更新日: 2022.11.03 介護
公的介護保険の施設サービスって何? 費用はどれくらいかかる?
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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公的介護保険のサービスの種類
原則65歳以上の要介護認定を受けた方が利用できる公的介護保険のサービスは、大きく居宅サービス、施設サービス、地域密着型サービスの3つがあります。
居宅サービスには、訪問介護などの「自宅で受けるサービス」、デイサービスなどの「施設を利用して受けるサービス」、福祉用具のレンタルなど「介護環境を整えるサービス」があります。
施設サービスは、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院で受けるサービスをいいます。したがって、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームで受ける介護サービスは施設サービスではなく、居宅サービスですので知っておきましょう。
地域密着型サービスは、事業所や施設のある市区町村の住民だけが受けられるサービスです。小規模多機能型居宅介護や、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)などがあります。
施設サービスの種類
公的介護保険の施設サービスに指定されている施設は、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院の4つがあります。要介護の方が利用できます。
それぞれの特徴を見てみましょう。
・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
原則、要介護3以上と認定され、常に介護が必要で在宅では介護が困難な人が入所する施設です。食事、入浴などの生活介護や健康管理などを行います。
・介護老人保健施設
要介護1以上の方が対象です。病状が安定し、リハビリに重点をおいた介護が必要な方が対象で、医学的な管理のもとで介護や看護、リハビリを受けます。
・介護療養型医療施設
要介護1以上の方が対象です。急性期の治療が終わり、長期間にわたり療養が必要な方の施設です。医療や介護、日常生活上の世話を受けられます。ただし、2024(令和6)年3月末で廃止予定です。
・介護医療院
要介護1以上の方が対象です。透析など日常的に医学管理が必要な重度介護が必要な方が、医療、看護や日常生活の世話を受けます。2024(令和6)年3月末で廃止予定の介護療養型医療施設の受け皿です。
施設サービスの費用
施設サービスの費用は、施設サービス費用の自己負担(1~3割)に加え、食費、居住費、日常生活費等がかかります。食費、居住費、日常生活費等は10割負担です。食費、居住費については基準費用額が定められています。ただし、実際の費用は施設と利用者との契約により決まります。
厚生労働省「令和元年介護サービス施設・事業所調査」によると平均利用料(介護サービス費(自己負担)、居住費、食費、日常生活費などの月額)は、要介護度によって異なりますが、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)で8万1222円、介護老人保健施設で8万8859円、 介護療養型医療施設で9万4950円、介護医療院で9万7969円となっています。
表1
施設サービスの食費、居住費の負担軽減
4つの介護保険施設では有料老人ホームなどと異なり、食費、居住費の負担軽減の仕組みがあります。
介護保険施設入所者、ショートステイを利用する方で、世帯全員および別世帯の配偶者(事実婚も対象)が、住民税非課税かつ預貯金などの資産等が一定額以下の方には、負担限度額が設定されています。標準的な費用の額(基準費用額)と負担限度額の差額を、介護保険から特定入所者介護サービス費として給付されます(補足給付)。
なお、補足給付を受けるには、申請して「負担限度額認定証」の交付を受ける必要があります。
施設サービス費と医療費控除
4つの介護保険施設での「介護費、食費、居住費」が医療費控除の対象となることは意外と知られていません。これらの施設から提供を受ける施設サービスの対価のうち、看護そして医学的管理の下において、療養の上で行う世話等に相当している部分の入所者が負担する金額は、医療費控除の対象となります。
具体的には、特別養護老人ホームでは、施設サービスの対価(介護費や食費、および居住費)にかかる自己負担額として支払った金額の2分の1に相当する金額、介護老人保健施設と介護療養型医療施設・介護医療院では、施設サービスの対価(介護費や食費、および居住費)にかかる自己負担額として支払った金額が医療費控除の対象です。
その他、医師が発行する「おむつ使用証明書」があればおむつ代や通所リハビリテーションなどに通う交通費も医療費控除の対象です。なお、医療費控除の金額は基本的に事業者や施設が発行する領収書でわかります。確定申告に必要ですので保管しておきましょう。
出典
厚生労働省 介護保険制度の概要
厚生労働省 令和元年介護サービス施設・事業所調査の概況
国税庁 No.1125 医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー