更新日: 2022.11.02 老後

小規模企業共済と経営セーフティ共済。その違いはなに? 副業している人にも関係ある?

執筆者 : 酒井 乙

小規模企業共済と経営セーフティ共済。その違いはなに? 副業している人にも関係ある?
会社の経営者や個人事業主のための制度として、小規模企業共済と経営セーフティ共済があります。これらはどんな制度なのでしょうか。
 
また、「節税になる」と聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、どのような注意点があるのでしょうか。さらに、会社員の方が副業した場合でも利用できるのでしょうか。
 
これらの疑問に本記事がお答えします。
 
酒井 乙

執筆者:酒井 乙(さかい きのと)

CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。  
 
長期に渡り離婚問題に苦しんだ経験から、財産に関する問題は、感情に惑わされず冷静な判断が必要なことを実感。  
 
人生の転機にある方へのサービス開発、提供を行うため、Z FinancialandAssociatesを設立。 
 

小規模企業共済、経営セーフティ共済とは?

小規模企業共済とは、独立行政法人である中小機構が運営する、小規模企業の経営者やその役員、個人事業主のための「退職金制度」です。従業員が20人以下(卸売業・小売業・サービス業は5人以下など、業種によって違いあり)の個人事業主または企業の役員が加入できます(※1)。
 
この制度を利用すれば、現役中から掛金として積み立てた資金を経営者や個人事業主がリタイアに合わせて受け取ることができ、リタイア後の生活保障や安心につなげることができます。
 
一方、経営セーフティ共済は万が一取引先が倒産して売掛金などが回収できなくなった場合、共済金から必要資金を借り入れできる制度です。いざという時の運転資金の調達手段として使える点が、この制度の大きな特徴です。
 
加入資格は継続して1年以上事業を行っている中小企業者で、業種によって定められた資本金や従業員数を下回っている必要があります(※2)。
 

小規模企業共済、経営セーフティ共済のメリット

この2つの共済制度にはさまざまなメリットがあります。主なものは以下のとおりです。
 

■小規模企業共済のメリット

●退職金としての資金(共済金)を準備できる
●毎月の掛金を1000円~7万円(500円単位)の間で自由に変更できる
●共済金の受取方法を「一括」「分割」「一括と分割の併用」で選べる
●掛金を事業から生じる「所得」から控除できるので、節税につながる
●低金利の貸付制度を利用できる

 

■経営セーフティ共済のメリット

●取引先の倒産時に担保不要、保証人不要で借り入れができる(納付済みの掛金総額の10倍(最高8000万円)まで)
●いざという時に借り入れできるため、そのための資金を預貯金に長期間置いておく必要がなくなる
●毎月の掛金を5000円~20万円(5000円単位)の間で自由に変更できる
●掛金を事業の経費にできるので、節税につながる

 

主な加入要件や注意点

加入によってメリットの多い2つの共済ですが、加入に当たっては加入要件を満たしているか、また、加入後どんな点に注意すべきか、事前に各共済のホームページなどで確認が必要です。
 
例えば、小規模企業共済に加入するには、常時使用する従業員の数が20人以下(ただし、卸売業・小売業、宿泊・娯楽業を除くサービス業の場合は5人以下)の個人事業主、または会社等の役員でなければなりません。
 
加入後の注意点としては、加入から240ヶ月(2年)未満で中途解約すると元本割れとなる(※3)、加入後に掛金を12ヶ月以上滞納すると共済契約が解約となってしまう(機構解約。ただし、解約手当金を受け取ることができます)(※3)、などがあります。
 
一方、経営セーフティ共済においては、加入できる方は、事業を始めてから最低1年経過している場合です。 
 
加入後の注意点としては、加入から40ヶ月未満で中途解約すると元本割れとなる(※4)、解約手当金は課税される(そのため受取時期を赤字の期にするなどの工夫が必要)、売掛債権が生じない業種(金融業者、不動産業者など)では共済金貸付を受けられない場合がある(※1)、などです。
 

掛金を節税につなげるためのポイント

メリットの項で紹介した通り、小規模企業共済は掛金を事業から生じる「所得」から控除することで、経営セーフティ共済は事業の経費にすることで、それぞれ節税できます。
 
しかし、実際の節税には以下の点にも留意が必要です。
 

1.経理や税務申告上の処理が違う

小規模企業共済の掛金は、事業所得などから「所得控除」として控除しますが、経営セーフティ共済は事業の売上から「経費」として差し引きます。そのため、経理や税務処理に違いがあります。混同しないよう気を付けましょう。
 

2.共済金の受取時には課税される

掛金の支払時に税金を下げることができる代わりに、積み立てた掛金を受け取る時には逆に課税されます。 
 
具体的には、小規模企業共済の場合、共済金を一括で受け取ると退職所得、分割で受け取ると雑所得となります。一方、経営セーフティ共済の解約手当金は、法人の場合は益金へ算入、個人事業主の場合は事業所得の収入となります。
 

3.経営セーフティ共済の掛金は社会保険料を下げる効果がある

経営セーフティ共済の掛金は、税金だけでなく国民健康保険料や介護保険料などの社会保険料を下げる効果もあります。同共済は掛金を経費として社会保険料の元となる所得から差し引くことができるためです。
 
一方で、掛金を所得控除として差し引く小規模企業共済は、社会保険料を下げるメリットはありません。 
 

所得500万円、毎月6万円の掛金で年間約30万円の節税に

それでは、具体的にどれくらいの節税メリットがあるのかを見てみましょう。
 
例えば個人事業主の場合、事業所得(売上から経費を引いた額)が500万円で、小規模企業共済、経営セーフティ共済の掛金をそれぞれ毎月3万円(年間72万円)支払ったとします。所得税(税率20%、復興所得税を除く)、住民税(税率10%)、個人事業税(税率5%)(※5)とすると、最大で25万2000円の節税につながります。
 
72万円(掛金の年間計)×35%(税率計)=25万2000円
 
さらに、経営セーフティ共済の掛金で社会保険料も下がります。国民健康保険料の料率を12.67%(※6)とすると、保険料は年間で約4万6000円減る計算です。
 
36万円(掛金の年間計)×12.67%(保険料率)≒4万5600円
 
合計すると約29万7600円。年間72万円の掛金で、約30万円を節税できる計算です。
 
ただし前述のとおり、共済金や解約手当金の受取時には課税される点は注意が必要です。
 

会社に勤めながらの副業では原則使えない

最後に、会社に勤めながらの副業でもこの2つの共済を利用できるのでしょうか。これも、小規模企業共済と経営セーフティ共済で違いがあります。小規模企業共済は、副業では原則加入できません。「法人または個人事業主と常時雇用関係にある方」は加入資格がない、とされています(※1)。
 
一方、経営セーフティ共済にはそのような条件はないので副業でも加入は可能ですが、個人事業主として開業届を出す、開業から1年を経過して確定申告書を提出する、などの準備が必要です。副業とはいえこうした作業が必要になるので、留意が必要です。
 
以上のように、2つの共済制度には違いと注意点があります。制度内容をよく理解したうえで、上手に活用しましょう。
 

出典

(※1)中小機構 小規模企業共済 加入資格
(※2)中小機構 経営セーフティ共済 加入資格
 
(※3)中小機構 小規模企業共済 共済金(解約手当金)について
「掛金納付月数が、240か月(20年)未満で任意解約をした場合は、掛金合計額を下回ります。」
「機構解約(掛金を12か月以上滞納した場合)」
 
(※4)中小機構 経営セーフティ共済 制度の概要
「(掛金を)40か月以上納めていれば、掛金全額が戻ります」
 
(※5)東京都主税局 個人事業税
個人事業税については、業種によって税率(3%~5%)に違いがあります。
 
(※6)横浜市 ホームページ/令和4年度保険料の料率等について
横浜市における所得割率(40歳以上からかかる介護分を含む)。料率は市町村によって変わります。
 
執筆者:酒井 乙
CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。
 

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