75歳で「高額療養費制度」を利用する場合、ひと月の上限額はいくらになる?
配信日: 2023.01.29
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
高額療養費制度とは
高額療養費制度とは、病院など医療機関や薬局で支払った1ヶ月の医療費(窓口負担)が高額となったとき、自己負担の上限額を超えた分について、後日払い戻しを受けられる制度です。
ただし、入院時にかかる食事代や差額ベッド代など、一部の費用は高額療養費制度の対象外となっています。
75歳以上で高額療養費の自己負担上限額は?
高額療養費制度での1ヶ月の自己負担額は、年齢や所得によって上限が異なりますが、例えば後期高齢者医療制度に加入する75歳以上の方の窓口負担に対する上限額はいくらになるのでしょうか。
この場合の上限額は、所得によって以下の6段階となっています。一番低い「低所得者1」の区分(世帯全員が住民税非課税であり、年金収入のみで80万円以下または老齢福祉年金受給者)は、個人の外来で8000円、外来+入院(世帯ごとで計算)では1万5000円が上限です。
図表1
出典:立川市 「後期高齢者医療制度の高額療養費(75歳以上もしくは認定を受けた65歳以上の方)」
つまり、低所得者Iに該当する場合は、毎月8000円または1万5000円の自己負担上限額を超えた部分が、高額療養費制度によって払い戻されるということです。
一方、最も自己負担が高くなるのは上記表の「現役並み所得者3」(年収約1160万円以上、標準報酬月額83万円以上/課税所得690万円以上)に該当する方です。1ヶ月の自己負担の上限額は「25万2600円+(総医療費-84万2000円)×1%」となり、それを超えた部分について払い戻しを受けられます。
このように、高額療養費制度の適用を受ける場合の自己負担の上限額は、一概にいくらといえるものではなく、所得によって変わります。
高額療養費制度を利用するには申請が必要
高額療養費制度を利用するには、原則として申請が必要です。
後期高齢者の方の場合、窓口負担が上限額を超えて高額療養費制度の対象となると、その月の3ヶ月~4ヶ月後に後期高齢者医療広域連合から支給申請書が送られてきます。所定の添付書類とともに返送することで申請が完了し、超過分が指定の口座に振り込まれます。
なお、2回目以降は申請が不要となり、対象に該当したときは自動振り込みとなります。
高額療養費は最大2年前までさかのぼって申請ができますが、期間を過ぎると時効によって消滅してしまうため、申請書が届いたらすぐに手続きをしましょう。
限度額適用・標準負担額減額認定証について
高額療養費制度とともに知っておきたいものに、限度額適用・標準負担額減額認定証があります。
入院など療養の前に、加入している医療保険から交付を受けた限度額適用・標準負担額減額認定証などを提示することで、医療機関の窓口での支払額を自己限度額までに抑えることができます。
また、一般病床に入院した際の食事代の自己負担は、下記の標準負担額までとなります。
図表2
出典:立川市 「後期高齢者医療制度の高額療養費(75歳以上もしくは認定を受けた65歳以上の方)」
療養病床へ入院した際の食事代と居住費の自己負担額は、下記の標準負担額までです。ただし、指定難病患者の方の食事代については上記の図表2と同じで、居住費は0円です。
図表3
出典:立川市 「後期高齢者医療制度の高額療養費(75歳以上もしくは認定を受けた65歳以上の方)」
限度額適用・標準負担額減額認定証の交付については、お住まいの自治体の担当窓口などにお問い合わせください。
高額療養費制度によって医療費の負担が軽減されます
75歳以上で後期高齢者となり、医療費がかさむことがあっても、高額療養費制度を利用することで負担が軽減されますが、上限額は本人や世帯の所得によっても違いがあります。
高額療養費制度では、いったん窓口で支払いを行い、上限額に対する超過分の受け取りは後日となるほか、1回目は申請が必要といった注意点もあります。高額療養費制度について気になることがあれば、後期高齢者医療広域連合やお住まいの市区町村の後期高齢者医療の窓口に相談し、必要な手続きなどについて確認するようにしてください。
出典
立川市 後期高齢者医療制度の高額療養費(75歳以上もしくは認定を受けた65歳以上の方)
執筆者:柘植輝
行政書士