老後の生活が心配な理由1位は「十分な金融資産がないから」。じゃあ、十分な金融資産っていくらぐらい?
配信日: 2022.12.18
それでは老後資金がどれくらいあれば安心できるのか、老後の生活への備えとして十分な金融資産について考えてみます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
老後の生活が心配と感じる理由
金融広報中央委員会が2人以上世帯を対象に行った調査(2021年)では、老後の生活について「非常に心配である」という回答が全体の35.2%、「多少心配である」が41.8%となっていますが、多くの方が老後の生活を心配する具体的な理由にはどんなものがあるのでしょうか。
同調査で「老後の生活を心配している理由」として最も回答が多かったのは、「十分な金融資産がないから」となっています。
出典:知るぽると 「家計の金融行動に関する世論調査2021年」(二人以上世帯調査)
その他には「年金や保険が十分ではないから」「現在の生活にゆとりがなく、老後に備えて準備(貯蓄など)していないから」といった回答がありますが、いずれも金融資産が十分にあれば、ある程度は老後の生活に対する心配が解消されたり、緩和されるような理由となっています。
十分な金融資産とは、どれくらいの金額になるのか
老後資金としては、どれくらいの金額が十分な金融資産と呼べるのかは、想定している老後のライフスタイルによっても大きく異なるでしょう。
そこで、老後に最低限の生活が送れる金額と、ゆとりのある生活を送るための金額に分けて、十分な金融資産がどれくらいになるのか目安となる金額を計算してみます。
老後に最低限必要な生活費を賄える金融資産は?
公益財団法人 生命保険文化センターの調査(令和元年度)によれば、夫婦2人が老後生活を送る上で必要と考える最低日常生活費の平均は、月額22万1000円となっています。
仮に65歳から90歳まで月額22万100万円の生活費で生活した場合、25年間での総額は6630万円となります。
同じく65歳から90歳まで国民年金を受け取る場合、令和4年度の満額(月額6万4816円)を基にすると、夫婦2人分を合わせた25年間での受給額は約3389万円です。
また、会社員として平均的な収入(賞与含む月額換算で43万9000円)で40年間就業した夫と専業主婦の妻の世帯の場合は、厚生年金(月額21万9593円)と国民年金(夫婦2人分の満額)を合わせて25年間で受け取れる老齢年金は約6588万円です。
年金収入と合わせて最低限の生活費(月額22万1000円)を確保できる金額を十分な金融資産の額とすると、国民年金しか受け取れない場合でも、原則の年金受給開始年齢となる65歳時点で3250万円程度の老後資金があれば、夫婦2人では十分といえるでしょう。
ゆとりある老後生活を送るために必要な金融資産は?
同じく生命保険文化センターの調査では、夫婦2人でゆとりある老後生活を送るためには、平均で月額36万1000円程度の生活費(最低日常生活費に14万円の上乗せ)が必要という結果になっています。
先ほどのように、65歳からの25年間を毎月36万1000円で生活すると考えた場合、老後に必要な生活費は総額で1億830万円となります。
ここから年金相当額を差し引くと、夫婦2人とも国民年金のみの受給世帯では7441万円程度、前述した平均的な収入の場合の厚生年金と国民年金を合わせて受け取れる夫婦2人世帯では4250万円程度の老後資金を準備できていれば、ゆとりある老後生活のための十分な金融資産があるといっても差し支えないでしょう。
老後に安心できる金融資産の額は老後の生活をイメージして考えるべき
老後の生活が心配という方では多くの場合、十分な金融資産を保有していないことが原因としてあるようです。
ただし、どれくらいの金融資産があれば老後に安心できるのかは、将来受け取れる年金額や老後のライフスタイルによって異なります。
老後の生活に対して必要以上に不安を抱くことがないよう、自身にとってどれくらいの金融資産があれば安心できるのか、一度計算してみてください。意外にも過剰な心配となっているとケースもあるはずです。
出典
知るぽると 「家計の金融行動に関する世論調査2021年」(二人以上世帯調査)
公益財団法人 生命保険文化センター 老後の生活費はいくらくらい必要と考える?
日本年金機構 令和4年4月分からの年金額等について
執筆者:柘植輝
行政書士