更新日: 2023.04.29 定年・退職
高齢の失業者がもらえる「高年齢求職者給付金」。65歳以上で働いている人ももらえるの?
執筆者:三藤桂子(みふじけいこ)
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士
大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験した後、FPと社会保険労務士の資格を取得し、個人事業主から社会保険労務士法人エニシアFP を設立。
社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、会社の顧問、個別相談などを行う。
また年金・労務を強みに、セミナー講師、執筆・監修など首都圏を中心に活動中(本名は三角桂子)。
高年齢求職者給付金とは
雇用保険の高年齢被保険者とは、65歳以上の被保険者(短期雇用特例被保険者、日雇い労働被保険者を除く)をいい、高年齢被保険者が失業した場合に、高年齢求職者給付金が支給されます。
2017年1月の法改正から65歳以上の労働者でも雇用保険の適用条件を満たせば、「高年齢被保険者」として雇用保険が適用されるようになりました。これにより、6ヶ月以上雇用保険に加入していれば、定年後でも高年齢求職者給付が受けられます。
高年齢求職者給付金を受けるには
高年齢求職者給付⾦を受けるには、離職後に住居地を管轄するハローワークに来所し、求職の申し込みをしたうえで、受給資格の決定を受ける必要があります。
その後、ハローワークから指定された失業の認定日にハローワークに来所し、失業の認定を受けることで、被保険者であった期間に応じた金額が支給されます。受給資格の決定には、次の要件を満たすことが必要です。
(1) 離職していること
(2) 就職する意思があるが、仕事が見つからない状態であること
(3) 離職の日以前1年間(算定対象期間)に雇用保険に加入していた期間が通算して6ヶ月以上あること
雇用保険の加入は、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、31日以上の雇用見込みがあれば、原則として雇用保険の適用の対象です。65歳以上の人でも適用条件に該当すれば、高年齢被保険者となります。
支給金額は一時金
実際に支給金額がどのくらいになるのかは、離職の日以前1年間(算定対象期間)に雇用保険の被保険者期間(算定基礎期間)が1年未満と1年以上の場合とで異なり、支給額は一時金となります。
図表1
厚生労働省「雇用保険の適用拡大等について」より筆者作成
支給額の1日分は基本手当の日額で、離職前6ヶ月の賃金総額を180で割った額のおよそ50~80%と上限額があります。
高年齢求職者給付金を受けるときの注意点
高年齢求職者給付金の支給を受けることができる期間(受給期限)は、離職日の翌日から1年です。求職の申し込み手続きが遅れた場合、全額受け取ることができない可能性があるので、注意が必要です。
高年齢求職者給付金は、退職日の翌日以降、離職票を持ってハローワークに求職の申し込みを行い、求職の申し込みを行った日から失業した状態が7日間(待期期間)必要です。
さらに、自己都合による退職は待期経過後、2ヶ月(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇された場合、または令和2年9月30日までに自己都合で退職した場合は3ヶ月)の給付制限があり、給付制限経過後が認定日となります。
例えば、Aさんは2023年4月30日に自己都合退職したとします。受給期限は1年のため、2023年5月1日~2024年4月30日です。Aさんの支給金額が30日分とすると、全額が支給されるには期限最終日から30日前である、2024年4月1日までにハローワークで失業認定を受けないと全額受け取ることができません。
Aさんは離職後、ハローワークに行くのを忘れ、失業認定日が2024年4月16日になった場合、30日分を受け取ることができずに15日分のみとなります。失業の認定日から受給期限日までの日数が支給日数の30日または50日に満たない場合は、失業認定日から受給期限日までの日数分までしか支給されません。
認定を受けるまでには、求職の申し込みをしてから、待期7日間、自己都合退職であれば待期後、給付制限期間などがあります。離職後、うっかり忘れてしまったために全額受け取れないこともあります。離職後、早めに求職の申し込みをしましょう。
まとめ
2021年4月に改正高年齢者雇用安定法が施行され、 この改正により、雇用する労働者について、65歳までの雇用確保義務に加え、70歳までの就業確保措置をとることが努力義務として追加されました。
人生100年時代、働き続けたいと考えている人が増えるなか、雇用保険に加入することができれば、高年齢求職者給付金は支給回数には制限がなく、要件を満たせば何度でも支給されます。
また、公的年金との併給もできます。定年後の働き方を考えるとき、雇用保険の加入の有無も視野に、考えてみてはいかがでしょうか。
出典
厚生労働省 雇用保険の適用拡大等について
厚生労働省 離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>
厚生労働省 改正高年齢者雇用安定法が令和3年4月から施行されました
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士