更新日: 2023.08.07 セカンドライフ
終活は「40代」から!? 今すぐ始めるメリットについて解説
そのような場合は、早めの終活をすることで、自分はどんな老後を送りたいのか、そのためには今から何をすればよいのかという道筋が見えてきます。本記事では、まだまだ元気な40代から終活を始めるメリットをお伝えします。
執筆者:石井麻理子(いしい まりこ)
FP2級・AFP
40代で終活は早い?
働き盛りの40代にとって、数十年先の自分の最期について考えるのは時期尚早と感じるかもしれません。まず、終活とは何でしょうか。
デジタル大辞泉によると、終活とは「人生の終末を迎えるにあたり、延命治療や介護、葬儀、相続などについての希望をまとめ、準備を整えること」とされています。
これから先の長い40代です。自分の最期について準備するということは、自分が今後どのような人生を送りたいのかをいったん立ち止まって考えるチャンスにもなります。
また、40代から終活を始めると、ぼやけた老後のイメージが明確になり今後の生き方を改めて考えるきっかけになります。
判断力と体力のある40代のうちから老後の生活や資金などについて考え、この先の人生設計を見直しておくことで「不自由なく暮らしていけるのか」「今後自分の人生はどうなるのだろう」といった不安が解消できます。
もちろん、50代・60代から終活を始めても手遅れではありません。ただ、退職まで20年ほど時間のある40代のうちから終活を始めることで、老後資金・健康管理・将来の目標などに余裕を持った準備ができます。
あらかじめ起こりうるリスクを洗い出しておき、事前に対策をとるのは早いに越したことはありません。
なぜ40代から終活を始めるとよいのか
40代から終活をしたほうがよい理、終活をする目的をここでは大きく分けて2つご紹介します。
■退職後の人生を設計する
これからの人生をよりよく生きるために今を見つめなおして未来を設計する
■人生の終わりの準備
幸せな最期を迎えられるように身辺を整える
退職後の人生を設計する
・健康に配慮する
40代に入ると、高血圧・糖尿病・脂質異常症といった「生活習慣病」の指摘が増加します。治療や服薬のない人が多い傾向にありますが、指摘されたときに治療や薬が必要ないからといって生活の改善をしないままだと、将来治療や介護が必要な状態になる可能性が高くなります。
厚生労働省の調査で、介護が必要となった要因の約6割が生活習慣病という結果が出ています。健康はお金では買えません。日々の生活習慣が未来の体を作ることを意識しましょう。
・老後に必要なお金を準備する
現役で働いているからこそ、老後に必要なお金を準備できます。自分がどのような老後生活を送りたいか、公的年金額などによって退職するまでに準備が必要な金額は人それぞれです。今は1日24時間のうち、働く時間が大半を占めていますが、退職すると働いていた時間は自由に使えます。
東京都福祉保健局「高齢期における地域活動等の意向」調査によると、退職後にやりたいことは60代の1位は趣味スポーツ活動、2位が地域活動・社会貢献のための活動(ボランティア)、70代以上は1位が地域活動・社会貢献のための活動(ボランティア)、2位が趣味スポーツ活動となっています。
退職した後ではお金は出ていくばかりです。収入のある今のうちから老後設計をすることが大切です。
・退職後に何をするかイメージする
仕事を退職すると毎日が休日です。今まで仕事をしていた時間は、ほぼ自分の時間となります。厚生労働省の調査によると、2021年の日本人の平均寿命は男性が81.47歳、女性が87.57歳。過去最高を更新しています。65歳で退職すると男性は16.47年、女性は22.57年という休日があるのです。
今は仕事や子育てで忙しいけれど本当はこんなことがしてみたい、といったことを見つけて、働いているうちから将来やりたいことを少しずつ準備することで、充実した老後を過ごせるようになります。
人生の終わりの準備
自分も自分以外の人も幸せな最期を迎えられるように、下記のような点について整理しておく必要があります。
・物と人付き合いの整理
不要な物を処分して自分が大切にしているものに囲まれて暮らすと、日常の当たり前の生活が自分の心地よい空間となり、丁寧な暮らしにつながります。
また、今まで多くの人と関わりをもって生きてきた中で、自分が本当にお付き合いを続けたい人とはどのような人なのでしょうか。
単に人付き合いを見直して、お付き合いしたくない人とはつきあうのをやめるということではありません。自分の人生にとってどんな人と付き合っていきたいのかを少しずつ、時間をかけて整理していくとよいでしょう。
・資産管理の整理
複数の銀行口座やクレジットカード、加入している保険などをすべて把握することは簡単なことではありません。一覧表を作成する、書類の保管場所を記録しておく、使っていない口座やクレジットカードは解約するなど自分に何かあったとき誰も何も知らない、という事態を避ける対策が必要です。
・医療や介護の希望を伝えておく
自分が病気やけがなどにより自分の意思表示ができなくなったとき、思いもしなかった病気が発覚したときに、家族は重い決断を迫られることがあります。
例えば、病名の告知や余命宣告、延命治療の希望や費用、臓器提供や献体の希望などについて、あらかじめ自分の希望を明確に伝えておくことが大切です。
厚生労働省の調査によると、臓器提供意思表示を「既にしている」と答えた人の割合が高かったのは、男性では30代・20代・40代と50代(同率)、女性では30代・20代・50代・40代の順となり、「してみたい」と答えた人の割合が高かったのは、男性・女性ともに10代・20代・30代・40代という結果になっています。
また、このような希望は、家族と話し合って考え方をすり合わせしておくのもよいでしょう。
・お葬式と相続
自分の遺志を伝えるのに一番確実な方法は、遺言書を作成しておくことです。
遺言書と聞くと敷居が高く感じる場合は、エンディングノートを活用するのも1つの手段です。自分がこの世から去った後にお金や不動産などを誰に遺(のこ)したいのかを書き記しておくことで、不要な相続争いを避けられます。
40代から自分のお葬式や相続について考えるのは早いと思いがちですが、人生は何が起こるか分かりません。具体的なお葬式の場所まで決める必要はありませんが、自分に何かあったときに必ず連絡してほしい人や、銀行口座・クレジットカード・サブスク・保険などを整理しておくと安心です。
しかし、終活をするデメリットもあります。自分の死と向き合うことは、決して楽しいことばかりではなく不安を抱え込んでしまうこともあります。1人で考え込まずに周囲や家族、専門のコンサルタントなどに相談しながら少しずつ進めていくことが必要です。
まとめ
老後の人生というのは誰もが不安をもつものです。その不安とは「どうなるのかが分からない」から不安になるものです。体力と判断力のある40代のうちから、想定される事態を把握し対応策を考えておくことで不安はある程度解消され、楽しい老後を迎えられます。
また、終活は家族で一緒に考えることも大切です。自分の希望だけではなく、人生を共にしている家族の希望も考慮しながら進めていくと幸せな最期となるのではないでしょうか。
出典
厚生労働省 令和3年簡易生命表の概況
執筆者:石井麻理子
FP2級・AFP