更新日: 2023.07.26 その他老後

【65歳以上の2割が認知症という現実】身内が「後見人」になるって難しいの?

執筆者 : 中村将士

【65歳以上の2割が認知症という現実】身内が「後見人」になるって難しいの?
平成26年度厚生労働科学研究費補助金 特別研究事業の「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」によると、認知症の推定患者数は、2025年には675万人(18.5%)になると推計されています。
 
認知症になると、記憶力や判断力といった認知機能が低下し、財産管理(お金の管理など)や法律行為(契約など)が難しくなります。このようなとき、活用したいのが「成年後見制度」です。
 
65歳以上の約2割が認知症になる時代です。本記事を読んで、「成年後見制度」について知っておくのも良いのではないでしょうか。
中村将士

執筆者:中村将士(なかむら まさし)

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

成年後見制度の概要

「成年後見制度」は、判断能力の不十分な方を保護し、支援する制度です。「成年後見制度」には、「法定後見制度」と「任意後見制度」があります。法定後見制度は、障害や認知症の程度により「後見」「保佐」「補助」に分かれています。
 
それぞれの違いをまとめると、図表1のようになります。
 

【図表1】

※筆者作成
 
「法定後見制度」を利用するには、申立人が家庭裁判所に「後見開始の審判」「保佐開始の審判」「補助開始の審判」を申し立てる必要があります。
 
審判を受けた方を「被後見人」「被保佐人」「被補助人」といい、裁判所は「後見人」「保佐人」「補助人」を選任します。後見人・保佐人・補助人は、法律に定められた範囲内で、被後見人・被保佐人・被補助人に係る財産管理や法律行為を行います。
 
「任意後見制度」を利用するには、将来判断能力が不十分になったときに備え、本人(委任者)と任意後見人(受任者)との間で「任意後見契約」を結んでおく必要があります。
 
本人の判断能力が不充分になったとき、申立人は家庭裁判所に対し、「任意後見監督人選任」の申し立てを行います。家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると、任意後見契約の効力が発生します。任意後見人は、契約に定められた範囲内で、本人に係る財産管理や法律行為を行います。
 
なお、以下では便宜上、被後見人・被保佐人・被補助人・任意後見契約の委任者を「被後見人」、後見人・保佐人・補助人・任意後見契約の受任者を「後見人」といいます。
 

身内でも後見人になれる

「法定後見制度」を利用するにしても、任意後見制度を利用するにしても、身内(本人の親族)が後見人になることは可能です。
 
基本的に、後見人には、家庭裁判所が本人にとって最も適任だと思われる方を選任することになっています。申し立ての際に、こちらから候補者を挙げることができ、それを身内にすることもできます。
 
ただし、候補者が必ずしも後見人に選任されるとは限りません。家庭裁判所は、後見人の職務と本人の状況を照らし合わせ、後見人を選定します。
 
場合によっては、候補者ではなく、弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門家を後見人に選任することがあります。このとき、身内であっても家庭裁判所の判断に不服申立てをすることはできません。
 

まとめ

「成年後見制度」は、判断能力の不充分な方を保護し、支援する制度です。65歳以上の約2割が認知症になるといわれている昨今、ご自身(またはご家族)も「成年後見制度」を利用するときが来るかもしれません。
 
「成年後見制度」には、法定後見制度と任意後見制度があります。「法定後見制度」は、本人の判断能力が不充分になってから「後見開始の審判」などの申し立てをする制度です。
 
一方、任意後見制度は、本人の判断能力が十分であるときに「任意後見契約」を結んでおき、判断能力が不十分になったときに「任意後見監督人選任」の申し立てをする制度です。法定後見制度を利用した場合でも、任意後見制度を利用した場合であっても、身内が後見人となることはできます。
 
ただし、本人の健康・生活・財産状況により、他の専門家(弁護士、司法書士、社会福祉士など)が後見人に選任されることがあります。このようなときは、むしろ、専門家に任せた方が良いと考えた方が良いでしょう。
 
認知症はひとごとではありません。この機会に、将来、認知症になったとき、自分たちはどう対応すべきか、ご家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。
 

出典

「厚生労働科学研究成果データベース」日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究
「厚生労働省」 認知症の人の将来推計について
「厚生労働省」 成年後見制度とは
「厚生労働省」 法定後見制度とは(手続の流れ、費用)
「厚生労働省」 任意後見制度とは(手続の流れ、費用)
「法務省民事局」 成年後見制度 成年後見登記制度
「裁判所」成年後見制度について
「裁判所」家事審判の申立書
 
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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