更新日: 2023.03.04 介護

介護についての認識は家計運営で非常に重要である! 令和の時代を見越した「家計八策」-その6-

介護についての認識は家計運営で非常に重要である! 令和の時代を見越した「家計八策」-その6-
前回は、令和時代の家計について考える際の8つのポイントとして、筆者のFP事務所で掲げている以下の「家計八策」のうち、「五、お金のことを学ぶ」の内容をお伝えしました。今回は「六、老後は介護を想定する」について考えていきたいと思います。


一、家族で協力する
二、家計を管理する
三、資産形成は末代まで行う
四、保険は最低限にする
五、お金のことを学ぶ
六、老後は介護を想定する
七、教育資金は資産を分ける
八、住宅ローンは無理しない



重定賢治

執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)

明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。

子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。

2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai

介護は家計と深く関わる問題

「老後は介護を想定する」と聞いても、家計には関係がないように思うかもしれませんが、介護は家計や老後のお金と密接に関わります。
 
例えば、老後に介護が必要になった場合に医療費や介護費用はどれぐらいかかるのだろう、住んでいる家をバリアフリー化するためにいくらぐらいお金がかかるのだろう、子どもに迷惑をかけたくないが介助してくれる場合に備えてお金を残す必要もある……など、介護は家計とは切り離せない経済的な問題といえます。
 
介護が必要になる期間は、その状況になってみないと分かりませんが、仮に80歳から要介護状態となり、90歳で他界すると考えた場合、介護を前提にした生活が10年間続くことになります。
 
退職の年齢が65歳、そこから74歳までをアクティブシニア期、75歳以降を終活期とするならば、終活期の最後の10年が要介護期間になるわけですから、この10年間は身体が思うように動かなくなるであろう老後のライフステージの最終局面として想定する必要があるかもしれません。これが「六、老後は介護を想定する」の意味です。
 

老後の生活や介護はイメージしにくくなっている?

実際に介護を経験しなければ、なかなか実感がわかないというのが実情かと思いますが、だからこそ現代社会では介護が昔と比べて遠い存在になっているように思います。よく指摘されることですが、核家族が当たり前になったことで高齢期の生活が身近に感じられなくなったという問題です。
 
例えば、祖父母世帯と親世帯が同居していれば、もしくは祖父母が近くに住んでいれば、おのずと子どもと祖父母が触れ合う機会が増え、老後とはこういうものかという実体験が生まれます。
 
しかし、祖父母との暮らしなどで触れ合う機会が減ってしまうと、高齢期の生活がどのようなものになるのかイメージすることが難しくなります。そして、イメージすることができないので、知識や情報、つまり介護保険制度における介護サービスや、民間の介護保険への加入といった金銭的な事柄に関心を寄せてしまいます。
 
このようなことは必ずしも間違いではありませんが、冷静に考えると「老い」の過程を間近でみることができるからこそ、介護に対してどのように準備をすればいいのか分かるわけで、お金が介護の問題をすべて解決してくれるわけではないことぐらいは認識できます。
 
それにもかかわらず、お金を貯めれば老後の暮らしは安心、民間の介護保険に入っていれば万一の備えとして安心など、根拠が少ない理由で安心をお金で買う傾向や考え方が顕著なことが、現代社会の特徴のひとつになっている可能性があります。
 

介護は人手不足の問題でもある

「老後は介護を想定する」とは、介護について身近に感じたほうがいいという意味でもあります。
 
日本は団塊ジュニア世代が後期高齢者になる頃に、本当の意味での超高齢化社会に突入していくことが指摘されています。
 
国が示す介護保険制度の方向性は、どちらかというと施設介護よりも在宅介護を軸に制度変更がなされ、今後はおそらく、できることは自分たちで行いながら、足りない部分や負担が大きい部分を地域や自治体、国の支援を受けながら介護と向き合っていくことが当たり前になっていくでしょう。
 
仮に、このような方向性で介護保険制度が進んでいく場合、想定すべきことは介護人材の不足です。介護人材の不足とは、核家族社会が当たり前になったことで、家族で介護を行うのが難しくなるという家庭内における人手不足と、慢性的に人手が足りない介護業界の人材不足という2つの大きな問題です。
 
介護を必要とする人が増えていくにもかかわらず、介護を担える人が足りなくなる可能性が高いため、必然的に社会が有する介護能力が低下しやすくなることが考えられます。このような状況に早めに対応するために、介護がどのようなものなのか体験しておくことが今後ますます求められていくことでしょう。
 
例えば、祖父母が遠いところに住んでいる家庭の場合、できるだけ子どもが遊びに行く機会を設ける、近所で暮らすお年寄りとコミュニケーションを取る、住んでいる自治体の地域包括支援センターが行っている介護体験イベントなどに参加してみるなど、高齢者の生活や介護を身近に感じる場は探せば意外とあるものです。
 
そして、老後や介護に対する備えについて考える初めの一歩として、自分の場合はどうなのか、家族の場合はどうなのかとイメージを広げていけばいいと思います。イメージを広げる過程で、具体的にどのように経済的に備えるかというプランがみえてきます。
 

まとめ

前述したとおり、介護に対してはお金ありきではなく、まず人手不足にどのように対応するかを第一に考え、その結果、自分や家族はどう経済的に備えるかといった2段階で考えることが必要です。
 
「老後は介護を想定する」とは、お金では解決することが難しい問題、つまり老後の生活や介護について身近に感じること、そして備えることを意味します。お金で解決できないことを認識できる力こそが、真の意味での家計力につながるのではないでしょうか。
 
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)

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