更新日: 2023.01.13 その他老後
「賃貸の方がラク」は本当? 高齢になったときの「家賃負担」に要注意
しかし、その反面、「いつまでも家賃を払い続けなければならない」という心配があります。特に、老後は収入が下がる可能性が高く、家計負担に注意しなければなりません。本記事では、賃貸の場合の家計負担について解説します。
執筆者:中村将士(なかむら まさし)
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。
老後の収入は主に年金
老後の家計について、総務省統計局の「家計調査年報(家計収支編、総世帯)2021年(令和3年)」を参考にします。この資料から、世帯主の就業状態別1世帯当たり1ヶ月間の収入と支出が分かります。このうち、老後の生活の参考になるのは「世帯主が65歳以上の無職世帯」です。
これによると、1ヶ月間の実収入は20万4011円、実支出は21万5351円であり、収支はマイナス1万1340円です。実収入とは、収入のうち、年金(社会保障給付)、給料や事業収入、仕送り金などのことです。実支出とは、支出のうち、食費、水道光熱費、居住費、医療費、税金、社会保険料などのことです。
実収入のうち、年金の額は17万90円です。これは、実収入の約83.4%を占めており、年金が果たす役割がいかに大きいかが分かります。
老後の家計は赤字になる傾向がある
一方、実支出のうち、住居に係る費用は1万4972円です。内訳は、家賃地代が4621円、設備修繕・維持が1万351円です。住宅が賃貸の場合、原則として、設備修繕・維持のための支出はありません。ですから、ここでは家賃地代についてのみ取り上げます。
先述のとおり、家賃地代は4621円です。とはいえ、この金額は現実味を帯びていないように思われます。原因は、おそらく調査対象世帯(2774世帯)のうち、家賃・地代を支払っているのが10.3%(約286世帯)ということでしょう。この額を計算し直して4万4820円(=4621円×2774世帯÷286世帯)とすると、現実味を帯びるのではないでしょうか。
ちなみに、家賃は建物(敷地を含む)の賃借料であり、地代は土地の賃借料です。地代を支払っている場合、建物は自己所有であると考えられます。一般に、家賃は地代よりも高額になります。先の4万4820円という金額は、その点を踏まえる必要があるでしょう。つまり、調査対象世帯の家賃は4万4820円よりもう少し高いのではないか、ということです。本記事では、そのまま4万4820円を採用します。
「世帯主が65歳以上の無職世帯」の住居に係る費用について、家賃(地代)を4万4820円、設備修繕・維持費を0円と仮定します。すると、実支出は24万5199円に変わります(=21万5351円‐1万4972円+4万4820円)。
1ヶ月間の収支を再計算すると、マイナス4万1188円となります(=20万4011円‐24万5199円)。これが仮に30年間続くとすると、累計でマイナス1482万7680円となります。
まとめ
老後の収入の大半を占めるのは、公的年金です。総務省統計局の「家計調査年報(家計収支編、総世帯)2021年(令和3年)」によると、年金(社会保障給付)の額は17万90円です。
老後は、一般に、収入よりも支出の方が多い傾向にあります。それは持ち家でも賃貸でも変わりません。持ち家の場合は、老後の負担が少しでも軽くなるよう、現役のうちにローンをできるだけ返済しておくことが推奨されます。賃貸の場合は、家賃を払い続けるために、できるだけ金融資産を蓄えておくことが推奨されます。
メリットを享受しながら、デメリットについて対策を練っておけば、安心して老後を迎えられるのではないでしょうか。
出典
総務省統計局 「家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)」
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー