更新日: 2022.11.17 定年・退職
中小企業退職金共済制度。事業主と従業員のそれぞれのメリットとは?
今回は、この制度のメリットを、事業主と従業員それぞれの立場からお伝えしていきます。
執筆者:杉浦詔子(すぎうらのりこ)
ファイナンシャルプランナー/産業カウンセラー/キャリアコンサルタント
「働く人たちを応援するファイナンシャルプランナー/カウンセラー」として、働くことを考えている方からリタイアされた方を含めた働く人たちとその家族のためのファイナンシャルプランニングやカウンセリングを行っております。
2005年にCFP(R)資格を取得し、家計相談やセミナーなどのFP活動を開始しました。2012年に「みはまライフプランニング」を設立、2013年よりファイナンシャルカウンセラーとして活動しています。
中小企業退職金共済制度とは
中小企業退職金共済(以下「中退共」)制度とは、中小企業のために設けられた退職金制度です。
中小企業や個人企業などの事業主が中退共と共済契約を結び、従業員が被共済者として加入できます。なお、経営者は加入することができません。
掛け金は企業が毎月中退共に納めます。従業員は掛け金を支払うことなく、退職時には中退共から退職金を受け取ることができます。
掛け金は従業員ごとに、月額5000~3万円の16種類から選択します。パートタイマーなど短時間労働者の場合は、特例として2000円、3000円、4000円の掛け金も選ぶことができます。
事業主のメリット
中退共を利用することで、事業主には主に、金銭面と管理面でのメリットがあります。
メリット1:助成が受けられる
新しく中退共に加入、または掛け金月額を増額する事業主は、国からの助成を受けられます。
新しく中退共に加入する事業主は、加入後4ヶ月目から1年間、掛け金月額の半分(従業員ごとに上限5000円まで)の助成を国から受けられます。
掛け金月額を増額した事業主は、増額月から1年間、増額分の3分の1の助成を受けられます(掛け金月額1万8000円以下から増額した場合に限る)。
例えば、掛け金月額1万円として新しく中退共に加入した場合、4ヶ月目から1年間は、掛け金12万円のうち6万円が助成金として戻ってきます。
メリット2:掛け金は全額非課税
納めた掛け金は、法人企業の場合は損金として、個人企業の場合は必要経費として、全額非課税になります。
掛け金は退職金の積み立てを目的としており、いわば貯蓄のようなものですが、同時にその分が損金や必要経費として課税の対象外となるため、結果的に納める税金を減らすことができます。
メリット3:退職金の管理が簡単
掛け金の支払いは口座振替であることに加え、従業員ごとの納付状況や退職金の試算額は中退共で管理されるため、事業主が従業員一人ひとりについて管理する必要がありません。
また、従業員が退職するときも中退共が退職金を計算し、従業員へ直接支払いますので、事業主の手間がかかりません。
従業員のメリット
事業主だけではなく、従業員にもメリットがあります。
メリット1:退職金に付加退職金が加算される
掛け金納付月数が24ヶ月目以降になると、掛け金総額の100%を退職金として受け取れるようになります。
さらに、納付月数が3年7ヶ月以上になると、付加退職金が加算されるようになります。これにより、納付額以上の退職金を受け取ることができます。
メリット2:転職時に退職金の通算が可能
中退共の加入企業から同じく中退共に加入している企業などへ転職し、一定の要件を満たす場合は、退職金の通算が可能です。通算によって加入期間が長くなるため、退職金の運用利息も増やせることになります。
メリット3:福利厚生サービスの利用ができる
中退共に加入している企業の従業員は、中退共が提携しているレジャー施設や宿泊施設の割引などの福利厚生サービスが利用できます。
中退共のまとめ
中退共は事業主、および従業員それぞれにメリットがあります。
ただし、個人事業主や法人の役員などは被共済者として加入できないこと、掛け金の増額は簡単ですが減額には従業員の同意が必要なこと、従業員は12ヶ月未満の短期間で退職すると退職金が支給されないこと、12ヶ月以上24ヶ月未満で退職すると退職金の支給額が納付した掛け金の総額を下回ってしまうこと、などの注意点もあります。
中退共への加入を検討している事業主の方は、メリットと注意点をよく理解し、判断するようにしましょう。
出典
厚生労働省 中小企業退職金共済制度
執筆者:杉浦詔子
ファイナンシャルプランナー/産業カウンセラー/キャリアコンサルタント