スキルアップの為転職を決意!7月末で退職しようとしたら「その前日で退職してくれ」と会社からいわれた。何が問題なのでしょうか?

配信日: 2018.07.25 更新日: 2019.01.10

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スキルアップの為転職を決意!7月末で退職しようとしたら「その前日で退職してくれ」と会社からいわれた。何が問題なのでしょうか?
スキルアップのために転職することにしたA子さん。再就職の前に、1カ月ほどのんびり暮らすことにしました。
 
9月1日付けで新しい会社に入社することにしたため、7月末で退職しようと思ったのですが、「その前日で退職してくれ」と会社からいわれました。
 
何が問題なのでしょうか?
 
林智慮

Text:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

退社の翌日に厚生年金・健康保険の資格がなくなる

月末退社だと、なにが起きるのでしょうか。
 
月の途中で退職する場合、退職した日の翌日に厚生年金・健康保険の被保険者である資格がなくなります(資格喪失日)。その、資格がなくなった日の属する「月」の前月分までを納める必要があります。
 
月末退社の場合、翌月1日に厚生年金・健康保険の被保険者でなくなります。よって退職した前月分だけでなく、退職した当月分も保険料を支払うことになります。
 
例えば、7月30日に退職した場合、7月31日が資格喪失日となります。保険料は、前月の6月分まで納付の必要があります。ところが、7月31日に退職した場合、8月1日が資格喪失日となり、7月分の保険料も納付しなければなりません。
会社側にとっても、保険料の負担が同じように発生します。厚生年金・国民年金保険料は、労使折半だからです。
 
だから、「月末に辞めるなら、月末の前日までで辞めて欲しい」というのです。
 

辞めたら、健康保険はどうするの? 退職前の保険証は使えるの?

ところで、9月1日付けで次の会社に入社が決定しているA子さん。今の会社を辞めたら、次の会社までそのまま何も入らずにいて良いのでしょうか? 今の会社の健康保険証は、退職時に回収されるので使うことはできません。
 
退職後も、そのときの状況に応じた何かの医療保険制度・公的年金制度(原則60歳まで)に加入義務があります。年金は国民年金に加入することになりますが、健康保険は、

1.健康保険の任意継続をする(被保険者期間が継続して2カ月以上あること)。
2.国民健康保険に加入する。
3.家族の扶養になる(A子さんは再就職の予定なので選択不可)。
の方法があります。
 
保険料については、会社員のときは保険料の半分を会社が負担していましたが、退職して任意継続の場合、会社負担分がないため自分で全額負担しなければなりません。扶養家族がいる場合は任意継続のメリットがありますが、単身の場合は任意継続より国民健康保険のほうが安くなることがあります。
 
例えば、給与が月20万円、標準報酬月額20万円(ボーナスなし)の場合、任意継続すると全額負担で1万9800円の健康保険料(協会けんぽ 東京都)になります。
 
一方、国民健康保険料は、給与所得控除後の金額が150万円から、約16万円の年間保険料になり、月額約1万3000円になります(※東京都大田区役所参照)。
 

任意継続の保険料は全額自己負担

協会けんぽでは、退職までの被保険者期間が継続して2カ月以上ある場合に、任意継続することができます。退職の翌日から20日以内に、「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出します。加入できるのは、最長で2年です。
 
任意継続したら、「国民健康保険に加入する」「家族の扶養に入る」という理由では資格喪失になりません。以下の資格喪失に該当する場合のみ喪失します。
 
・保険料を納付期限までに納めなかったとき
・任意継続被保険者となったにから2年を経過したとき
・任意継続被保険者が亡くなったとき
・就職等で健康保険・共済組合等の被保険者になったとき(※)
・75歳になって後期高齢者医療制度の被保険者になったとき(※)
(※任意継続被保険者資格喪失申出書の提出が必要です)
任意家続の場合、保険料は退職前の倍になります。会社負担分がなくなるためです。健康保険にある傷病手当金・出産手当金が、任意継続にはありません。
 

国民健康保険に加入の場合の手続き

単身のため任意継続にメリットが感じられず、国民健康保険の加入手続きをしようと考えます。そして同時に、国民年金の手続きもします(会社を退職してから14日以内に手続きを取ります)。
 
提出書類は、「国民健康保険被保険者異動届」「健康保険・年金の資格取得・損失証明書(会社に記入してもらったもの)」「国民年金被保険者関係届出書」を市の国保・年金課に提出します(「健康保険・年金の資格取得・損失証明書」「国民年金被保険者関係届出書」は、国民年金加入の手続きに必要ですから、健康保険の任意継続した場合でも届け出が必要になります)。
 
また、新たな職場に就職する時は、年金については厚生年金に加入することで完結しますが、健康保険への切り替えは、就職した会社の健康保険被保険者証(被扶養者分もすべて)と、国民健康保険被保険者証、そして印鑑を持って、市役所の国保年金課の窓口で手続きします。
 

加入の仕方で違いが

A子さんが、もし7月末で退職ならば、6月分と7月分の社会保険料の負担がありますが、会社に在籍中のため会社が半分負担してくれるのです。8月分は全額自己負担になりますが、9月は新しい会社の社会保険に加入することになります。
 
仮に、8月中に新しい会社に就職した場合、8月1日に国民年金・国民健康保険の手続きは必要ですが、8月中に厚生年金・健康保険に加入のため、国民年金・国民健康保険料は掛かりません。
 
もし、7月を30日で退職ならば、7月分は1日のために1カ月分の国民年金と国民健康保険料を負担しなければなりません。そして8月分も全額負担します。「新しい会社の入社日、変更できないか聞いてみようか」と、A子さんは考えました。
 
制度につきましては、日本年金機構のHP、協会けんぽや組合健保のHP、そして住まいの市町村役場のHPをご覧ください。
 
Text:林 智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
相続診断士 
終活カウンセラー 
確定拠出年金相談ねっと認定FP

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