売スキルと内部管理責任者としてのリスクマインドを持つフィナンシャルプランナー
●あらゆる相続案件の処理経験がある元メガバンカーのファイナンシャルプランナー
●当局対応などニッチな経験をもつファイナンシャルプランナー

「定年45歳説」が意味するところ

現在の一般的な定年は60歳です。50歳または55歳で「役職定年」を迎えて年収が下がるケースはありますが、60歳以下の定年は労働基準法で禁止されており、現行制度下で「定年45歳」を字面通りに実現することは法律にも反する可能性があります。
 
とはいえ、「定年45歳説」が広げた波紋の意味は、実際に45歳という年齢での定年を設けるかという実務的問題にはとどまらないでしょう。
 
「自分のこれからのキャリアに自信がありますか」
「実際の定年年齢に達して必要とされるための準備ができていますか」

 
一連の騒動はこうした問いについて、現役世代のみなさんが改めて考えてみる機会になったのではないでしょうか。
 

キャリア転換期としての45歳

40~50歳代の働き盛りの世代にとって、将来的なキャリアパスに関する主な考え方として以下の3タイプが挙げられます。
 

●「組織型」:勤めている会社に在籍したまま、定年を迎え再雇用されるタイプ 
●「起業型」:勤めている会社を定年前に退職し、起業するタイプ
●「ハイブリッド型」:勤めている会社にいながら、副業など別の仕事に取り組むタイプ

 
「起業型」や「ハイブリッド型」を選ぼうとされる方は、新しい立場で収入を安定、向上させるために、あらかじめ一定のスキルを身につける必要が高いと言えます。
 

40歳代は起業のチャンス


 
60歳を定年とすれば、15年前の45歳前後を「起業型」や「ハイブリッド型」へのキャリア転換期ととらえることもできるでしょう。
 
日本政策金融公庫総合研究所が作成した「2021年度新規開業実態調査」によれば、起業する人の平均年齢は43.7歳となっています。起業経験者の現状を見れば、45歳前後を広い意味での「定年」と見なしてキャリアチェンジすることも自然と言えるのではないでしょうか。前述の調査結果の要点をまとめると、図表1のようになります。
 
図表1
 

調査項目 最も多い回答(比率) 補足説明
起業した年齢 40歳代(36.9%) 平均年齢は43.7歳
起業直前の職業 管理職の正社員(41.3%) 管理職以外の正社員を含めると69.6%
起業の動機 自らの意志による退職  (83.8%) 「会社都合による退職」が増加傾向(2020年度:4.0%→2021年度4.9%)
業種を決めた理由 今までの仕事の経験や技能を生かせるから(43.8%) 「身につけたスキルを生かせるから」を含めると63.2%
起業時の平均従業員 3.2人(−) 起業後約1年で0.9人増加
起業時の費用 500万円未満(42.1%) 500万円未満での開業は増加傾向
自宅と仕事場との通勤時間
(片道)
1~15分未満(31.1%) 「1分未満」も含めると58.8%
現在の満足度 やや満足(44.1%) 「かなり満足」を含めると69.9%

 
日本政策金融公庫「『2021年度新規開業実態調査』~アンケート結果の概要~」を基に筆者作成
 
調査では、40歳代半ばのスキルのある会社員が自宅近くで起業するケースが比較的多いことが見てとれます。また、自己資金は500万未満で、まずは3人ほどで小規模で起業しており、必ずしも事業規模を拡大していない場合にも、経営自体に満足している方が一定数いる実情が伺えます。
 

まとめ

センセーションを巻き起こした「定年45歳説」について、45歳で解雇されるかどうかではなく、より豊かなセカンドキャリアを迎えるにはどうしたらよいか、考えを深めるための機会という視点で考察してきました。
 
本記事で取り上げたアンケート調査からは、40代半ばは起業や副業を考える適齢期とも言えることが分かります。人生100年時代の老後生活に向けた準備のためにも、この機会に新たな仕事への挑戦を検討してみてはいかがでしょうか。
 

出典

日本政策金融公庫 「2021年度新規開業実態調査」~アンケート結果の概要~

 
執筆者:羽田直樹
二級ファイナンシャルプランニング技能士

PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集