【財産・年金・慰謝料など】専業主婦が「熟年離婚」に向けて準備することは?
配信日: 2022.10.22
熟年離婚に向けて、どのような準備をしたらよいか、気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。本記事では、専業主婦が熟年離婚を考えたとき、どのような準備をしたら良いかについて解説します。
執筆者:中村将士(なかむら まさし)
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。
離婚に向けた準備
離婚は、これまでの結婚生活を清算する意味を持ちます。離婚の準備をするということは、結婚生活をどう清算するかを考えることといっても良いでしょう。離婚するにあたり、財産分与、年金分割、慰謝料の請求、子どもがいる場合は養育費についてなど、理解しておく必要があります。
ただし、本記事は熟年離婚をテーマとしているため、養育費については解説を割愛し、財産分与、年金分割、慰謝料の請求について解説します。
財産分与
財産分与は、結婚期間中に夫婦で築いてきた財産を分けることです。財産分与の対象となる財産には、以下のようなものがあります。
・預貯金
・不動産(住宅)
・自動車
・退職金
・保険金(解約返戻金)
・私的年金
・金融資産(株、債券など)
財産分与の額は、当事者間の協議によって決められるというのが基本です。ただし、当事者間で協議が調わない場合や協議ができない場合には、家庭裁判所での調停や審判で決められます。
年金分割
年金分割は、結婚期間中の厚生年金記録(保険料の納付記録)を分けることです。これにより、結婚期間中に夫が厚生年金に加入していれば、専業主婦であっても、離婚後に厚生年金を受給できるようになります。
ちなみに、国民年金(基礎年金)は、各自で加入しているため、分割の対象にはなりません。
年金分割には、合意分割と3号分割があります。合意分割とは、当事者の合意または裁判手続きによって年金の按分割合を決め、それに従い年金記録を分けることをいいます。
3号分割とは、平成20年4月1日以後、国民年金の第3号被保険者期間がある場合に、当事者の合意なく、相手方の厚生年金記録を2分の1ずつ分けることをいいます。年金分割の請求期限は、原則として、離婚をした日の翌日から2年以内です。
慰謝料の請求
慰謝料は、離婚の原因を作ったことへの損害に対する賠償金のことです。慰謝料の額は、基本的には当事者間の協議により決められます。協議が調わない場合などは、裁判によりその金額が決まります。そのときの金額は、離婚の原因や結婚期間の長短などにより異なります。
慰謝料が請求できる離婚原因として、不貞行為や暴力行為などが考えられますが、慰謝料を請求するためには、客観的な証拠が必要となります。慰謝料の請求をお考えであれば、証拠を集めておく必要があります。
離婚後に向けた準備
離婚後の生活についても、計画を立てておく必要があります。欲をいえば、老後の資金計画まできちんと立てておくのが望ましいです。そこまでは難しいという場合であっても、最低限、仕事と住まいについては、どうするかを考えておく必要があるでしょう。
一般に、離婚時の財産分与や慰謝料だけで生活していくのは難しいため、働いて収入を得なければなりません。しかし、これまでの職務経歴などによっては、新たな仕事を見つけることが難しい場合もあります。
そういったことも踏まえ、「仕事はどうするのか」「収入はどれくらい必要なのか」などを考えておきましょう。住まいについては、離婚時の財産分与で自宅を確保できれば問題ありません。
しかし、もろもろの事情で自宅に住まない場合、新しい住まいを見つけなければなりません。また、賃貸住宅の場合は家賃の支払いが必要です。どのような仕事に就くのかにもよりますが、家賃を払い続けることができるかどうかは、しっかりと検証する必要があります。
まとめ
熟年離婚に向けた準備は、大きく分けて2つあります。離婚に向けた準備と離婚後に向けた準備です。
離婚に向けた準備とは、離婚に際し、相手方に財産やお金を請求するための準備です。具体的には、財産を分ける「財産分与」、年金記録を分ける「年金分割」、離婚の原因となったことに対する「慰謝料の請求」があります。
離婚後に向けた準備とは、離婚後、どのように生活をしていくのかを考え、計画を立てておくことをいいます。特に、「仕事をどうするのか」「住まいをどうするのか」については、あらかじめ考えておいた方が良いでしょう。
熟年離婚は、近年では珍しくないようです。熟年離婚が増えてきた背景には、平均寿命の延伸や働き方の多様化も影響しているように思います。自分らしい人生を送るために離婚を考えているのであれば、その準備をしっかりしておきたいものです。
出典
厚生労働省 令和4年度 離婚に関する統計(離婚の年次推移)
法務省 財産分与
日本年金機構 離婚時の年金分割
法務省 養育費
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー