更新日: 2023.06.16 定年・退職
退職金の平均は「2440万円」! でも退職日が1日違うだけで手取り「10万円」の差になる? 注意点を解説
日本経済団体連合会(経団連)が発表しているデータによれば、60歳(勤続38年)で会社都合退職する人の標準者退職金は2440万円となっています。
退職金をローンの返済や老後の生活資金に充てる計画を立てている場合は、手取りの退職金がどれだけ残るか、事前に検討しておくことも重要です。
執筆者:御手洗康之(みたらい やすゆき)
CFP、行政書士
退職日が1日違うと税金がどれだけ変わるのか
退職所得は、給与所得などの他の所得とは切り離して所得税額を計算する分離課税です。通常、源泉徴収で課税関係は終了するので確定申告の必要はありません。
同じ会社に勤めるAさんとBさんは同じ退職金をもらったのに、手取り金額には5万円もの差が生じます。このような差が生じる理由を、退職金の手取りを実際に計算して確認してみます。
退職金にかかる税金の計算方法
退職金にかかる所得税や住民税は、退職金から一定額控除した金額を基に計算します。基本的な計算方法は以下のとおりです。なお、短期退職や障害者になったことに直接起因して退職した場合などは異なります。
退職所得金額(課税額)=(退職金―退職所得控除額)×1/2
勤続年数が20年以下の場合:40万円×勤続年数 (80万円に満たない場合には80万円)
勤続年数が20年超の場合:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
勤続年数が20年までは40万円に勤続年数を掛けた金額が控除額になり、21年目以降は毎年70万円に控除額が増えます。また、勤続年数1年未満は切り上げて計算します(例:勤続年数が15年と3ヶ月の場合、16年で計算)。
退職日による退職金手取りの違い
ここでは冒頭で紹介した条件と同じ60歳で定年退職(退職金は2440万円)と仮定して、Aさんは勤続20年ぴったり、Bさんは退職日を1日ずらしてシミュレーションしてみます。
退職金:2440万円
退職控除:800万円+70×(38年-20年)=2060万円
退職所得:(2440-2060)×1/2=190万円
所得税:190万円×5%=9万5000円
住民税:190万円×10%=19万円
退職金手取り:2440万円-9万5000円-19万円=2411万5000円
※住民税は10%として計算
退職金:2440万円
退職控除:800万円+70×(39年-20年)=2130万円
退職所得:(2440-2130)×1/2=155万円
所得税:155万円×5%=7万7500円
住民税:155万円×10%=15万5000円
退職金手取り:2440万円-7万7500円-15万5000円=2416万7500円
退職所得が多いほど違いが大きくなる
このシミュレーションでは手取りの差は約5万円となっていますが、退職金額が多くなる場合や、同じ退職金でも勤続年数が短く控除額が減る場合は、退職所得が多くなるので手取りの差も広がります。
例えば、勤続20年以上の場合、計算した退職所得が330万円と365万円(1年分の控除額70万円×1/2を加算した額)だと、手取りの金額は約10万円も変わることになります。
退職金にかかる税金の計算において、勤続年数が1年未満は切り上げされることに注目すると、退職日を1日でもずらして勤続年数を1年上乗せしたいですね。退職金の手取りにも影響するので、退職の計画を立てる際には、退職金控除額も考慮して退職日を検討してもよいかもしれません。
出典
一般社団法人日本経済団体連合会 2021年9月度退職金・年金に関する実態調査結果
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
国税庁 No.1420 退職金と税
国税庁 No.2260 所得税の税率
執筆者:御手洗康之
AFP、FP2級、簿記2級