更新日: 2022.11.22 定年・退職
定年後、再雇用になっても給与は下がる! 下がった給与をカバーする制度とは?
再雇用によって給与はどのくらい下がるのでしょうか? また、再雇用や再就職で下がった収入をカバーするための制度はあるのでしょうか?
執筆者:小山英斗(こやま ひでと)
CFP(日本FP協会認定会員)
1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ
人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。
「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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定年が70歳になる?
高年齢者雇用安定法により、定年を65歳未満と定めている企業には、以下のいずれかの雇用確保措置を講ずることが義務付けられています。
・65歳までの定年引き上げ
・定年制の廃止
・65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
また、現在は経過措置の期間中ですが、2025年3月31日までにはすべての事業主が段階的に定年を引き上げる必要があります。
さらに2021年4月に施行された同法の改正で、65歳から70歳までの就業機会を確保するための高年齢者就業確保措置として、70歳までの定年の引き上げや継続雇用制度の導入などの措置を講ずることが努力義務とされています。
これまでの法改正の流れから、将来的には定年を70歳とすることが義務化されることも考えられるでしょう。
定年後の再雇用で給与はどのくらい下がる?
高年齢者雇用安定法における雇用確保措置のうち、65歳までの継続雇用制度により、60歳で定年を迎えた人が再雇用されるケースも多いかと思いますが、国の統計などから再雇用後の給与について確認していきます。
国税庁の「令和3年分 民間給与実態統計調査」によれば、年齢階層別の平均給与は以下のようになっています。
出典:国税庁 「令和3年分 民間給与実態統計調査 -調査結果報告-」
この調査結果からは、55歳~59歳と比較して、定年世代となる60歳~64歳では男女ともに平均給与が減少していることが分かります。その減少率は男性が約22%、女性が約17%となっています。
また、日経BPコンサルティングが2021年に実施した「定年後の就労に関する調査」では、年収について「定年前の6割程度」という回答が20.2%と最も多く、続いて「5割程度」が19.6%、「4割程度」が13.6%と、定年前の給与と比較して、実に4割から6割も給与が下がっている人が過半数を占めています。
ただし、上記の調査では定年前に比べ、4割程度の人が勤務時間・日数が減少し、5割程度の人が業務量についても少なくなっているようです。そのため、給与が4割から6割に下がっている理由には、業務量などの減少に比例している分もあることが考えられます。
給与の減少を補う高年齢雇用継続給付とは?
定年後、再雇用や再就職での賃金の減少を補う制度として「高年齢雇用継続給付」があります。
この制度では、60歳時点に比べて賃金が75%未満に低下した60歳以上65歳未満の人を対象として、一定の要件に該当する場合に給付金が支給されます。
高年齢雇用継続給付の種類には、定年後の働き方によって以下の2種類があります。
同じ会社で継続雇用された場合の高年齢雇用継続基本給付金
雇用保険より基本手当(失業手当)を受給せず、60歳以降で同じ会社に継続雇用された人が以下の要件に該当する場合、高年齢雇用継続基本給付金を受け取れます。
・雇用保険の被保険者であった期間(注)が通算して5年以上ある
・60歳到達後に継続して雇用されている
・60歳以降の各月に支払われる賃金が、原則60歳到達時点の賃金月額の75%未満
(注)基本手当を受給したことがある場合、受給後の期間に限る。
別の会社で再就職した場合の高年齢再就職給付金
高年齢再就職給付金は、雇用保険の基本手当を受給後、60歳以降で別の会社に再就職した場合で一定の要件に該当する人が受け取れる給付金です。
再就職先で支払われる賃金が、基本手当の基準となった賃金日額を30倍した額の75%未満で、以下の要件を満たす場合に支給されます。
・基本手当についての算定基礎期間が5年以上ある
・再就職した日の前日における基本手当の支給残日数が100日以上ある
・安定した職業に就くことにより、雇用保険の被保険者になった
高年齢雇用継続給付の支給額
給付金の支給額は、以下の計算式で求められる賃金の「低下率」を基に決まります。
低下率(%)=支給対象月に支払われた賃金額÷「賃金月額」×100
ここでの賃金月額とは、原則として60歳に到達する前6ヶ月間の平均賃金のことです。賃金の低下率が61%以下である場合は、支給対象月に支払われた賃金の15%(支給率)が給付金の額となります。
また、低下率が61%を超えて75%未満までは、以下の早見表のように給付金の支給率が変わります。
出典:厚生労働省 「高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について」
まとめ
高年齢雇用継続給付の申請手続きは、原則として事業主が行ってくれますが、自身での手続きを希望する場合はハローワークで行うことも可能です。
なお、再就職の場合は「再就職手当」を雇用保険から受給できる場合がありますが、高年齢再就職給付金と同時に受給することはできないため、どちらを選択するかは慎重に検討しましょう。
出典
厚生労働省 高年齢者雇用安定法 改正の概要
国税庁 令和3年分 民間給与実態統計調査 -調査結果報告-
日本経済新聞 給料4~6割減が過半、定年後再雇用の厳しい現実
厚生労働省 高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)