NISA?つみたてNISA?iDeCo…? 老後が不安で資産形成したいけど、結局何が違ってどんなメリットデメリットがあるの?
配信日: 2018.08.09 更新日: 2019.01.10
老後の資産形成といえば、これまでは生命保険料控除という税優遇がある個人年金保険を活用する人が多かったと思いますが、低金利の今、契約時の予定利率で長期間、固定されてしまう個人年金保険では資産を増やすことが難しくなっています。
NISAやつみたてNISA、個人型確定拠出年金(iDeCo)といった税優遇のある金融商品を活用して老後の資産形成をしましょう。
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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目次
NISA(ニーサ・少額投資非課税制度)のメリット・デメリット
日本に住む20歳以上の方が利用できます。NISA口座で購入した上場株式・公募株式投資信託等の売却益や配当金・分配金等が非課税となります。なお、上場株式の配当金等を非課税で受け取るためには、配当金等の受取方法を「株式数比例配分方式」に指定する必要がありますので注意しましょう。
非課税期間は5年間で、年間120万円まで購入できます。つまり、非課税投資額は最大600万円です。つみたてNISAとは併用できません。
なお、5年間の非課税期間が終了した時点で保有している上場株式等を継続して非課税対象としたい場合には、翌年設定される非課税投資枠へ繰り越すこと(ロールオーバー)ができます。ロールオーバーせずに、課税口座に移すことも、売却することもできます。
デメリットとしては、NISAで損失が生じたとき、他の証券口座で利益が出ていても「損益通算」ができない点です。損失が利益より大きい場合、「損益通算」ができれば税金を払う必要がありませんが、NISAでは他の証券口座との合算ができません。つまり、長期間保有し続けてもNISAでは利益が出ないとメリットがありません。
損失の繰り越しもできません。また、いつでも払い出し、売却が可能ですが、払い出し、売却に対応した分に対応する非課税投資枠は再利用できません。例えば、80万円分を売却した場合、この80万円分を再利用して他の金融商品を購入することはできません。
つまり、頻繁に売買を繰り返す投資法には向いていません。その他、120万円の非課税枠を使い切らなかった場合、未使用分は翌年に繰り越すことはできません。
つみたてNISAのメリット・デメリット
NISA同様、利用できるのは日本に住む20歳以上の方です。つみたてNISAにおいても、月々の積立契約により購入した公募株式投資信託等の売却益・配当金・分配金等が非課税になります。非課税期間は20年間で、年間40万円まで購入できます。つまり、非課税投資額は最大800万円です。買い付けの方法は「積立投資」に限定されます。
投資対象は、「長期・分散・少額」にふさわしい公募株式投資信託とETF(上場株式投資信託)です。投資対象には販売手数料がゼロ(ノーロード)、低い信託報酬、頻繁に分配金が支払われない、など法令上の条件が設けられています。NISAと異なり、上場株式には投資できません。
非課税枠を使い切らなかった場合、未使用分は翌年に繰り越すことできない点、「損益通算」や損失の繰り越しができない点、いつでも払い出し、売却が可能ですが、払い出し、売却に対応した分に対応する非課税投資枠が再利用できない点はNISAと同様です。
個人型確定拠出年金(iDeCo)のメリット・デメリット
20歳以上65歳未満の方が利用できます。毎月の掛け金の上限は職業により異なります。例えば、自営業者は6.8万円、専業主婦や企業年金のない会社員は2.3万円などです。
掛け金が全額所得控除になる点がNISAやつみたてNISAにない特徴です。投資対象は投資信託の他、元本確保型商品として定期預金や保険があります。この点もNISAやつみたてNISAと異なります。運用益が非課税になる点はNISAやつみたてNISAと同じです。
給付金の受け取り(60歳以降)は、一時金で受け取る場合は退職所得控除が適用され、年金で受け取る場合には公的年金控除が適用されます。退職所得控除は20年以下であれば「加入期間×40万円」。20年超なら「800万円+(加入期間-20年)×70万円」なので、受取額がこの範囲であれば税金がかかりません。また、退職所得控除を超えても、超えた分の半分しか課税対象になりません。しかも、分離課税です。
デメリットとしては、原則60歳まで引き出せない点ですが、老後の資産形成という観点からみると、引き出せないのは確実に老後の資産形成に資するのでメリットであるともいえます。
税優遇がある3つの金融商品のうちどれから始めたら良いか
老後の資産形成のためには、掛け金の拠出時、積立金の運用時、積立金の受取時の3つの段階で税優遇が受けられる個人型確定拠出年金(iDeCo)を最初に検討するのが良いと思います。
ただし、掛け金が全額所得控除を受けられるからといっても、所得のない人や少ない人はメリットとはいえないので留意しましょう。また、金融機関によって口座管理手数料などが異なるので慎重に比較しましょう。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。