60歳で定年退職する予定です。「貯金100万円」なので、年金を60歳から受け取りたいのですが大丈夫でしょうか?
配信日: 2023.06.27
本記事では、来年60歳で定年退職を迎える予定で貯金が100万円の場合、年金を繰り上げてもらっても大丈夫なのか、デメリットはあるのか、解説します。今回は話を分かりやすくするために、下記の場合を想定して考えます。
・収入は会社員の給料のみで副業や投資はしていない
・金融資産は預貯金のみ
・国民年金や厚生年金の保険料は20歳から60歳まで納付しており、未納や免除、猶予された期間はない
・老後は夫婦2人で生活する
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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老後に必要なお金は月額22万円以上?
老後に年金や貯金で生活できるのか考えるとき、そもそも毎月いくら生活費が必要なのか、把握する必要があります。総務省統計局の「家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)結果の概要」によると、65歳以上夫婦のみの無職世帯の場合、消費支出は月額22万4436円です。
あくまで最低点の生活費なので、病気やけがをしたときの病院代、夫婦2人で出掛けたときの外食代や旅行代、家具や家電の買い替え費用、特に地方在住の場合はマイカーの維持費(車を所有していない場合は電車やバス、タクシーなどの交通費)などがかかることもあります。
これらを考えると、毎月の生活費は約20万円では足らず、30万円近くかかるかもしれません。毎月30万円必要で、60歳から80歳まで20年間生きると仮定した場合、貯金のみだと7200万円必要です。
定年退職すると数千万円単位で退職金を受け取れる場合もあるかもしれませんが、それをあわせても貯金100万円や年金収入だけで老後の生活をやりくりするのは非常に厳しいと考えられます。
年金を繰上げ受給した場合のデメリット
定年退職して収入がなくなるのは困るため、本来65歳から受け取れる年金を前倒しで60歳から受け取りたいと考える人もいるかもしれません。早く年金をもらえるのはうれしいですが、繰上げ受給の請求をした時点に応じて、年金が減額されて減額率は一生変わらないデメリットがあります。
月約40万円の収入で40年間就業して保険料を満額納付した場合、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な厚生年金額は2023年度時点で月額22万4482円(年間269万3784円)です。
もし60歳0ヶ月から繰上げ受給すると24%減額されます。「269万3784円-(269万3784円×24%)=約205万円」となり、月額約17万円です。繰上げ受給しない場合に比べると、約5万円減る計算になります。
年金と貯金のみでは厳しい
年金を繰上げ受給した場合の月収は約17万円、支出は約27万円と仮定すると、月10万円の赤字です。何も対策しなければ赤字額は10年で1200万円以上になってしまいます。
貯金100万円と退職金がある場合、散財しなければすぐに生活が困窮することはないと思うかもしれませんが、想定外の出費が発生する可能性もあります。退職金や貯金、年金もあるから大丈夫と考えていても、支出が増えて想像以上のスピードで資産が減るかもしれないので、注意しましょう。
お金のストレスを減らすためにも、定年退職を迎えても元気な場合は再雇用や就職などで、できる限り長く働いて給料を受け取り続けることをおすすめします。もしものときに備えて、年金や貯金に依存しない仕組みづくりが大切です。
まとめ
今回は、来年定年退職を迎える予定で貯金100万円の場合、年金を繰上げ受給しても大丈夫なのか、デメリットはあるのか解説しました。年金の繰上げ受給も減額率が一生変わらないデメリットがあり、いったん繰上げ請求をした後は取り消せません。そのため、早く年金をもらえるからと安易に考えず慎重に検討したほうがよいでしょう。
出典
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編) 2021年(令和3年) 結果の概要
日本年金機構 年金の繰上げ受給
日本年金機構 令和5年4月分からの年金額等について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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