更新日: 2023.04.18 セカンドライフ

定年後も働く! 受け取れる年金、受け取れない年金

定年後も働く! 受け取れる年金、受け取れない年金
「総務省統計局 2.高齢者の就業」によると、2021年の高齢者の就業者数は909万人で、18年連続で増加しています。2021年には65~69歳の就業率は10年連続で上昇して50%を超えました。この年齢層は、2人に1人が就業している状態です。
 
年金は、原則として65歳から受給できますが、働いて給与収入がある場合でも年金を受け取ることができます。しかし、場合によっては年金がカットされてしまうことがあります。
林智慮

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

在職老齢年金

老齢厚生年金の受給者が、厚生年金保険の被保険者である場合、70歳以上で厚生年金適用事業所である企業にお勤めの場合、総報酬月額相当額と老齢厚生年金の基本月額の合計が47万円を超えると、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止されます。これを、「在職老齢年金」といいます。
 
ここで、基本月額は老齢厚生年金の報酬比例部分をいいます。また、総報酬月額相当額は、1ヶ月当たりの賞与を含む報酬額のことで、以下の式で計算されます。
 
その月の標準報酬月額+その月以前の1年間の標準賞与額÷12 
 
総報酬月額相当額と老齢厚生年金の基本月額の合計が47万円を超えると、超えた分の半分が停止されます。以下の式により計算されます。
 
(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2 
 
47万円を超える期間が、支給停止期間とされます。また、総報酬月額相当額が変わる(給与・賞与の金額が変わる、退職する)場合は、支給停止額が変更されます。
※ただし、令和5年度の在職老齢年金の支給停止調整額は48万円です。
 
※出典:日本年金機構 在職中の年金(在職老齢年金制度)
 

受け取れる年金・受け取れない年金

それでは、具体的に見てみましょう。
 
AさんとBさんは、ともに年金受給額が21万5000円(老齢厚生年金15万円+老齢基礎年金6万5000円)です。総報酬月額相当額については、Aさんは22万5000円(給与20万円/月、賞与30万円/年)、Bさんは35万円(給与30万円/月、賞与60万円/年)を受け取るケースです。
 
Aさんの老齢厚生年金と総報酬月額相当額は、15万円+22万5000円=37万5000円≦47万円となり、年金は停止されません。
 
一方、Bさんの場合、老齢厚生年金と総報酬月額相当額は、15万円+35万円=50万円>47万円。よって、47万円を超えた分は50万円-47万円=3万円となり、その2分の1の1万5000円が支給停止になります。よって、Bさんの受け取れる老齢厚生年金は13万5000円になってしまいます。
 
停止されるのなら、年金を受け取らず繰下げすればよいのではと思われるでしょう。しかし、支給停止になる分は繰下げの対象にはなりません。
 
例えば、2人ともこの給与で70歳まで働くとします。70歳から年金を受け取るよう繰下げする場合、65歳時点の年金より0.7%×12ヶ月×5年間=0.42%増加します。Aさんは21万5000円×1.42=30万5300円に増えますが、Bさんは1万5000円分が繰下げの対象にならないため、(21万5000円-1万5000円)×1.42+1万5000円=29万9000円となってしまいます。
 

それでも厚生年金保険に加入して働くメリット

老齢厚生年金が調整を受けるのは、厚生年金保険に加入しつつ老齢厚生年金を受け取る場合です(老齢基礎年金は調整の対象外)。給与収入により年金が減額またはもらえないことが起こるのなら、65歳以上は厚生年金の適用事業所以外で働けば調整されなくてお得なのでしょうか。
 
65歳以降も年金をもらいながら厚生年金保険に加入すれば、年金を増やすことができます。
 
65歳以上で年金を受け取りながら厚生年金保険に加入する(在職老齢年金を受けている)場合、9月1日(基準日)に厚生年金保険の被保険者であれば、翌月の10月分から年金受給額が見直されます。これを「在職定時改定」といい、前年9月から当年8月までの保険料支払い分が、翌月に年金に反映されます。
 
ただし、在職老齢年金の調整を受けない場合でも、在職定時改定により年金額が増えて、調整を受けることになる場合もあります。また、在職老齢年金により年金が支給停止となる場合には、在職定時改定による増加分も停止となってしまいます。
 
しかし、65歳以上70歳未満の間に厚生年金保険に加入した分は、支給停止により在職定時改定に反映されない場合でも、退職改定(70歳到達または退職した翌月からの年金受給額の改定)に反映されます。
 
これらは厚生年金保険に加入するからこそ得られるメリットです。また、健康保険に加入できるメリットも忘れてはなりません。さまざまな観点から見て判断しましょう。
 

出典

総務省統計局 2. 高齢者の就業
日本年金機構 在職中の年金(在職老齢年金制度)
日本年金機構 働きながら年金を受給する方へ
日本年金機構 年金の繰下げ受給
 
※2023/4/18 記事を一部修正いたしました。
 
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者

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