「月8万円」の年金だけで暮らしていけるのは、定年時点で貯金がいくらある人?
配信日: 2023.06.16
そこで、月8万円の年金だけで生活していくには、定年時点でどれくらいの貯金があればいいのか試算してみます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
高齢者の年間の支出額は平均どれくらい?
総務省の家計調査報告によれば、令和3年度における高齢無職夫婦の世帯の支出は26万8507円となるようです。月8万円・夫婦で月16万円の年金収入では毎月10万8507円も不足します。年換算ではなんと130万2084円も不足することになります。
仮に65歳から年金を受け取り、夫婦ともに90歳まで生きると想定した場合、25年で不足する金額は3255万2100円と、莫大な金額が必要になります。
ここから、夫婦2人が月8万円の年金で生活していこうと思ったら、定年時点で3000万円以上の貯蓄を有している必要があると分かります。
【図表1】
毎月の支出 | 26万8507円 |
毎月の不足額 | 10万8507円 |
年間の不足額 | 130万2084円 |
90歳まで生活する場合の不足額 | 3255万2100円 |
※筆者作成
単身世帯の場合、月の支出は15万5495円となっています。8万円の年金だけで生活しようとすると毎月7万5495円の赤字が生じることになります。年間では90万5940円不足します。こちらも、65歳から年金を受け取り始め、90歳まで生きると仮定すると、定年時点で2264万8500円もの貯金が必要になることが分かります。
【図表2】
毎月の支出 | 15万5495円 |
毎月の不足額 | 7万5495円 |
年間の不足額 | 90万5940円 |
90歳まで生活する場合の不足額 | 2264万8500円 |
※筆者作成
夫婦で生活する場合に比べると少なく感じますが、それでも2300万円近い金額が必要と考えると、莫大な金額であることに変わりはありません。
なお、上記はあくまでも統計上の数値を基にした金額であるため、実際に必要な金額は個人によって異なることにご留意ください。
老後資金をどのように貯めていくべきか
夫婦でおよそ3255万円、単身者でおよそ2264万円もの老後資金を貯めていくのは容易ではありません。
30歳から35年ほどかけて貯めたとしても、将来月8万円の年金で生活していこうと考えると、夫婦で生活していくなら年間で93万円ずつ貯金が必要になります。単身の場合でも年間65万円ずつ貯金していくことが必要になります。30歳からこれだけの金額を毎月コンスタントに貯蓄していくのは容易ではありません。
そこで活用したいのが、つみたてNISAやiDeCoです。こういった運用益が非課税となる制度を利用することで、効率よく老後資産を用意することができます。参考までに30歳から65歳までの35年間、毎月1万7000円(年間20万4000円)をiDeCoに拠出することで最終的な老後資金は1931万円となります(年利5%と想定)。
単身者の場合、貯金した場合に比べて、3分の1ほどの負担で老後資金を確保することができます。
このように、月8万円の年金だけで生活しようと思ったら、貯金だけではなく資産運用も利用して老後資金を確保していくべきでしょう。
年金が月に8万円しかないのであれば老後の就労と年金の繰下げを検討
よほど高収入であったり、親から大きな額の遺産を相続したりするなどでもない限り、老後に月8万円の年金だけで生活をしていくのは難しいでしょう。
現実的なところを考えると、定年後も就労をし、収入を得て老後資金を貯めながら、年金の繰下げ受給も検討すべきでしょう。特に、繰下げ受給は、1ヶ月繰り下げるごとに0.7%受け取る年金額が増加するため有効的です。
参考までに、75歳まで受給を繰り下げると、月8万円の年金が14万7200円となり、単身者の方であれば年金だけで生活していくことも可能になります。
月8万円の年金だけで老後暮らしていくなら、十分な準備が必要
老後月8万円の年金のみで暮らしていこうと思ったら、夫婦であるにせよ単身者であるにせよ、相当な額の老後資金が必要になります。無理に年金収入だけに頼らず、定年後もできるだけ働き、年金の繰下げ受給も検討したいところです。
もし、将来月8万円の年金だけで生活していこうと考えているのであれば、若いうちに老後に備え計画的に準備していく必要があるでしょう。
出典
総務省 家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要
執筆者:柘植輝
行政書士