更新日: 2022.10.24 その他老後

「生活保護」受給世帯で1番多いのは「高齢者世帯」って本当? 老後は生活保護も頼れる?

「生活保護」受給世帯で1番多いのは「高齢者世帯」って本当? 老後は生活保護も頼れる?
生活保護の受給世帯には高齢者が多いと報道されることがありますが、そういった状況が続いた場合、現役世代も老後に生活保護を頼りにすることはできるのでしょうか。
 
高齢者における生活保護の受給者数や受給世帯のほか、今後について考えてみます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

生活保護の受給世帯は高齢者が多い

厚生労働省が発表している「生活保護制度の現状について」によると、生活保護の受給者数は平成27年3月の約217万4000人にピークに減少傾向が続いており、令和3年8月の速報値では203万7800人となっています。
 
【図表1】


 
出典:厚生労働省 「生活保護制度の現状について」
 
一方、65歳以上の高齢者における生活保護受給者は増加が続き、令和2年の速報値は105万4581人、受給者全体では52%と高齢者が占める割合がかなり大きくなっています。
 
【図表2】

 
出典:厚生労働省 「生活保護制度の現状について」
 
令和元年から令和2年の間はほぼ横ばいでしたが、減少には至っておらず、65歳以上の高齢者が生活保護受給者の約半数を占めるという状況が当面は続いていきそうです。
 
また、生活保護の受給世帯数で見ていくと、令和3年8月時点では約164万世帯となっていますが、そのうち高齢者世帯は約90万9000世帯と55%近くを占めています。
 
【図表3】

 
出典:厚生労働省 「生活保護制度の現状について」
 

高齢者世帯の生活保護の受給が増加している理由

高齢者世帯の生活保護の受給が増加している背景の1つに、老齢年金の給付額があります。
 
総務省の「家計調査報告」(令和3年)によれば、65歳以上の夫婦のみの高齢者無職世帯における1ヶ月当たりの支出の総額は平均で25万5100円ですが、老齢年金など社会保障給付による収入は平均21万6519円となっています。
 
【図表4】


 
出典:総務省 家計調査報告(家計収支編)2021年(令和3年)平均結果の概要
 
老後の収入が年金だけの場合、平均的な支出を基にすると毎月4万円近くの不足が発生することになるため、特に高齢者無職世帯では生活が困難になる状況が考えられます。
 
また、65歳以上の単身無職世帯では14万4747円の支出に対し、社会保障給付は12万470円で、年金収入だけでは毎月約2万4000円が不足する結果となっています。
 
【図表5】

 
出典:総務省統計局 「家計調査報告(家計収支編) 2021年(令和3年)平均結果の概要」
 
老後の生活費の不足分について、就労による収入や貯蓄の切り崩しなどで補うことができる場合はいいのですが、働き続けることが難しいことや、老後に向けた資産形成を行えなかった高齢者世帯では支出と収入の差が埋められず、生活保護の受給に至ると考えられます。
 
また、状況によっては老齢年金の支給額よりも生活保護費の方が高くなるということもあり得ます。
 
今後、年金制度の変更や高齢者が長く働ける環境の整備などを通じて、この点を改善していかない限りは、高齢者世帯の生活保護受給率は高い水準での推移が続く可能性が高いでしょう。
 

現役世代は老後に生活保護を頼ることができるのか

今後も生活保護は社会のセーフティーネットとして存在し、現役世代の方も老後に生活で困窮したときは、生活の保障や自立を支援する制度として頼ることができるでしょう。
 
ただし、このまま高齢者世帯での生活保護の受給が増加していけば、生活保護の対象として認定されるための基準や要件が厳しくなることも想定されます。
 

高齢者の生活保護受給は社会全体の問題

生活保護の受給者は65歳以上の高齢者が占める割合が最も多く、受給世帯でも高齢者世帯が年々増加しています。社会保障制度の変更などがない限り、今後もこの傾向は続いていくと考えられます。
 
こうした現状を踏まえて、現役世代ができるだけ早くから老後に備えるだけでなく、国も社会問題として状況の改善に取り組んでいく必要があるでしょう。
 

出典

厚生労働省 生活保護制度の現状について
厚生労働省 被保護者調査(平成27年3月分概数)
総務省統計局 家計調査報告(家計収支編) 2021年(令和3年)平均結果の概要
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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