更新日: 2019.01.07 介護
忍び寄る親の介護 おひとりさまで親が高齢になってきたら
兄弟姉妹に家庭があれば、おひとりさまが親の介護を担うケースが多くなります。兄弟姉妹がいなければ、頼れるのは自分一人だけという状況に陥りがちです。
おひとりさまは、自身の介護だけでなく親の介護についても備えておくことが大切です。
この記事では、親が高齢になってきたおひとりさまが介護について考えておきたいポイントをお伝えします。
Text:藤嶋英臣(ふじしまひでおみ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
平成29年度 日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」(大阪)相談員
996年大阪大学経済学部卒業。二度の転職ののち、過労による体調不良から40歳で退職。ファミリーに比べておひとりさま(単身者)のライフプランに関する情報が少ないことを不安に思い、FPを志す。FPの上級資格であるCFP(R)の試験を1年あまりで突破し、2015年大阪市に「はやぶさFP事務所」を開設。
自らも単身者であることから、同じ立場で思い悩む方への手助けとなるべく活動中。また、ライターとして各種士業・Webメディア向けに文章コンテンツを多数提供。
1973年生まれ、奈良県出身。
親の介護で気をつけたいこと
親の介護に備えるとき、おひとりさまは次の二つの点に注意が必要です。
・身軽であることを理由に介護を引き受けがち
・頼れる人が少ないため一人で背負いこんでしまいがち
兄弟姉妹がいてもそれぞれ家庭があれば、親の介護にかかりきりになるわけにはいきません。おひとりさまも決して身軽というわけではありませんが、相対的に身軽であると見られて介護をお願いされる可能性は高くなります。
いざ介護を引き受けたとしても、おひとりさまには頼りになる配偶者や子供がいないため、一人で背負いこんでしまうことになりかねません。
高齢の親を一人で献身的に介護する姿はいい話として語られることもありますが、一人で背負いこんで経済的にも精神的にも苦しむことになっては元も子もありません。
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仕事は極力辞めないように
親の介護を担うことになったとき、仕事を辞めて介護に専念しようかと思う人もいるでしょう。しかし、介護離職はおすすめしません。
介護離職をしてしまえば収入が途絶えてしまいます。おひとりさまは配偶者の収入に頼ることができず、自身の貯金や親の年金に頼らざるを得なくなります。
幸い転職できたとしても、収入は転職前に比べて総じて低くなってしまいます。
介護離職のデメリットは経済的なことだけではありません。長期にわたって介護と求職活動が重なると、精神的にも良くない影響を及ぼします。
求職活動をしなくても、ずっと介護にかかりきりになることで精神的、肉体的負担が増えていきます。介護に行き詰まって心身に変調をきたすこともあるほどです。
いつか親の介護が終わっても、あなたの人生は続きます。あなた自身のお金を親の介護で使い果たしてしまわないためにも、また、生活を破たんさせてしまわないためにも、介護だけを理由に仕事を辞めることは極力避けるようにしましょう。
親の介護費用は親の財布から
おひとりさまに限ったことではありませんが、介護の費用を誰が負担するかについて誤解している人は少なくありません。
介護費用は子供が親に出してあげるものと思い込んでいる人が多いようですが、親の介護費用は親の財布から出すことが基本です。
しかし、高齢の親に十分な蓄えがないケースも多いかもしれません。そのような場合は、介護の専門家に相談したうえで、経済的に可能な範囲で受けられる介護サービスを選んでいくとよいでしょう。
医療費や介護費が高額になった場合は、高額療養費制度や高額介護サービス費の支給など負担を軽減する制度が利用できます。
ここまで手を尽くしてもお金が足りない場合に、はじめて子供が援助することになります。ただし、子供自身の生活が破たんしてしまわないように注意することは言うまでもありません。
一人で背負わず専門家に相談を
親に介護が必要になったときは、まず「地域包括支援センター」など地域の介護の専門家に相談して、どうすれば親の介護と自分の生活が両立できるかを考えましょう。
親の介護と自分の生活を両立させるためには、自分で何でもやろうとするのではなく、ケアマネージャーや医師と連携して介護サービスを利用することも考えます。
ただし、介護される親がサービスを受けることに消極的な場合もあるため、親とよく相談することも大切です。
親の介護に備えるためには、親が元気なうちから、親本人だけでなく兄弟姉妹とも介護について話し合う機会を持てるとよいでしょう。地域包括支援センターの場所や連絡先を調べておくこともおすすめします。
Text:藤嶋英臣(ふじしまひでおみ)
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
平成29年度 日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」(大阪)相談員