定年後は年金だけで生活できる?老後の生活費はいくら必要?
配信日: 2022.10.30 更新日: 2022.10.31
この記事では、老後に必要な生活費について説明します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
年金の受給額はどれくらい?
まず老後の主な収入源である年金の受給額について見てみましょう。厚生労働省のデータによると、平均年金月額は以下の通りです。
図表1
年度 | 国民年金 | 厚生年金保険(国民年金を含む) |
---|---|---|
平成28年度 | 5万5373円 | 14万7927円 |
平成29年度 | 5万5518円 | 14万7051円 |
平成30年度 | 5万5708円 | 14万5865円 |
令和1年度 | 5万5946円 | 14万6162円 |
令和2年度 | 5万6252円 | 14万6145円 |
国民年金は全国民が加入対象の制度であるため、全体の平均値といえます。一方で厚生年金保険は会社員や公務員のみ加入できるので、給与所得者の平均値として考えてください。
老後の生活費はいくら必要?
次に老後の生活費について説明します。
総務省統計局によると、65歳以上無職世帯の月平均消費支出額は表のとおりです。月平均の消費支出額から、年間の消費支出額を算出しています。
図表2
月平均の消費支出額 | 年間の消費支出額 | |
---|---|---|
65歳以上の夫婦のみの無職世帯 | 22万4436円 | 269万3232円 |
65歳以上の単身無職世帯 | 13万2476円 | 158万9712円 |
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2021年を基に作成
想像していたより少額に感じた人もいるかもしれません。しかし大きな病気を患ったり、住宅ローンの返済が残ったりしている場合は、上記の金額より多くの支出が発生する可能性もあるでしょう。あくまで平均値として参考にしてください。
必要な老後資金は?
それでは老後の生活費が年金だけで賄えるのか、検証してみましょう。
夫婦のみ世帯のケースで、厚生年金保険がある場合とない場合に分けてみていきます。試算の数値は、令和2年の年金受給額のデータと平均消費支出額のデータを用いています。
図表3 厚生年金保険がある場合
一月あたりの金額 | 1年(65歳) | 20年(85歳) | 25年(90歳) | 30年(95歳) | |
---|---|---|---|---|---|
公的年金 | 14万6145円 | 175万3740円 | 3507万4800円 | 4384万3500円 | 5261万2200円 |
消費支出額 | 22万4436円 | 269万3232円 | 5386万4640円 | 6733万800円 | 8079万6960円 |
差額 | -7万8291円 | -93万9492円 | -1878万9840円 | -2348万7300円 | -2818万4760円 |
※著者作成
年間で約90万円の差額が生じており、年齢を重ねるごとに不足額が増加しています。
次に厚生年金保険に加入していない人のケースを見てみましょう。
図表4 厚生年金保険がない場合
一月あたりの金額 | 1年(65歳) | 20年(85歳) | 25年(90歳) | 30年(95歳) | |
---|---|---|---|---|---|
公的年金 | 5万6252円 | 67万5024円 | 1350万480円 | 1687万5600円 | 2025万720円 |
消費支出額 | 22万4436円 | 269万3232円 | 5386万4640円 | 6733万800円 | 8079万6960円 |
差額 | -16万8184円 | -201万8208円 | -4036万4160円 | -5045万5200円 | -6054万6240円 |
※著者作成
厚生年金保険がない分、年金と支出との差額が大きくなっています。自営業やフリーランスの人は、私的年金を活用して老後へ備えておくべきでしょう。
シミュレーション上は退職金や貯金は考慮していないため、老後資金を準備できている人はここまで大きな不足額は生じない可能性もあります。ただ、厚生労働省によると大学卒・大学院卒の退職金平均値は1983万円となっており、老後のお金に余裕がある人は少ないのではないでしょうか。
iDeCoなどの私的年金やつみたてNISAを活用した資産形成を行い、早めに老後資金の準備を進める必要があるでしょう。
まとめ
定年後の生活を年金だけでやり繰りすることは、経済的に厳しいといえます。厚生年金保険に入っていても、退職金や貯蓄を考慮しなければ、定年後20年~30年の間で2000万円から3000万円の不足額が生じます。
毎月決まった金額を貯金や積み立て投資に回して、無理なく資産形成をしておきましょう。住宅ローンなどの借金は、できるだけ働いている間に完済しておくことも大切です。早めに老後資金の計画をたてて、安心してリタイア後の生活を送れるように準備しておきましょう。
出典
厚生労働省 令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2021年
厚生労働省 平成30年 就労条件総合調査 退職給付(一時金・年金)の支給実態
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部