更新日: 2022.12.22 介護

年老いた親とどう向き合って介護に取り組むか

執筆者 : 柴沼直美

年老いた親とどう向き合って介護に取り組むか
厚生労働省によると、令和3年の男性の平均寿命(0歳の平均余命のこと。以下同じ)は 81.47年、女の平均寿命は87.57年となり、前年と比較して男は 0.09年、女は0.14 年下回りました(※1)。
 
これは新型コロナウイルスの罹患(りかん)によるところが主因とされていますが、それでも世界有数の長寿国であることには変わりません。この事実と併せて考えなければならないのが介護です。介護について考えてみたいと思います。
柴沼直美

執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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自分の親とは1日でも長く一緒に時間を過ごしたい

親の介護は、介護者である子ども世代の本音と、お金事情が複雑に絡み合います。費用の心配がなければ、自分を育ててくれた親とは少しでも長生きしてほしいと思う方も多いでしょう。
 
しかし、親も加齢とともに誰かに面倒を見てもらわなければならなくなりますし、子ども世代も自分の子どもの教育費や住居費(ローンや家賃の支払い)など、日々の家計のやりくりで時間にも金銭的にも余裕がなくなってくるという現実に直面します。
 
さらに、認知症の進行などといった状況が折り重なると、意思疎通がままならなくなり、肉親であるがゆえになおさら「こんな親ではなかったはずなのに」という思いが募って、厳しい状況が加速してしまいがちです。
 

親が元気なうちに、最期について話し合う勇気を

状況が悪化してからではうまくいくものも進まなくなり、悪循環に陥ってしまうこともあります。親が元気なうちに「最期」について話をするのはお互いに抵抗がありますが、必ずやってくる避けられない現実ですから、割り切って受け止める勇気を持たなければなりません。
 
親の介護は、実は双方ともにぼんやりと心配していることですから、どちらかが口火を切れば、話が進むこともあります。
 

どういう場合にどんな行政の力を借りられるのか確認

次に、どのような状況になったら、どのようなサービスを行政に申請することができるのかを余裕があるうちに確認しておきます。
 
介護サービスは内容や利用料など日々変わっていくので、マメにチェックする必要があります。直近では、令和3年8月から介護保険施設における食費・居住費と高額介護サービス費の負担限度額が変更になる(※2)など、支援の額や負担額については毎年のように変更があります。
 
しかし、介護保険そのものの仕組みは簡単には変わりませんので、先延ばしにせず、近隣の役所で聞いてしっかり理解しておきましょう。
 

自己負担はどこまでできるのか、どういった介護が希望か双方で確認

介護保険サービスでは提供してもらえないけれど、自己負担でここまではやりたい、やってほしい、という内容についても話し合っておくと安心です。
 
例えば食事をとることができなくなったときに、胃ろう(おなかに小さな穴をあけて直接胃に栄養を送り込む)という方法をとりますが、いざ飲み込む力が弱くなったからといって「胃ろう」に切り替えても、本人としては「胃ろう」は望んでいないのかもしれません。
 
しかし同時に、意思疎通も困難になっていると、本人の思いではなく措置が進んでいきます。話ができなくなる、意思疎通がままならなくなる中で、医学的に可能なことを進めていくと親の思いとは違う最期に進んでしまうかもしれません。
 
そしていったん始めた措置は、大抵の場合、途中でやめる(やらなくてもよい)という状態にはならないということも認識しておくべきです。
 

“今”が話し合いにもっとも適したタイミング

日々のルーティーンに忙殺されて、「時間ができたら」や「今度またゆっくりと」などと言っていても、その時間は決して戻ってきません。結局は「先延ばしにしたい」という本音が、話し合いのタイミングを遠ざけている可能性があるのです。
 
一方で、若い時代のけがや病気は治療を施せば回復することが多いですが、加齢による内臓・肉体・認知機能の衰えは、そのスピードを緩和させることはできても、完全に回復させることが困難なケースが多いです。
 
カラダはすべてがつながっていますから、1ヶ所の衰えが別の箇所に過剰に負担がかかるため、連鎖反応的に広がっていきます。“今”この瞬間が、これからの人生でもっとも若い、これから先はもっと冷静な話し合いができなくなる可能性が高まることを認識しておく必要があります。
 

出典

(※1)厚生労働省 令和3年簡易生命表を公表します
(※2)厚生労働省 介護保険施設における負担限度額が変わります(リーフレット)
 
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者