成年後見制度ってどんな制度? 誰がなるの?
配信日: 2022.11.09
執筆者:田久保誠(たくぼ まこと)
田久保誠行政書士事務所代表
CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、特定行政書士、認定経営革新等支援機関、宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員
行政書士生活相談センター等の相談員として、相続などの相談業務や会社設立、許認可・補助金申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。
目次
任意後見制度とは
任意後見制度とは、あらかじめ契約を締結し選任しておいた任意後見人に、将来認知症や精神障害などで判断能力が不十分になった場合に支援を受ける制度です。
任意後見契約はどのように契約すればいいの?
任意後見の契約は、「任意後見契約に関する法律」によって公正証書で行わなければならないと決まっていますので、公証役場に出向いて作成しなければなりません。なぜなら、任意後見は本人の意思だけでなく、意思能力を確認する必要があるので、公証人が直接本人に面接する必要があるからです。
ただし、本人が公証役場に出向けない場合は、公証人が自宅や病院等に出張することも可能です。
契約の内容は?
そもそもの趣旨は、将来的に判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめご自身が選任した任意後見人に自身の生活や療養看護、財産管理に関する事務について代理権を与える契約、つまり任意後見契約を公証人の作成する公正証書によって結ぶものです。
ただし任意契約ですので、誰を選ぶのか、どのような代理権を与えるのか、といった契約内容は、ご自身と任意後見人との間で自由に決めることができます。
任意後見人にはどのような人がなれるの?
任意後見人は、親族でも知人でもなることは原則可能です。また、弁護士や司法書士、社会福祉士等の専門家や社会福祉協議会等の法人を選任することもできます。このような専門家である後見人は「専門家後見人」と呼ばれます。
また、以下の任意後見人の5つ欠格事項に該当する場合は、任意後見人になることができません。
1.未成年者
2.家庭裁判所で解任などをされた法定代理人、保佐人、補助人
3.破産者
4.本人に対して訴訟をしている人、その配偶者、その直系血族
5.不正な行為、著しい不行跡、その他任意後見の任務に適さない事由がある者
任意後見人の職務範囲は?
前述のとおり、契約内容は自由ですので、任意後見人の職務範囲は両者のコンセンサスがあればよいです。よって、下記では一般的な職務の例を見ていきます。
●財産の保存・管理
●金融機関との預貯金の取引・保険契約に関すること
●定期的な収入の受領、支出・費用の支払い
●借地・借家契約に関すること
●遺産分割等の相続人関すること
●行政機関発行の請求書の請求および受領
●要介護認定の申請、認定に関する承認・審査請求に関すること
●老人ホームや福祉関係施設への入所に関する契約、医療契約、入院契約に関すること
また、これらの代理権(契約)を制限することも可能です。例えば、上記の例2番目の金融機関との預貯金の取引で複数の金融機関に口座があった場合、「○○銀行の口座のみ」と限定するなどです。
さらに、複数の任意後見人と契約し、Aさんには「生活・療養に関すること」、Bさんには「財産管理に関すること」と分けることも可能です。その際は、抜け漏れや重複する可能性がありますので(例:生活資金としての預貯金の引き下ろしと、財産管理としての預貯金の引き下ろし、など)注意が必要です。
いつから契約が有効になるの?(後見の仕事を始めるの?)
この契約は、本人の判断能力が低下し、財産管理等を行うことができなくなってからです。具体的には、家庭裁判所が任意後見人を監督する任意後見監督人を選任したときからこの契約の効力が発生し、実際の業務を始めます。
任意後見を考えているのであればお早めに
文中にもあるように、この契約を結ぶにはご本人の判断能力が必要となります。「まだ大丈夫!」ではなく、任意後見を考えているのであれば、早く動き出すことをお勧めします。
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表