更新日: 2023.04.16 セカンドライフ

60歳になって給与が「3割以上減」に…その分「高年齢雇用継続給付」をもらえるって聞きましたがどういう制度ですか?

60歳になって給与が「3割以上減」に…その分「高年齢雇用継続給付」をもらえるって聞きましたがどういう制度ですか?
高年齢者雇用安定法が改正され、65歳までの雇用確保が義務化されました。65歳で定年を迎える企業や、60歳でいったん定年を迎えた後に60歳から65歳までの期間は再雇用する企業など、雇用確保の仕方は企業ごとに異なります。
 
しかし60歳で定年を迎えた後の再雇用では、現役時代に比べて給与が大幅に下がったという人も多いでしょう。そんな人には、60歳以降の賃金が、再雇用や再就職によって60歳時点の75%未満の場合、高年齢雇用継続給付という給付金が受けられる制度があります。
 
本記事では、60歳になって現役時代と比べて給与が75%未満になった人が受けられる高年齢雇用継続給付について解説します。
古田靖昭

執筆者:古田靖昭(ふるた やすあき)

二級ファイナンシャルプランニング技能士

高年齢雇用継続給付とは

高年齢雇用継続給付は、雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の人を対象に、60歳以降の賃金が60歳時点の75%未満に低下した場合、「高年齢雇用継続基本給付金」または「高年齢再就職給付金」のどちらかを受け取れます。
 
例えば、60歳になるまで月額30万円もらっていた場合、60歳以降に支払われた賃金が22万5000円未満などの場合はこれらの給付金の対象になるのです。
 

高年齢雇用継続給付の受給要件

高年齢雇用継続給付で受け取れる2つの給付金には、受給要件が5つあります。

●支給対象月の初日から末日まで雇用保険の被保険者である
●支給対象月中に支払われた賃金が、60歳になる前までの賃金月額の75%未満に低下している
●支給対象月中に支払われた賃金額が、支給限度額未満である
●申請後、算出された基本給付金額が、最低限度額を超えている
●支給対象月の全期間にわたって、育児休業給付または介護休業給付の支給対象外である

なお、2022年8月1日以後の高年齢雇用継続給付の支給限度額は36万4595円、最低限度額が2125円となり、毎年8月1日に改定されます。
 

高年齢雇用継続基本給付金の受給期間

高年齢雇用継続基本給付金は、失業保険による基本手当や再就職手当を受け取っていない従業員が対象です。
 
受給期間は、被保険者が60歳になった月から65歳になる月までとなります。もし60歳になった月に受給資格を満たしていない場合は、満たした月から65歳になる月までです。また60歳になった月に雇用保険の被保険者でなければ、新たに被保険者資格を取得した月、または受給資格を満たした月から65歳までになります。
 

高年齢再就職給付金の受給期間と要件

高年齢再就職給付金は、失業保険の基本手当を受給しており、再就職した人を対象としています。
 
受給期間は、高年齢雇用継続基本給付金の内容に加えて、再就職した日の前日までの失業保険の基本手当の支給残日数が「100日以上200日未満」の場合は最長1年間受給でき、「200日以上」であれば最長2年間受給できます。
 
なお1年を超えて雇用されることが確実である必要があるため、再就職先の会社に継続雇用できるかを確認しておく必要があるでしょう。
 

年金を受給する場合は注意

特別支給の老齢厚生年金や、年金の繰上げ受給をする場合は、高年齢雇用継続給付を受け取ることで、老齢年金の一部が支給停止になる可能性があります。
 
特別支給の老齢厚生年金は、1961年4月1日生まれ以前の男性や、1966年4月1日生まれ以前の女性で、老齢基礎年金の受給資格期間が10年あり、厚生年金などに1年以上加入していることで受給することが可能です。
 
また年金の繰上げ受給は、原則65歳から受け取れる公的年金を、手続きすることで60歳から65歳になるまでの間に繰り上げて受給することができるものです。ただし繰上げ受給すると年金額が減額され、その減額率を変えることはできません。
 
働きながら年金を受給することはできるものの、在職老齢年金制度という制度があり、老齢厚生年金の「基本月額」と「総報酬月額相当額」に応じて一部または全額が支給停止となってしまいます。
 
在職老齢年金は、基本月額を総報酬月額相当額と合計した金額が48万円以下であれば全額支給され、その金額を超えると、「基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-48万円)÷2」で計算して出た金額に調整されます。
 
60歳以降に再雇用または再就職する場合、60歳以降の賃金が60歳時点の75%未満に低下していれば、高年齢雇用継続給付を受けられます。しかし特別支給の老齢厚生年金などで年金を受給する場合、在職老齢年金制度によって、老齢年金の一部が支給停止される可能性もあります。
 
制度利用によって給与額や年金額がどのくらい変わるのか、あらかじめシミュレーションして、60歳以降にどのように働いていくか考えておくことが大切です。
 

出典

厚生労働省 パンフレット(簡易版):高年齢者雇用安定法改正の概要
厚生労働省 Q&A~高年齢雇用継続給付~
厚生労働省 令和4年8月1日から支給限度額が変更になります。
 
執筆者:古田靖昭
二級ファイナンシャルプランニング技能士

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